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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

物理読み物40   慣性力      M73    No247        2010日12月23日(木)
 
 水の入ったインスタント・コーヒー瓶にピンポン玉を入れて蓋をし、、蓋を右側にして水平に置きます。瓶を右の方(蓋の方)へ、急に動かすと、どうなるでしょうか。ピンポン玉は右へ動きます。
 ピンポン玉に小さい穴をあけて砂を詰めたもの(穴はセロテープで塞いでおく)で同じ実験をします。今度は、ピンポン玉は左へ動きます。更には、砂の代わりにピンポン玉に水を入れたもので、同じ実験をします。ピンポン玉の瓶の中での位置は変わりません。
 この実験では、瓶の中のピンポン玉には慣性力が左側(左向き)にはたらきますが、慣性力と重力は「同等」なので、瓶の中のピンポン玉の動きは、瓶の右側(蓋の側)を上にして立てたのと同じことになります。瓶の右側を上にすると、瓶の左側、つまり、底の方が下になって、その向きに重力がはたらくという訳です。底の向き(左向)にはたらく慣性力と、底の向き(下向)にはたらく重力は、同じようなものです。これは一般相対論の出発点となった<等価原理>にかかわるところです。一番初めの実験では、ピンポン玉には、<慣性力による浮力>がはたらいたのでした。つまり、これは水と「ピンポン玉」の比重くらべになっています。
 ところで、水に浮いたピンポン玉は、系が加速する方へ移動するので「加速度計」として使えます。そこで、ホームセンターで、直角二方向の水準器を買ってきて、それを補助席に置いて運転してみると、水準器の泡は見事な動きをしました。
 自動車が上り坂にさしかかったときと、平地で加速しているときは、泡は同じ動きを示します。ほんの僅か登り坂でもわかります。もちろん、そこで停止しても同じです。念のために言いますと、泡は前方へ移動します。下り坂と減速しているときも同じことがいえます。右下りの地面と左カーブの運動、左下りの地面と右カーブの運動、も、それぞれ、泡に同じ動きをさせます。
 得意になってこの話をしたら、友人の一人が  “そういうのなら、クライノメーターといって自動車についている” というのです。早速、助手席に乗せて貰うと、クライノメーターの二つの自動車の「絵」―横向きの絵と,、前向きの絵―が、自動車の傾きを、目(ま)の当たりに見せてくれるのです!
 ブレイキをかけると「側面図の自動車」が尻を上げて前のめりになるのです。自転車で急ブレイキをかけると自転車の尻が上がるという、TVのコマーシャルがありましたが、あれです。あとは、どんな動きをするかを、考えてください。
 何日か後のことです。「うちのかみさん」につきあって、デパートへ行った帰りしなに、子どもの列に並んで、ゴム風船をもらいました。助手席で「うちのかみさん」が持った糸のついたゴム風船は、アクセルを踏むと前へ、ブレイキを踏むと後へ、ハンドルを右に切ると右に、左に切ると左へと、それは敏感に動きました。その動きを見て「うちのかみさん」は言ったものです。「これ、車が行きたい方へ行くのネ」