電磁の学習 1 E-147 No344 2012年2月16日(木)
このシリーズは,1988度の電磁の授業(3年生)で, 生徒から出た質問・意見,
石井のコメントなどを, B5版1枚の更紙にまとめて, 生徒にフィードバックしたものです.
身の回りの整理をしていたら(もう, 先は長いことないので),
その1部がでてきたので, 記事にしました.
静電気(1)
88/4/21
1 すべてのものが原子でできていて, 原子は原子核と電子でできているのだから, どんなものでも, 電気でできているのです. 摩擦や誘導で, そのことをたしかめ, 確信がもてたら,
この学習は大半の目的が達せられたと言ってよいと思います.
2 静電誘導で, はじめてマイナスの電気がアースされて地球に逃げていき,
次いでプラスの電気がアースされて地球へ逃げていったら, しまいには, その物体から電気がなくってしまうのではないかという心配がありませんでしたか.
マイナスの電気は電子が運ぶのですから, 電子という実体が地球へ移動するのですが, プラスの電気はイオンが担っているいて,
そのイオンは物体の主体を構成しているのですから, これが地球へ逃げていくことはありません. プラスの電気が逃げるのではなく,
地球からマイナスの電気が入ってくるのです. もっと言えば,
さっき, 地球へ移動して行った電子が戻ってきたのです.
3 ハミルトン風車が回る理由について. 尖端放電といって, 電気は細いところから放電し易いのです. これを, マイナスの電気で回すときには, 尖端から電子が飛び出すのですから, その反作用で回り(これも運動量保存です), プラスの電気で回るときには, 尖端に電子が跳びついてくるのですから,
その運動量を貰って回る筈です. ところが,
電子はあまりに小さくて, その運動量ではハミルトン風車は回りません.
電気振り子を摩擦したアクリル(塩ビでも同じ)の棒で跳ね飛ばしたことを思い浮かべてみましょう. 振り子が跳ね飛ばされる速さが大きかったことを記憶しているでしょうか.
ハミルトン風車も, これと同じように,
空気中のほこりや水滴を, 静電誘導で引きつけては電荷を与えて跳ね飛ばしながら, その反作用で回り出すのです.
電子がものに運ばれて移動するのです.
4 極板の上に金属缶(コ−ヒ−)を乗せておいた検電器を浮かせておいて(アースから絶縁させておく), 瓶を静電誘導させた実験について. 塩ビの棒を使用した場合には, 静電誘導・アースの後, 瓶はプラスに帯電していて, これが,箔をマイナスに, 缶をプラスに静電誘導させます. この場合, 箔のマイナスは瓶のプラスより量が少ないのです. 何故なら, 箔のマイナスは缶のプラスにも引かれているからです.
缶をアースすると, 瓶のプラスに引かれて,
地球からマイナスの電気が入り込み, その一部は缶のプラスを中和させ, 一部は箔にたまって箔を更に多く開かせたのです. この時, 箔と瓶の電荷は等量です.
5 静電気と動電気(電流)とでは,
導体と不導体の概念が異なります. 静電気の場合は電圧が高いので,
大概のものが導体になります. 不導体はアクリルや塩ビなど,
ほんの一部のものだけです. 従来,
導体は金属だけ, といわれていました.
つまり, 自由電子は金属だけにあるものと思われていました.
でも, 実際, 静電誘導を起こすものは, 自由な電子を持っていると考えざるを得ません. 静電気の高電圧で, 電子が「もぎ取られ」て自由電子のようになるのでしょう.
6 電流の働きを思い出してみましょう.熱作用,化学作用,磁気作用の三つがその主なものでした.静電気にもこの三作用があることが見られれば,静電気も電流と同じ電気であることがわかるでしょう.
静電気(2)
88/4/30
1 +の電荷と−の電荷は電気力線で結ばれているという考えがあります. いやいや, 電気力線をもっと積極的に考えて, 電気力線の切り口が電荷なのだという意見もあります.
電気力線が実体だとしても, モデルだとしても,
電荷の+と−を結んでいると考えることは有効です. 電気力線の性質としては, +の電荷から出て−の電荷に入る, +の電荷から出て∞に(そこには−の電荷があるに相違ない)到達する, ∞から(そこには+の電荷があるに相違ない)来て, −の電荷に入る, のいずれかです. 閉曲面の内部に単独の電荷があったら,
電気力線はどうなってしまうでしょう! だから,
閉曲面の内部には電荷は存在できません.
2 場が登場すると, 必ず, 念力場が取り沙汰されます.
ユリゲラーがやると, どうのこうの,
ということになるのです. 科学は民主的な学問で,
誰が, 何時, 何処でやっても,手順を間違えなければ, 必ず再現できます. <ものは人間を差別しない>のです.
3 落雷で移動する電荷はせいぜい 20〜30クーロン程度ですが,電圧は非常に高く100[MV]もあります(Mはメガで100万). エネルギーはQ×Vだから,
落雷のエネルギーは25×10^8[J]
にもなります.
4 オームの法則で考えると V=I・R
だから, 電圧が大きいと電流も大きいと考え勝ちですが,
静電気では, そうはいきません.
この関係は, 電流が流れた後,
すぐに電圧が復活するときのことです.
コンデンサーでは電流が流れると同時に電圧が下がってしまいますが,
静電気も溜まっている電気ですから, これに似ています.
それに, 静電気は, 普通, 抵抗の大きい「絶縁体」ところを流れることが多いのです.
5 金属のファスナーがついている服を着ていた人が,落雷で助かるケースが多いそうです.ファスナー効果といいます.一種の静電遮蔽と考えてよいかもしれません.自動車のなか,蚊帳の中なども,雷に対して安全地帯です.
“完全武装した西洋の騎士が兜の上に尖ったものをつけたら…”という面白い<読み物>の紹介があります.
6 静電誘導はどんなに小さいものでも起きます.線香の煙一粒でもそうなります.もっともっと小さな原子の中でも起きます.教科書見開きの2ページが化学式で一杯になってしまう<TCAサイクル>(クエン酸回路)のような複雑な化学反応も,
あの小さい細胞の中で起きているのですよ. それに比べれば,
静電誘導なんか…
7 アースは電気的に中性にすることなのでしょうか.
*そうではありません.アースしても必ずしも中性になりません.地球と電位が同じになるだけです.また,+をアースするのは聞いたことがないような気がするが,
あるのでしょうかという意見もありましたが,+をアースすることはいくらでもあります.アースするというのは,地球を電気的ポテンシャルの基準面にとるという意味です.
8 キーホルダーにネオン管をつけたものが<王様のアイデア>で売っているそうです. 自動車から降りてドアを閉めようとするとき,電気ショックを受けることがよくありますが,このネオン管で放電させてからドアを閉めようというものです.やりますね!でも, 値段もナカナカでして,
1200円だったそうです.
9 どんなものでも接触すれば, 電子の往来があるというのは, カルチャーショックでした, という感想がありました. 場の考えについても, 同様な感想が聞かれました. インドに住んでいて帰ってきた人が, 当初, 電気がびりびり来るといって電車に乗れなかったそうです. 何ショックでしょうね. キャパシターの500Vに触ってショックを受けた人の感想に, これからも実験に「手を出していきたい」, とあって感動しました.
10 ショッカーで買い物, 安いネ!
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