物理読み物18 力 M-57 No215 2010年6月17日(木)
力の概念は当然のことながら, 人間の感覚に由来しています. 私たちの遠い祖先は, 獲物を運んだり, 石を積んだり,
槍を投げたり, 樹を倒したりするような生活経験の中から,
力ということについては, 十分な理解を得ていました. 力を比べたり,
力を測ったりすることはもちろんのこと, やがて,
力の大きさを予測することも出来るようになりました. 古代の巨大な建築物の数々は, 当時の人々の力に関する知識のゆたかさを物語っています.
私たちはものに力を加えることができます. ものに直に手を触れて, 押したり,
引いたりすることで, ものに力を加えることができます.
時には, ものを紐で縛って,
その紐を引くことで, ものに力を加えることができます.
人の代わりに家畜を使うこともできます.しかし, いずれにしても,
ものに力を加える時には, そのものに<直に触れること>が必要です. そのものには, 直に触れているものが力を加えているのです. ですから, ものを紐で縛って,
紐を人や家畜が引く場合に, ものに力を加えているのは,
人や家畜ではなくて紐であるということが大切です.
力を物理的に理解するには,このことがとても大切なのです。
地球上の全てのものに重さがあります. 手で感じられない空気にも重さがあるということ,
水素にも重さがあるということ(水素には軽さがあると思っている生徒がいます)をしっかり教えることが大切です. ものに重さがあるということは, 地球がものを引いているといことです. このことは, 上に述べたことと矛盾しています.
地球はものに直に触れていないのに, ものに力を加えているということになります. 地球がものを引く力(重力)は,
当面,例外としておきます. 電気や磁気の力も,
重力と同じく例外としておきます. この例外は,
後で場の概念が導入された段階で, 修正されて,例外ではなくなります.
アインシュタインは小さいころ, 直に触れていない磁石が鉄を引きつけることを不思議に思った,
という「お話」があります.
見えないものや, 見えないはたらきを, 見えるようにするのが, 自然科学の手法の一つです. 見えない力は, それを見える矢印で表すことにしました.
すべてのものに重力が働いているのですから,
すべてのものに重力の矢印を描いて…頭で描いて見てください. 重いものには大きな矢印を, 軽いものには小さな矢印を,
そのものの中心あたりを始点にして描きます. 壮大な矢印の世界が出現しましたか.
次に, 今, 着目しているものは,
直に触れている他のものから力を受けているのですから, その力を思い描いてみてください.
机の上の茶碗は机から, 絵の額は吊るしている紐から, 椅子は座っている子ども,及び床から, という具合です. この力はものとものとが触れあっている所から,描くことにしましょう。
ここで, 視点を変えると,別の力が見えてきます. 上の例では, 机は茶碗から, 紐は額から, 子どもは椅子から, 床は椅子から(子どもからではない!), 力を受けているということです. これらの例でわかるように, 二つのものが直に触れているとき, 二つのものはお互いに力を加えあっていることになります. 力は相互作用だというのは, こういうことです. 力は必ずペアで現れます. そしてこのペアの力は同じ大きさなのです.これを作用反作用の法則といいます.
力に関するくわしいことは,物理の授業で習得してください。
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