学術用語集 | 研究社の英和辞典 |
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掲示板 | 石井信也 |
作用反作用 その3
M-42 No187 2010年1月28日(木)
0 作用反作用の法則
1 広辞苑によると
作用反作用:二つの物体が互いに力を及ぼし合う時には,
これらの力は常に大きさが等しく, 向きが反対である.
もちろん, これでよいのですが,
この法則に関しては色々なトラブルが起きるので, それらの点について述べてみます.
2 NHKがテキスト物理Aで, 述べているところでは,
作用反作用:物体Aが物体Bに力を加えると, それと同時にかならず,
Aはこれと同じ大きさ, 同じ方向で反対向きの力をBから受ける.
Bから力を受けないようにすると, Bに力を加えることはできない.
3
(1)これは法則だから, 常に成立するもので,
<かならず>という文言は要らないのですが,強調の意味でつけられたのでしょう.
(2)
この原理の重要な点の一つは, 作用と反作用とが同時に起きるということです.
<当然>と思われるところですが,この点に関わる問題が起きるので,この点はしっかり書き込まれた方がよさそうです.
そもそも,作用反作用という表現そのものが, 作用があって反作用が起きるとう錯覚を起こさせるかもしれません.
両方の力のどちらを作用, どちらを反作用と呼んでもよいということを注意書きしている本もあります.
教室の清掃で机を動かすとき, 机を動かそうとしたのは生徒ですから,
そちらの力が作用で…と考えがちです.しかし,科学が扱う無機世界では,そこに,
動機・端緒・因果・雰囲気などが入り込む余地はありません.
4 つぎに,力の方向と向きです.例えば,重力は鉛直方向下向きですが,方向という表現には向きが入っていません.力はベクトルだから, 向きが入らないと具合が悪いのでしょう. でも, 向きだけでは, 状況を十分に表現できないのです. だから, 方向をも併用しようという訳です.
文部省発行<学術用語集 物理学編>(昭和29年3月
大日本図書)にも, この「学術用語」には触れていません.
KENKYUSHA'S NEW ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY
によると
direction:方向,方角,方位,方面
sense:[数](vectorなどが示す相反二方向の一方の)向き
ということになっています. 状況を明確にするためには,
両者を使い分けたいと思っています.
もう一つの問題点があります.重力方向と表現されたときには,人によって重力の作用線が異なります.だから,厳密にいうと,方向というより, 同一直線上で…とか,同じ作用線で…とか,いいたいところです.
蛇足
1 ここで,私の,作用反作用の法則を書いておきます.
前段:ものとものは押し合ったり,引き合ったりします.この相互作用が力です.
ここまでは,小学校でも教えられます.力がものからものへはたらくということが重要なのです.
後段:このとき,二つの力は,同時にはたらき,同じ直線上にあって向きは逆で,大きさは同じです.
これを作用反作用の原理といます.中学校では,力学の基本原理として,このことをしっかり教えたいものです.
2 この原理は,力が一方的にはたらくことはない,といっています.
二つのものとものとが,直に触れあっていて,そこで初めて,力のやり取りが起きるのです.
アメリカの物理テキストからの引用です.
You cannot touch without being
touched.
(ものに)触れることなくして, (ものに)触れることはできない.
4 こうは言うものの,重力と電磁気力は,直に触れ合っていなくても力のやり取りがあります.当面,例外とでもしておきましょう.
作用反作用の法則は, 原理ですから説明を必要としません.
5 重力は二つの物質が引き合います. F=G・mm'/r^2
電気力は二つの電荷が押し合ったり引き合ったりします. f=k・qq'/r^2
重力は質量mの相互作用で, 電気力は電荷qの相互作用です.