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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
物理読み物37  熱膨張    T-9    No244      2010年12月9日(木)
 
 ものが原子でできていることはご存知の通りです。原子という場合には、原子の存在形態の一つである分子やイオンもそのうちに含まれているものと思ってください。
 さて、ものの温度が高くなると原子の運動が激しくなって、原子の運動する範囲が大きくなります。これはマクロに見れば、その物体の体積が増大したことになります。いわゆゆる熱膨張です。
 原子で構成される分子の形を考えてみましょう。温度の上昇によって原子の結びつき弱くなると、分子間の空間が潰れて、体積が小さくなることがあります。水がその例です。
 熱膨張を、便宜上、線膨張、面膨張、体膨張に分けておきます。線膨張は一方向の膨張に関心があるときに使います。例えば、鉄道の線路の長さの(温度)変化とか、タワーの高さの変化とかです。体膨張では、気体や液体の体積の変化が問題になることが多いようです。面膨張という概念は、一般にはあまり使われません。事実、膨張率も、線膨張率はαで、体膨張率はβで表わされています。本当は、線膨張率をα、面膨張率をβ、体膨張率をγとしたいところです。
 やや厚めの鉄板を、四隅に置いたブロックの上に渡し、中央の下をガスバーナーで熱して、バーベキューをしたことがあります。加熱が進んで、肉が焼けてくる頃になると、鉄板の中央が凹んで、周囲から油をたらすと、それが中央に流れていく程度になりました。料理が終わって温度が下がると、鉄板は初めのように、真っ平らに戻ったものです。面膨張の現象はめったに見られないので、印象に残っています。
 もしこの場合、この鉄板に小さい穴があいていたら、熱せられれば、回りの部分から「攻められて」、穴が塞がってしまいそうに思うかもしれませんが、実際は、穴も大きくなります。
 以下は思考実験です。断面が正方形の鉄の棒を三本用意します。その中の一本を二つに切り、切った棒を僅かな間隔をあけて一直線に並べておき、それを、残った二本の棒でサンドイッチにして熔接します。これを熱したらどうなるでしょう。鉄の棒はみんな膨張するので、隙間が大きくなるのは当然です。三次元で考えれば、例えば、フラスコの<中空の部分>の熱膨張率は、フラスコを造っているガラスの熱膨張率と同じになるということです。
 液体や固体の熱膨張による大きさの変化を、力学的に相殺させる(力を加えて変化させないようにする)ことは大変なことなので、線路の隙間、鉄橋の隙間などは、それから「逃げて」います。昔、大きな張力を必要としたときには、熱せられたワイアロープで縛っておいてから冷やして目的を達したようです。
 温度が一度変化したとき、物質が元の量に対してどれだけ伸び縮みしたかという割合を熱膨張率といいます。体膨張率は固体ではおよそ10^(−5)のオーダー、液体では10^(−4)、気体では10^(−3)程度です。ちなみに、気体の体膨張率だけは物質に関係なくみな同じですが、それは温度によって変化し、そのときの気体の絶対温度の逆数になります。例えば、27℃では、27℃=300K だから、1/300=0.0033=3.3×10^(−3)ということです。
 体膨張率βは同じ物質の線膨張率αの3倍です。 β≒3α
   V=V0 (1+β・t)=[L0(1+α・t)]^3  以下の演算をどうぞ。
   
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち