物理読み物 2 生物のからだの強さ B-2 No199 2010年5月15日(木)
生物のからだの各部分は力学的に必要で十分な強さを保っているように思われます.植物の根, 幹, 枝, 葉, 花,実, 種子,
…,
動物の骨, 角, 爪, 歯, 鱗, 殻(貝), 卵,
….
例えば, 貝殻をみると, ホタテガイ,
アカガイなどは, 放射肋があって,
強さへの「配慮」がみられます. 人間が使う材料でも,
鉄板, プラスチック板,
紙板などを波型構造にして, 強さや,
時には, ある方向への変形の自由度を与えています.
そして, コンテナーやダンボールや波板などが造られます.
また, 貝の殻の形はそのまま殻構造の円天井を連想させます.
鳥の卵や脊椎動物の頭骸骨の構造も同じことです. 無脊椎動物の身体, 例えば, 甲虫のからだなどは円天井そのものです.
草食の哺乳動物の角には, 節があったり, 曲がりがあったり,
ねじれがあったりして, 力学的に強度が与えられています.
フズリナのプレパラートをつくっていて, そのセル構造に感嘆したことがあります. 何億年も前の生物に, こうした複雑な構造があるなんて!
放散虫の骨格にも網目構造がみられます. ミツバチの巣の造りにも似たところがあります.
橋梁などの建造物の設計には, 脊椎動物の骨格から学ぶところがあったのではないかと思われます.
その先に葉をたくさんつけた木の枝のつけ根のところには, 大きな力がかかることはテコの原理で理解できます.
枝が木の幹に保持されるところは, 木が板につくられたときの「節」としてみることができます. 木の板の節のところは,
切ったり削ったりするときに苦労するところです.
禾本科植物の節も力学的構造のみえるところです."柳に雪折れなし,風折れなし"という柔構造も学ぶべきところでしょうし,いもむしの柔構造も面白いと思いませんか.
生物体には, しかし, 時によっては, 体の一部が切断したり,
剥離したりするようになっているものもあります.
必要にして十分な強さ,といったのはこのためです.
人間が初めて有効に手にした武器は, 大形四つ足動物の大腿骨であったのではないかと考えられるほどに,
それは力学的に強靭で, 機能的な形を持っています.
このように, いろいろなことで感心させられますが, なんといっても, 生物が細胞構造をもったということは, 出色です.
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