理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

物理読み物24     回路    E-113   No221    2010年7月8日(木)

 

  電源と抵抗を導線で円く輪につないで, 回路をつくります. 抵抗がパイロットランプであれば, パイロットランプは点灯し, それがニクロム線であればニクロム線は発熱し, それがモーターであればモーターは回転し, それが電解質の水溶液であれば(電源は直流)電気分解が起きるなど, 電気はいろいろなはたらきをします. 抵抗は単に回路の電流をコントロールするだけではなく, もっと積極的なはたらきをします. 抵抗は負荷とも呼ばれ, 電気エネルギーの変換場所なのです.

  回路に関しては, オームの法則が成り立ちます. 電圧をV, 抵抗をR, 電流をIとすると  VIR と書かれるのは一般です. しかし, 物理は数学と違って, 式の形が変われば式の意味も違ってきます.

  VRI と書けば “V[V]の電圧にR[Ω]の抵抗を繋ぐとI[A]の電流が流れる”という意味ですが, IRV は “I[A]の電流がR[Ω]の抵抗を流れるとV[V]の電圧降下を起こす”という意味になります. 電流は,一繋がりの回路では, どこでも強さが一定で, どこかで湧き出したり, 消え去ったりはしません. その意味では, 水の流れのモデルが有効です. 抵抗を文字通り邪魔するものと考えれば, このモデルでは, 抵抗は水の流れを遮る水車やダムに相当します.

  水路がリング状になっていて, 水が流れるように作られている<水流プール>をモデルにしてみます. この水路を横切るように水車(抵抗水車)とダムがあったとしましょう. 動力はこちらも水車(動力水車), こちらの水車はエンジンのような外部の動力で回っています. この水車の前後には水位の差ができています. 水位の低いところから, 水位の高いところに水を上げるのが動力水車の役目です. 電気回路でいえば電池の起電力に相当します. 抵抗水車では水位が下がります. その水位差のエネルギーが抵抗水車を回して, 米を搗く等の仕事をします. ダムの前後にも水位の差ができます. ここでは, 水位差のポテンシャル・エネルギーは熱エネルギーに変わります. 水車とダムはモーターとヒーターのモデルです. 水車やダムがなければ流水も多くなります. 抵抗が少なければ電流が多くなることに相当します. このモデルでは, 動力水車にも抵抗があることが想定できます.

  電池にも抵抗があって, これを内部抵抗といいます. これをr[Ω]としましょう. 回路に電流Iが流れると, 自分の内部でIr[V]の電圧降下を起こします. 電池の電圧発生能力を起電力といいます. 起電力がE[V]あって, 自分自身でIr[V]の電圧降下を起こしてしまうので, 有効に使える電圧は E−Ir[V] しかありません.“収入から税金をさしひいた分が手取り”といった関係です. バッテリーは内部抵抗が小さいので, 大きな電流をとりだせます. ショートさせると導線が焼き切れたりします. 乾電池では, ショートさせても内部抵抗のため, 導線が焼き切れるようなことは「めったに」ありません. でも, 電池類はショートさせてはいけません.

  米櫃の中の米のように, 電池の中の電気が出てきて電流になると思っている子どもがいます. 電気がなくなってしまうと電池は終わりになる,という訳です。しっかりした電流観を育てたいものです.

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