物理読み物38 三態変化T T-10 No245 2010年12月16日(木)
”固体はかたい”と子どもはいいます。見えて、固くて、重いもの、これが生活経験の中で子どもたちが自ら構築した、<もの=固体>の第一定義でしょう。ですから、液体や気体がものであるということを承認させ得るまでには、かなりの抵抗がある筈です。
空気をビニールの袋に入れて触らせること、ビーカーを逆さにして水の上に被せて水が入ってこないのに気付かせること、スプレー缶に空気を圧入してその重さの増加を測らせることなど、いろいろなアプローチが必要でしょう。しかし、もっと直接的に、気体が液体に、そして、更に固体になることを見せることも有効でしょう。
液体窒素を使って、そのあたりにある液体を軒並みに凍らせてみましょう。ベンゼン、ヘキサン、酢酸、メタノール、エタノール、硫酸、牛乳、食用油、ガソリン、…すべての液体が固体になります。最後に液体窒素を固体にして、“すべての液体は固体になる”
という法則を確認します。次は、気体の液化です。プロパン、二酸化炭素、アンモニア、酸素、空気とやっつけます。
水素は液体窒素より融点が低いので、自分が外に仕事をすることで自分の温度を下げるより仕方がありません。ヘリウムについても同様です。この辺については、物理定数表で融点や沸点を調べ、<これでよし>とします。液体窒素が手に入らないときには、ドライ・メタ(ドライアイスとメタノールの「混液」)で実験しましょう。
今度は逆に、物質を加熱することで、固体→液体→気体の変化をみます。この向きの変化では、物質が状態変化をする前に、化学変化をしてしまうことがあります。つまり、分子や原子団が壊れてしまうのです。
金属やイオン性物質を加熱するときには、キャンピング・バーナーがが有効です。融けた岩石は熔岩です。しかし、熔岩を液体とは認めない生徒もいます。“ようがんは水ではなくて火だ”
というのです。今、使っているワープロで、<ようがん>をインプットして漢字変換すると<熔岩>と出てきます。液体なので、<さんずい>の溶岩でもよいのですが、それは、その人の自然観にかかわることなのでしょう。
“すべてのものは原子でできている”という大仮説(原子仮説)を設けると、物質の三態及びその変化が、目からうろこが落ちたように見えてきます。逆に、物質の三態変化の姿を、実際に何度も見ていくと、原子仮説の妥当性が納得できて、<原子実在>の確信を深めていくことになります。その意味で、三態変化は原子論への一里塚です。
水の三態変化が地球上で果たしている役割は多彩です。気温の緩和をはじめ、台風としてエネルギーの輸送の役割を担い、雨や雪は流水となって大地を穿ち、ダムを介して電力に姿を変え、氷雪として積もっては海水のレヴェルを変化させ、割れ目の水は凍結して岩石を壊し、雷を起こしては空中窒素を固定し、植物の葉から蒸散しては物質の輸送を、動物の体表から発汗して体温の調節をするなどなど…。
しかし、水だけで三態変化を教えたのでは、不十分です。三態変化が物質に一般性な性質であることを教えなければなりません