物理読み物30 相対速度 M-66 No227
2010年8月5日(木)
第一次世界大戦の戦場でのことです。連合国の飛行士が、目の前でちらちらしているものがあったので、捕まえてみました。それは、ドイツ軍の弾丸だったのです。
この話は、ペレリマンの<面白い物理学>という本に紹介されているものです。その頃の飛行機はしっかりした風防もなくて、飛行士は大気中にむきだしになっていたのでした。鉄砲の玉もそんなに威力のあるものではなかったのでしょう。それにしても、ちょっと眉に唾をしたくなるような気もしますが、それはさておき…
物理的にいえば、この飛行機と弾丸の相対速度がゼロであったということです。戦争の話は物騒なので、マンガのルパン三世を登場させましょう。
飛行機に乗って逃げていくルパン三世を、その後から同じ速さvの飛行機でおいかけている銭形警部が、速さvのピストルの玉を打ち出したとしましょう。ルパンの仲間の次元が地上でこれを見ています。(ピストルの玉はルパンをかすって行って、何事もおきなかったことはいうまでもありません)三者の目に、この事件はどのように映ったでしょう。
観測者ルパン
:私は静止している。銭形も静止している。玉がvで飛んで来て、私に当たりそうになる。
観測者銭形 :私は静止している。ルパンも静止している。玉がvで飛んで行って、ルパンに当たりそうになる。
観測者次元 :私は静止している。銭形はvで走っている。ルパンもvで走っている。玉は2vで飛んで行ってルパンに当たりそうになる。
ルパンも負けてはいません。ルパンも後ろを向いて、速さvのピストルの玉を打ち出しました。(ピストルの玉は銭形をかすって行って、何事もおきなかったことはいうまでもありません)三者の観測は次の通りです。
観測者ルパン
:私は静止している。銭形も静止している。玉がvで飛んで行って、銭形に当たりそうになる。
観測者銭形
:私は静止している。ルパンも静止している。玉がvで飛んで来て、私に当たりそうになる。
観測者次元
:私は静止している。ルパンはv走っている。玉は静止していて、銭形はvで走ってきて玉に当たりそうになる。
この最後の事件は考えにくいかもしれません。空間に浮いている玉に、銭形は自分で積極的に当たりにくるのですから! 玉が落ちてしまわないか?と考えた人はいませんか。飛んで来た玉だって落ちていますヨ。玉が少し落ちたので、当たらなかった、とでもしておきましょうか。
TVで見せてくれた実験です。道の脇にギャラリーとTVカメラが待機しています。vで走ってきたトラックの上に備えたピッチングマシンから、TVカメラの前で、後向きにvの球が打ち出されました。球はギャラリーの前で、ストンと落ち、TVカメラもそれを捕まえました。トラックの上のTVカメラは、vで後へ飛んでいく球とギャラリーを映しだしています。