物理読み物34   音叉    A-2    No241      2010年12月2日(木)
 
 学校の古い校舎を壊したときに、鉄筋が出てきたので、これを鉄ノコで切り、万力を使ってU字型に曲げて、音叉を作りました。鉄金は太いものと細いものがあったので、太いもの、細いもの、大きいもの、小さいもの等いろいろ作りました。音叉の取っ手は、同じ鉄筋の棒をはんだづけしました。
 この音叉を作っているうちに、他の材料で音叉を作ってみたくなりました。そこで、ガラス棒で作りました。鉄ノコの刃で作りました。ゼムクリップで作りました。木や竹でも作りました。陶器でも作りたかったのですですが…。
 仏様の鈴(唐音で りん)が立体音叉であることに気がつきました。お寺の鐘もそうです。茶碗やコップもそうです。振動が吸収されないように、鈴(りん)は布団の上に座らせてあります。鐘は吊られています。茶碗には高台(こうだい)が、ワイングラスにはステムがついていて、音叉に似ています。木魚は木の球に切れ目があって、見事な音叉です。
 友人が、フィリピンの民族楽器だというマリンビンというものを、竹で作ってくれました。それは、手桶型の一輪挿しに似ていますが、まさに竹の音叉とでもいうべきものです。筒の下部を持って、胴の辺りを(もので)叩くと、ビンビンという快い音を響かせます。
 ハーモニカやオルガンのリードもいわば一本腕の音叉のようなものです。アイヌのムックリという民族楽器も同じです。マリンビンとムックリは音も似ています。<含み音>とでもいいましょうか。
 石けんで洗って油気を除いた指でワイングラスの縁をこすると、きれいな音が出ます。これをたくさん並べたグラスハーモニカという楽器が、昔、つくられました。ベートーヴェンやモーツアルトが作曲した、この楽器のための曲もあるほどです。
 このように、音叉にこだわっていると、いろいろなものが音叉に見えてきます。ホーク、ピンセット、和ばさみ、安全ピンが音叉に見えてきました。素焼きの鉢にノコギリで切れ目を入れて、たたいてみたくなりました。両手を上に挙げて<音叉運動>をしてみました。万力に棒を咥えさせてたたいてみました。U型磁石は音叉そのものです。逆に、鉄筋で作った音叉は電磁石になることに気がついたので、エナメル線を巻いて、それを作ってみました。これは直流を流せば電磁石になりますが、交流を流せば、振動する筈です。極の間隔を狭めておけば、電磁音叉になるかもしれません。この磁石をたたいて、その音の高さを調べ(これが固有振動)、これの半分の周波数の交流を流したら、(磁極は交流の1サイクルで2回引き合うから)大きい音が出るかもしれません。
 一つのものや、ことがらにこだわり続けていると、その「いろめがね」で自然や生活を見ることになって、世界が今までとは違って見えてきます。うろこが落ちるという訳です。
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