物理読み物27 ポテンシャル・エネルギー M-63 No224
2010年7月22日(木)
ちょっとした刺激を与えてやると、そこからドバーッと運動が出てくるような状態を、ポテンシャル・エネルギーが溜まっているといいます。
1 棚の上のぼたもち、ダムの水、樹になっているリンゴ、ドミノ
2 ビックリ箱、引き絞った弓、雪でしなった竹、ゴム鉄砲
3
ピストル、ダイナマイト、水素と酸素の混合気体(光の照射で爆発する)
4 充電されたコンデンサー、電車、バイブレイター
5 グラスについているビールの泡、バチスカーフ、上昇気流、ゴム風船
6
圧搾空気、ふくれっ面
7 ボタン戦争、原発
1 は重力ポテンシャル 2 は弾性ポテンシャル 3 は化学ポテンシャル
4 は電気ポテンシャル 5 は浮力ポテンシャルで、重力ポテンシャルの変形
6 は気体分子のポテンシャルと考えておきます
7 は原子ポテンシャル
ぼたもちと地球は万有引力で,いつでも引きあっています。この力に抗して、ぼたもちを棚の上に持ち上げる仕事を誰かがやったのです。仕事という形で投入されたエネルギーが、ポテンシャル・エネルギーとして、蓄えられています。
どこに蓄えられているかって? リンゴに? 地球に? リンゴと地球に半分ずつ? リンゴと地球に質量に比例配分して? リンゴと地球の間の空間に? リンゴと地球の系全体に?
リンゴをピンポン球に、地球を地球儀にして、それを、コイルで繋いで重力の役をさせるというモデルを考えると…、上の答えのどれが好いでしょうか。
良いか、と聞かずに、好いか、と聞いたのですが…。
ポテンシャル・エネルギーは、何時、誰によって蓄えられたのか、を考えてみましょう。
ポテンシャル・エネルギーを解き放つ、チョットした刺激のことを、引き金作用といいます。上に挙げたそれぞれの例について、引き金作用が何であるかを考えてみましょう。
持ち上げられたおもりが、上方で静かにしているとき、そのポテンシャル・エネルギーは静止している運動の一形態だといえるでしょうか。
テートはポテンシャル・エネルギーは“やがては現実の運動の一形態に解消してしまう”であろう,という確信に到達しています。
キルヒホッフになると、もっと前進していて、“静止は運動のひとつの特殊の場合である”と述べ、それによって彼は、計算だけではなく、弁証法的な思考を得ることを、自ら立証しているのです。
エンゲルスはまた、“ポテンシャル・エネルギーとは活力の消極的な表現にすぎないし、またその逆でもある”とも言っています。
ポテンシャル・エネルギーというのは、凍結した運動 ということができそうです。