物理読み物39 三態変化U T-11 No246 2010年12月16日(木)
自分の周囲にあるものをかたっぱしから書いてみましょう。本、鉛筆、けしゴム、コップ、はさみ、鞄、時計、ワープロ、壁、障子、柱、窓、…固体ばかりです。つまり、道具は<形を保持できる材料>で造られているものが多いということです。
材料という点から、今、挙げたものを書き直してみると、木、紙、皮、ガラス、金属、せともの、プラスチック、…ですが、その他でも、土、石、セラミックス、半導体、などもよく使われる材料です。
液体のものは手近に見あたりませんが、台所は液体の宝庫です。醤油、マヨネーズ、
酒、酢、牛乳、水道水、鶏卵、…これらのものは、その液態という存在形態をうまく利用して造られたり、使われたりしています。気態のものはプロパンガスと…。
何しろ、総てのものが、三つの状態のいずれかで存在しているので、<物質>の三態の前に<物体>の三態について、考えておきたいものです。
さて、<三つの状態>は形と体積に関してどのようなことがいえるでしょうか。
液体はみんな容器に入っています。例に挙げたものもそうですが、私の血液も、海の水も「容器」に入っています。
気体は蓋つきの(密閉された)容器に入れなければなりません。プロパンガスはボンベに入っています。大気も重力場という「蓋つき」の容器に入っていることになります。
この他にも、三つの状態にはいろいろな特徴があります。弾性波の横波は固体だけが伝えます。だから、横波は固体判別機(?)になります。固体が横波を伝えるというのは、固体が形の変化に抵抗をもつということです。“固体はみんなバネである”という見事な表現があります。液体や気体も閉じこめるとバネとして使うことができます。こちらは体積の変形に対する抵抗によるものです。縦波はこの性質によって伝わります。固体も体積変化をするので、縦波も伝えます。
気体と液体に一定の形がないということは、運動性(筆者の造語?)が大きくて、自由に運動できるということです。この両者を流体といいます。気体は液体(や固体)に比べて、比重が1000分1程度に小さいので、質量性(筆者の造語!)が希薄で、質量に関する諸量は小さいのです。
液体には<ものを溶かす>という性質があって、化学反応に有効な場をつくります。溶液中の溶媒の分子やイオンは、運動性と質量性から考えて、気体のように振る舞うと考えてよさそうです。私たちにとって、においは気態の物質が与える刺激です。サケが生まれた川を遡るのは、その川の水のにおいを嗅ぎ分けるからだといいます。水の中のにおいも気体的なのでしょう。
固体や液体に比べると、気体は熱容量も小さいので、100度以上のサウナ風呂に入ってもやけどをしません。
流体は他の物体に浮力を与えることができますが、液体の浮力は気体の浮力に比べて大きいのです。
粉体は液体に擬すことができます。同様に、金属の中の自由電子も液態に近いのでしょう。金属の熱伝導や電気伝導が大きいのはそのためです。
原子核の中の核子(陽子と中性子)の集まりを流態モデルで理論化したのはガモフでした。