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掲示板 | 石井信也 |
88.電磁場の学習をまとめると―――電磁気の全体構造
[授業のねらい]
いままでに学習してきたことの骨組みをまとめてみましょう。そこからなにがでてくるでしょうか。
[授業の展開]
いままで学習してきた事柄をまとめてみると,下の図のようになります。
≪問1≫ 上のダイアグラムのそれぞれの式を,普通の言葉でいい表してみましょう。
(図p156)
つぎのようにまとめてみました。( )はその部分を学習したところです。
電荷Qが移動すると電流Iになる。 Q/t=I
… (1) (§56)
電流Iがたまると電荷Qになる。 It=Q
… (1)’(§56)
電荷Qは電場Eから力を受ける。 F=QE …(2) (§57)
電流Iは磁束場Bから力を受ける。 F=I l
B … (3)
(§70)
点電荷Qはその周囲に電場Eをつくる。
E=D/ε0=Q/4πr^2ε0 …(4) (§58)
磁荷のΦはその周囲に磁束場Bをつくる。
B=Φ/S(SはΦを囲む面積) …(5) (§69)
直線電流Iはその周囲に磁束場Bをつくる。
B=μ0H=μ0 I/2πr …(6) (§71)
磁束場Bが遠さvで移動すると電場Eを発生する。E=Bv …(7) (§76)
電束場Dが速さvで移動すると磁場Hを発生する。H=vD …(8) (§71)
電束場Dで電場Eを表す。真空中では, D=ε0E …(9)
(§58)
磁場Hで磁束場Bを表す。真空中では, B=μ0H …(10)(§72)
このプランでは E−B 対応で進めてきたので,(8)(9)(10)をまとめると,
B=ε0μ0 vE … (11)
(7)と(11)が同じ関係を表しているのであれば
E=Bv=ε0μ0・vE・v=ε0μ0 v^2E v^2=1/ε0μ0
≪問2≫ この式に数値を代入してみましょう。
ε0=8.85×10^(−12)(C^2/Nm^2) μ0=1.26×10^(−6)(Wb/Am)を代入すると,
v=3.00×10^8(m/s) が得られます。
これは光速と同じ数値です。ここは,この電磁気学習のハイライトです。
≪問3≫ 上の全体像について感想をいいなさい。
生徒の感想
P 土曜日と月曜日の「電磁気学のまとめ」は感動的でした。
月曜日は,はなはだ体調が悪くて,学校に行きたくないと思いましたが, 土曜日の物理の授業がすごかったので,これは絶対に休んではならぬ, と頑張って登校しました。まだ理解が足りないので,これから復習をしようと思っていますが,いままで嫌いだった電磁気に興味をもつようになっただけでも,すごい進歩だと思います。電磁気学の学術性に初めて触れた という気がしています。
P QC→Q本から始まって,電磁力をみちびきだし,揚げ句のはては,光速度にたどりつくという,物理という学問の壮大さ,幅の広さに感動した。
P Bv=E の式,磁場が動くと電場ができるということを学んだとき,友達が「では,電場が動くと磁場ができるのじゃないか?」と言った。このことはだれでも気づきそうなことだけど,僕は言われるまで気づかなかった。
P 磁束揚が走る→電場 なので,走らないと化けられない磁束場は電場の子分かと思っていたら,電揚が走る→磁束場 も成り立つのですねえ。したがって,晴れて「磁」と「電」は兄弟分となりました。
P いままでほんとうに,電界と磁界とは表裏一体,つまり姿を変えた同じものだということはちっとも知りませんでした。互いに影響を及ぼしあうのは知っていましたが。
場の学習の困難さの一つは,物質の学習のように,じかには目に見えないということです。そのため,場を力線でイメージすることにしました。
電気と磁気では,同じような力線を使っていても,磁力線の方がなじみが多いようです。磁力線(磁束,磁束線)を表すのに磁束Φを用いました。
磁荷が存在するのなら m Wb の磁荷からΦ(=m)本の磁束がでるとするのでしょうが,じつは電流 I が Φ をつくるのですから,考え方を遂にして,Φを束ねたものを磁石とし,その出入り口に磁荷 m があって,そこからΦがでているとしてもよいでしょう。つまり,1本の磁束 Φ の両端,あるいは切り口に磁荷 m(=Φ)のN極とS極が存在するということにするのです。
同様に考えれば,QCの電荷からΨ(=Q)本の電束がでるとするのがいいでしょう。Q本の電束よりΨ本の電束の方が実感が伴うようです。電束は,これまで学習してきたように,プラスの電荷からでて (図p158-1)
マイナスの電荷に入ります。相手の電荷が近くにないときには無限遠にあると考えます。このような場合には、電束はプラスの電荷からでて無限遠に発散するか,無限遠からやってきて,
(図p158-2)
マイナスの電荷に収斂します。近くに金属があるときには,電束は金属のマイナスの電荷に向かって垂直に入り,これと組をつくるプラスの電荷からは,別の電束がでていきます。これが静電誘導です。
≪問4≫ 電束や電気力線の切り口を+−の電荷とし,磁束や磁力線の切り口を磁石の N S の磁荷とする見方をどう思いますか。 (図p159)
≪問5≫ 電子 1 個から 1本の電束が出る,という考え方も魅力的です。このように考えると,1Cの電荷から何本の電束がでることになりますか。
電気素量は1.6×10^(−19)Cなので,1Cの電荷は6.3××10^18本の電子から成っていて,1C からはこれだけの電束がでているとするのです。
P この間まで,電荷が見えなくて,なかなかわかりづらかった。 やっと見えてきたと思ったら,電荷のバックに場があって,また見えにくくなった。
物理は物の理論だと思うけど,近ごろ物がでてこないから,難しさが100倍だ。
教師のコメント 場も「もの」なんですヨ。2年では化学物質(原子でできているもの)の物理,3年では「場という物質」の物理です。物質の概念を狭義に捉えてはいけません。概念も拡張されます。 認識も進化するのです。
磁荷 m は実在しないでも,補助概念としては魅力があります。
[まとめ]
1 場を中心にして電磁気学をまとめてみましょう。
2 場は力線でイメージします。
3 力線は切り口には電荷,磁荷が現れます。