理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

物理読み物10  オンザロックはいかがですか C-8  No207 2010年5月20日(木)     

                                                                    

 コップの水に氷を浮かべてその水位を確かめておきます. 氷が融けたら水位はどなるでしょう. 高くなるでしょうか. 低くなるでしょうか. それとも, かわらないでしょうか. 答えは, かわらない, です.

  理由は次の通りです. 氷の重さと, 水面下の氷と同体積の水の重さは変わらないので, 氷が融けたら, それまで水が占めていた水面下の体積と同体積の水になります.

  ところが, オンザロックの場合はどうでしょうか.

  オンザロックの氷が融けると温度が下がります. 上手にやれば, 0℃以下になります. 温度が下がってきて0℃になっても, 氷は氷として存在できないので, 更に融け続けますが, 氷が融けるときには1gについて80calの熱量が必要で, これを液から吸収するので温度が下がるのです. アルコールと水の混合物は0℃になっても凍ることができないので, 逆に, 0℃では, 氷はアルコールの中で存在することができないのです.

  同量のウイスキーを2個のコップに入れて, 冷蔵庫で0℃に冷やし, 一方には0℃の水を, 他方には0℃の氷を入れました.前者はわずかに温度が上がりましたが, 後者は―4℃に下がりました. 

 以前, 氷が融けてもオンザロックが薄まらないように, プラスチックで包まれた氷が売り出されたことがありましたが,これでは, 0℃以下のオンザロックがつくれないことになります.

  オンザロックでは, もちろん, 氷はウイスキーをの上に浮いています. 氷がウイスキーに沈んでいるカクテルをつくることを思いついて, まず, それに<バチスカーフ>と命名しました. 氷の比重は0.917(0), エタノールの比重は0.789(20), 水のそれは1.00(4)だから, この計画には十分可能性があります.

  酒屋が推薦する, 一番濃度が高いアブサンなる酒を買ってきました. これをコップについで, 冷蔵庫の氷を小さく割って入れてみました. だめです. 氷はアブサンに浮いてしまいました. しかし, よく見ると, 氷の中に小さな気泡が入っています. そこで, 冷蔵庫を徐冷にして, 時間をかけてゆっくり氷をつくりました. これを小さく割ってアブサンにいれると, 氷は見事に沈んで, 底でキラキラ輝いて見えました. それは美しい飲み物でした.

  このオンザロックという名がどのようにしてつけられたかは知りませんが, On the rocks は難破して, 座礁して…という意味です , このワープロを打っているのですが, 何だか酒がまわってきて, 難破しちゃいそうな状態ですヨ.

  参考までに, 200molの水に1molのエタノールを溶かす(18)とき, 溶解熱は―2.67kcal です.
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