94.光は波だといっていたのに――光の粒子性
[授業のねらい]
光の本質は粒だと思われていた頃がありました。その後,光の本質は波だと思われてきました。ここにきて,ふたたひ,光には粒子性があることが問題になります。否定されて,否定されて,光はどうなるのでしょう。
[授業の展開]
≪実験1≫ 箔検電器の箔をマイナスの電気で開かせておきます。箔検電器の電極に紫外線(ブラックライト。装置は秋葉原で1500円くらいで買えます。
1990年記)を当てるとどうなるでしょうか。電極は真ちゅうでできているようです。 ボール紙に両面接着テープをはりつけて箔検電器の電極と同じ大きさの円形に切ります。マグネシウムリボンを切って,これを並行にびっしり貼りつけてマブネシウムの電極をつくり,サンドペーパーで磨いておきます。これを箔検電器の電極の上に載せて,上の実験をやり直しましょう。
使い終わった単1乾電池を壊して亜鉛の缶を切り開き,上と同じ形で,同じ大きさの亜鉛電極をつくります。これを箔検電器の電極の上に載せて,上の実験をやり直しましょう。
≪実験2≫ 箔検電器をプラスで開かせておいて,上の三つの実験をやり直します。この実験は,毎回,電極をサンドペーパーで磨いてから始めます。
紫外線は負に帯電している亜鉛やマグネシウム金属の表面から電子を跳びださせます。
≪実験3≫ 横河のエレクトロニック検流計に白色の発光ダイオードをつないで,これに光を当ててみましょう。白の発光タイオードを赤,黄,緑,青のセロファンで包んでから光を当ててみましょう。
赤い光ではいくら光を強くしても,回路に電流は流れませんが,青い光では,それが弱くてもそれなりの電流が流れます。
≪実験4≫ 赤,黄,緑の発光ダイオードに白色光を当ててみましょう。
≪実験5≫ 高入力抵抗電圧計にいろいろの発光ダイオードをつないで,これに光を当ててみましょう。発光ダイオードを2本,3本と直列につないで,光を当ててみましょう。太陽光とテスターの電圧計で実験してみましょう。
実験の結果は表のようでした。
(表p189)
この実験を赤の発光ダイオードでもやってみましたが,なかなか電圧が上がらず,時間をかけると1個で,やっと1Vまで上がりました。(図p189)
(注)使用した白の発光ダイオードをスライダックで(整流しないでもよい)
徐々に電圧を上げていくと,光の色が初め赤から黄に,そして緑っぽく変わっていきます。
≪問1≫ 上の実験からなにがわかりますか。とくに,赤い光をいくら多く当てても,電子を跳びださせることができないことは,どう考えたらよいでしょうか。
P 緑,黄,赤の順に光が強い。
P 光が電子に作用して電子を動かすことがわかります。
P 光が電子にエネルギーを与えた。
P 光が電子に衝突して運動量を与えた。
P 光は電子と一対一で作用しあっている。そうでなければ,弱い赤い光でもたくさんあれば,よってたかって電子を動かすはずです。
≪問2≫ 光にも「原子」があって,それぞれにエネルギーの大きさが決まっているとしたら,エネルギーの大きさを決めるのはなにでしょうか。
P 光に「原子」があるのなら原子量で決まる。運動エネルギーは1/2mv^2 で v=c で一定だから。
P 波のエネルギーなら振動数が大きいほうが大きい。
P 緑が強いんだから振動数でしょう。
P 青や紫の発光ダイオードはないんですか。
これらのことから,つきの仮定をたててみます。
仮定1 光のエネルギーはその振動数に比例する。
E=hν E:光のエネルキー ν:振動数 h:比例定数
仮定2 金属から電子を引き離す限界のエネルキーがあり,金属によって
異なる。これをφとします。
仮定3 φ以上のエネルギーが電子に与えられたときには,電子の運動エネルギーになる。これを1/2mv^2 とする。
≪実験6≫ 理振法の備品にブランク定数測定装置があります。上の仮定を確かめ,比例定数 h を求めなさい。
光電管の陰極に振動数νの光を照射したときに,跳びだす電子(質量m)の速さ v はつぎの式で決まります。 hν−φ=1/2mv^2
いま図のように,陰極と陽極のあいだに電圧をかけると,速さ v で陰極を跳びだした電子は,電場によって減速されるので,回路の電流は減少します。
電流が 0 になるときの電圧を
V とすると,つぎの式が成り立ちます。(図p190)
1/2・mv^2=eV ただし eは電気素量で
e=1.6×10^(−19)C
光電管に光を当てて回路に電流を流しておき,電流を 0 にする電圧(これを阻止電圧といいます)を測定します。
光の色を変えて阻止電圧を測定し,vを横軸,Vを縦軸にとってグラフをかくと,縦軸の切片からφが,勾配から h が求められます。
この実験で使用するフィルターの色の波長は,つぎのように示されます。
紫4046.56Å 緑4347
50Å 黄5460.74Å 赤5769 59Å
実験で光電流と阻止電圧を測定しましょう。
測定結果はつぎのようでした。 (表p190)
黄のフィルターの場合はうまくグラフにのりませんでした。フィルターの色の波長測定をする必要があります。
これを除いて考えるとグラフ(略)から,
h=(1.6×10^(−19)×0.90)−(0.32×10^15)=4.5×10^(−34)(Js)
φ=1.28×1.6×10^(−19)=2.1×10^(−19)(J)
エネルギーが仕事 fs に関係するのに対して,運動量は力積 ft に関係します。光のエネルギーが1sにおける振動の数である振動数νこ関わるとすれば,光の運動量は1mにおける振動の数である「波数」に関係するに違いありません。単位長さにおける波の数てある波数はベクトルです。
光のエネルギーが hνなら,光の運動量は hτでしょう。 図に描くと下のようになります。
(図p191)
図から 1/τは波の波長λに相当することがわかります。したがって,光の運動量は h/λ としてもよいのです。エネルギーを E,運動量を p とすると,
E=hν p=hτ E/p=hν/(h/λ)=νλ=c(光速度)
νT=1 λτ=1 νλ=1/(τT)=c (Tは周期)
ちなみに諸関係をまとめておくと
個数 長さ 時間
1 λ T
νT=1
ν νλ 1
λτ=1
1/λ
1 τT v=λ/T=νλ=1/τT
≪問3≫ 光が波勤性をもちながら粒子性をもつというイメージを.どのように表現したらよいでしょうか。
光は,波動性を強調して呼ぶときには光波,粒子性を強調して呼ぶときには光子といいます。
[まとめ]
1
光は電子と相互作用します。
2
光のエネルギーは振動数に比例します。
3 光の運動量は波数に比例します。あるいは,波長に反比例します。
4
光を粒子と考えるときには光子といいます。
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