作用反作用Part2 その5 変形は加速度運動 M-80 No255 2011年2月3日(木)
ばねにおもりを吊すと、ばねはおもりに引かれて伸びます。ばねは加えられた力に引かれて伸びたのです。おもりがばねを引く力は、ばねにとっては外力です。
この状態で、今度は、おもりを取り去ると、ばねは縮みます。
どのようなメカで縮んだのでしょう。引いていた対象(おもり)ががなくなったので、おもりを引いていたばねの弾性力は、自分に加わって自分を縮めたのでしょうか。それはありえません。力は自分にははたらけないからです。
例えば、宇宙船の中で浮いている人をイメージしてみましょう。この人が、自分の手で自分の身体を押したとしてみます。こうしても、この人は動きだ出したりはしません。動き出すには、他のものから押されるか、引かれるか、しなければなりません。例えば、壁からとか、仲間からとか、です。
前の問題に戻って、ばねは何に引かれて縮んだのでしょうか。おもりがなくなってしまったので…、とすると、力ではなく、自分の弾性エネルギーで縮んだという のでしょうか。
伸びるときには、その変形は力により、縮むときには、その変形はエネルギーによる、という「論理」は、身勝手過ぎはしませんか。
さて、この装置をよく見ると、ばねは天井から引かれています。
ばねの重さは省略するとして、天井がばねを引く力と、おもりがばねをく力とは、つり合っていたのです。ばねがなくなった現在、この天井からの力だけがばねに加わって、ばねを加速運動させたのです。おもりがなくなったという情報は、天井まで、ばねの中を音速で伝わっていきます。そして、天井からの力で…。
小さい舟に乗っている人を考えてみます。理論を簡単にするために、この人が舟の重心に立っていたとしましょう。人は舟の前の方に歩いて行ったとします。この時、人は舟に押されて前へ進み、舟は人に押されて後へ動きます。しかし、全体の重心の位置は変わりません。舟と人を一つのものと考えて、これを
<舟―人の系>と呼びます。舟と人は力を及ぼしあっても、<舟―人の系>
には力(外力)がはたらいていません。このような、系の内部の力を内力といいます。
質点mにはたらく力 f は、これに加速度αを与えます
(f=mα)。 これがニュートンの第2法則です。物体が形の大きさを持つ場合には、その物体を細分化し、その一つ一つの質量にはたらく力を検討してから、それらを合体させて考える、という方法をとります。それは、この物体の質量全体が、重心に凝縮して質点となった、として扱ったのと同じことになります。
この考え方をすると、天井がばねを引いたので、ばねの重心は加速度運動をしたのです。加速度運動の時間は短いのですが、明らかに、ばねの重心は加速度運動をして、距離Sだけ上方へ移動したことになります。もちろん、ばねの形も変わっていますが、ばねの各点には微分的に力が加わって、全体的に加速度運動したと見ることができます。
ニュートンの運動法則の表題が<自然哲学の数学的原理>であることを考えると、納得できようというものです。
ニュートン力学では、質点や剛体という概念で、変形の力学を捨象したとも考えられます。