理科実験を楽しむ会

物理読み物 1 動物の放熱機構   B-1   No198    2010515日(木)

 

 赤道直下でも,サバンナの夜はかなり寒く, ロッジの中ではストーヴを焚くぐらいです.ですから,サバンナの動物たちは毛皮を着たり,皮下脂肪を纏ったりしています.

 それだけに,昼の暑さの対策を身につけていないと困ります.

 カバは,昼間には水の中です.ワニは,水辺で大きな口をあけっぱなしで動こうともしません.バッファロも水に近いところに,どっかり座りこんでいます.

 ライオンは王様ですから,木陰で大の字に身体を展(ひろ)げて,転がっています.毛の少ない腹を上にして,あられもない格好をしています.木登りライオンもけっこう目立ちます.低い木の横枝に…それは倒木であったりしますが…またがって,四本の脚としっぽをだらりと下げて寝ています.

 ヒョウやチータやライオンのしっぽは,走る時の身体のバランスをとることにも役立っていますが,放熱にも一役買っていると思われます.

 ヒョウは樹上や岩場の涼しいところが生活の場です.

 チータは小型で<二乗三乗則>が有利です. 

 生物の基礎代謝量はその質量,即ち体重に,したがってその体積に比例しますから,発熱量も体積に比例します.つまり,それが同形ならば,たとえば,球形であれば,半径(身長)の三乗に比例します.ところが,放熱量は表面積,つまり,身長の二乗に比例するので,熱のバランスを保つには、大きな動物では,表面積を増やす工夫が必要です。

 見方を変えれば,からだが小さいほうが,単位質量あたりの放熱量が大きくなります.つまり,冷えやすいのです.

 アレンの規則…寒冷な地方に生活する温血動物では一般に,耳・吻・首・肢・翼・尾などが,より温暖な地方に生活する同族のそれよりも短くなる現象がみられる.これは,動物の体表面の面積を減少させ,体温の発散を防ぐのに役立ち,体温保持に対する適応である.

 ベルクマンの規則…恒常動物では一般に, 寒冷な地方に生活する個体の体重が,より温暖な地方に生活する同種の個体の体重よりも大きく,近縁な異種の動物の間では,より大形の種がより寒冷地にすむ,という現象がみられる.寒冷地においては動物の体表面が体重の割合に小さければ,体温の発散を防ぐ適応として意義がある.(岩波 生物学辞典)

 いずれも例外がある,と説明されていますが,動物を見る一つの視点となります.

 

 ヌー,シマウマ,アンテロープ類はいつでもしっぽを振っています.

 キリンやダチョウの首も放熱作用がありそうです.

 ゾウの耳は見事なラヂエターです.リカオン,ハイエナ,オオミミギツネの耳も大きいですね.

 地面に掘った穴の中で生活している動物もたくさんいます.

 肉食動物の多くは夜行性ですから,その身体も寒さに強くつくられているのかもしれません.

 昼間,草原にいるライオンが口を開いて肩で息をしている姿は,恰好いいものではありません
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