物理読み物36 固体窒素 T-8 No243
2010年12月9日(木)
三態変化を教えるときには、液体窒素が有効です。窒素は沸点が−196℃、融点が−210℃なので、ジュワー瓶は少々高価ですが、一つあれば、近隣の学校が持ち回りで使用できます。地域の理科センターで備えてもらうという手もあります。
液体窒素を扱っている業者を電話帳で調べて電話をして、事情を話してわけてもらいます。1リッターいくらか、値段を尋ねてみます。場所によってかなり価格の差があります。ジュワー瓶は5リッターか10リッターのものが多いようですが、持って行ったジュワー瓶が満タンになるだけの量を買うことになります。ジュワー瓶を貸してくれる会社もあります。
液体窒素を使った実験の例を挙げておきます。
初めは、バラの花をドライフラワーにするとか、凍らせたバナナで釘を打つとか、よく知られている実験から入ります。
その辺にある液体のものは全部固体になります。固体アルコールは液体アルコールに沈むのを見せると、水の特殊性がわかります。
気体のものでは、二酸化炭素がドライアイスになること、二酸化窒素が見事なブルーの液体になること、液体酸素の中で線香が燃えること、容器の外から磁石を持っていくと液体酸素がくっついてくること、などを見せます。液体酸素は、空の試験管をビーカーの液体窒素に突っ込んでおくと溜まります。
パイロットランプを単一乾電池にハンダづけして点灯させておきます。乾電池を液体窒素に入れると、パイロットランプは次第に暗くなっていきます。乾電池の内部が凍って、電気伝導が悪くなったのです。<乾電池>は本当は<湿電池>なのです。
ジュワー瓶に長いガラスパイプを突っ込むと、噴水(噴液窒素?)が始まります。パイプ内の液体窒素がガラスの温度で気化して上昇し、液体の部分が大気圧で押し上げられて、噴水になるのです。ガラスの温度が下がると噴水は止まります。熱機関ですからネ。
さて、…。固体窒素をつくる話です。
授業で、生徒がいろいろな液体のものを持って来ました。コーラ、洗剤、酢、ジュース、カルピス、醤油、ソース、ライターのオイル、整髪料、それに教師が用意した石油、エチルアルコール、水銀、酢酸、…みんな液体窒素で凍らせました。凍った状態を、生徒たちはアイスだとかシャーベットだとかいっていました。なにしろ、全部が凍ったので
“すべての液体は固体になるという法則は認められるか” と聞くと “液体窒素は固体にならないから駄目だ”
といいます。そこで、液体窒素の固体化作戦が始まりました。試行錯誤の結果、できあがった装置というと…。
液体窒素を試験管に入れる。沸騰石を入れておくい。試験管に綿の栓をする(突沸で飛び出さないように)。試験管をビーカーに立てる(中が見えるように)。ビーカーを発泡スチロールの台に乗せる(熱伝導を少なくするように)。このセットを真空鐘に入れて減圧する。
考えようによっては、空気の「もと」があるところで、空気を抜いているのですから、おかしなものです。激しく沸騰していた液体窒素は、突然、シヤ−ベット状に固体になりました。“すべての液体は固体になる”
はこの後で承認されました。その後、試験管から直に減圧する方法が成功しました。このとき、試験管の外側からは、空気中の酸素が液化して、滴り落ちました。