60. 電気をためておく道具―――コンデンサー
[授業のねらい]
コンデンサーはキャパシターともいいます。少量の電気をためておく道具です。
計算できるだけでなく,使いこなせるようになりたいものです。
[授業の展開]
≪実験1≫ C=4μF のコンデンサーを V=1,
2, 3, 4, 5, 6V の電圧で充電して,たまった電気量Qを測り,Q−V のグラフを描きなさい。
電気量は定電流装置,弾動検流計,クーロンメーターなどで測ります。
このグラフから Q∝V がいえそうです。
≪実験2≫ V=6V の電池で C=1, 2, 3,
4, 5, 6μF のコンデンサーを充電して,たまった電気量Qを測り,Q−C のグラフを描きなさい。
静電容量は容量計で測ります。テジタルの容量計(キャパシタンスメータ−)は2万円余(1990年記)で求められます。1台は用意したいものです。
このグラフから Q∝C がいえそうです。
ほかに電気量を決める要素がないとすると Q=kCV
1Vの電圧で1Cの電荷がたまる静電容量を1Fと決めると,k=Q/CV
=1(C/FV)となり, Q=CV となります。
コンデンサーの極板の面積がS,極板の距離がdである平行平板コンデンサーをQで充電します。
+QCの電荷からはQ本の電束がでていて,−QCの電荷にはいっています。
電束密度 D=Q/S で電場の強さEを表します。
その比例定数をεo(真空中)とすると, D=ε0E
極板間の電圧をVとすると, V=Ed なので,
静電容量は極板の面積に比例し,極板の間隔に反比例することがわかります。
ε0(=8.85×10^(−12)F/m)は真空の誘電率で,極板間の空間が物質で満たされているときにはε0 はその物質特有の値εに変えられます。εを物質の誘電率といい,
ε=εrε0 のεr を物質の比誘電率ということはすでに学習しました。
≪実験3≫ 2枚の金属板で平行平板コンデンサーをつくり,静電容量を測定してε0 の値を計算しなさい。空気の比誘電率は1とみなせます。
≪実験4≫ 2μFと4μFのコンデンサーを直列につないで6Vのバッテリーで充電してから離して,それぞれのコンデンサーの電圧を高入力電圧計で測りなさい。それぞれのコンデンサーにたまった電気量をクーロンメーターで測りなさい。この結果からどのようなことがわかりますか。
≪実験5≫ 2μFと4μFのコンデンサーを並列につないで,上と同じ実験をしなさい。この結果からどのようなことがわかりますか。
コンデンサーの実験で大切なことは,実験を始めるまえに,コンデンサーが完全に放電されているかどうかを確かめておくことです。
直列につながれたコンデンサーでは,一つ一つのコンデンサーには同じ量の電気がためられます。電気量は保存されるので,それ以外のたまり方は考えられません。C1,C2,C3,C4…・のコンデンサーが直列につながれてVで充電されたときには,それぞれにかかる電圧をV1,V2,V3,V4,…とすると
Q=C1V1 Q=C2V2 Q=C3V3 Q=C4V4 …
V=V1+V2+V3+V4+… 合成容量をCとすると
Q=CV=C(Vl+V2+V3十+V4+ )
=C(Q/C1+Q/C2+Q/C3+Q/C4+…)
∴ 1/C=1/C1+1/C2+1/C3+1/C4+…
一つ一つのコンデンサーにそれぞれQの電荷がたまっているのに,全体でもQしかたまっていないということを,はじめ生徒たちは不思議に思います。コンデンサーに電荷がたまるというのは,まじりあっていた電気を分離したのであって,「物質のようなもの」を取りだしたのではなくて,エネルギーを取りだしたのだということを確認します.
つぎは並列の場合です。 C1, C2, C3, C4,‥‥のコンデンサーが並列につながれてVで充電されたときには,それぞれのコンデンサーには同じ電圧がかかります。それぞれのコンデンサーにたまった電気量をQI, Q2, Q3,Q4,‥ とすると,
Q1=C1V Q2=C2V Q3=C3V Q4=C4V …
合成容量をC,全体の電気量をQとすると,
CV=Q=Q1+Q2+Q3+Q4+…=C1V+C2V+C3V+C4V+…
C=C1+C2+C3+C4+…
n個の同じコンデンサーをつないだとして考えてみましょう。直列の場合には極板の面積は同じなのに,極板の間隔がn倍になったので,容量が 1/n になったのですが,並列の場合には,極板の間隔は同じなのに,極板の面積がn倍になったので容量がn倍になったのです。
≪実験6≫ 25×25cm^2のアルミホイルを2枚と,ザラ紙1枚を生徒に渡して,できるだけ容量の大きいコンデンサーをつくらせます。
できた作品は,容量計で容量をはかってクラス・ギネスを競わせます。だいたいの大きさは,数十nF(ナノファラド)程度です。
ついでに,ペーパーコンデンサーを壊して,その作り(構造という程のものではない)を見せます。
生徒の感想
(1) わたしは抵抗とかコンデンサーとかが神秘的にみえるのです。その神秘を自分でつくったということで,なんだか神秘がすこしくずれてしまいました。でもそのぶん,コンデンサーの本質がみえてきたような気がします。
「理論はあとからついてくる」,これが,私が物理で学んだ方式です。
(2) あんなに小さいコンデンサーなのに(実際に使われているものは),数十マイクロファラドなんていう大きな容量なのは,面積に限りがあるのだから,極板の間隔が小さいに違いない。だから,容量の大きなコンデンサーの耐圧が小さいのだろう。
自分でつくったものがn級だったので、μ級の大きさに驚いたのでしょう。
≪問1≫ 容量Cのコンデンサーを電圧Vで充電すると,どれだけのエネルキーがたまりますか。
平行平板コンデンサーで考えます。一方の極板から距離dにある他方の極板へわずかな電荷を運びます。はじめはコンデンサーの極板の空間に電場がないので,電荷を運ぶのに仕事を必要としません。しかし,少しでも電荷が運ばれると,それによって電場Eができるので,つぎからは運ぶ電荷に電場から力Fがはたらき,そのぶん仕事をしなければなりません。そして電荷が運ばれるにつれて電場が強くなるので,だんだん仕事をするのが困難になっていきます。最後にコンデンサーの電圧がVになり,電荷Qがたまったとすると,平均の電位V/2のところへ電荷Qを運んだ仕事Wが静電エネルギーとなって蓄えられたと考えればよいので,
W=F・d=QE・d=Q(V/2÷d)=QV/2
他の形も書いておくと 1/2・QV=1/2・CV^2=1/2・Q^2/C
重力場と比較すれば,Eはgに,Vはghに対比されます。
F=QE F=mg W=QEd=QV W=mgh
係数1/2がつくのは,ばねに貯えられたポテンシャルエネルギー1/2・k x^2の1/2と同じです。
このエネルギーはつぎのように,電場の空間のエネルギー密度として表すこともできます。 W=1/2・QV=1/2・CV^2=1/2・ε0 S/d(Ed)=1/2・ε0 (Sd)E^2
Sdはコンデンサーの空間の体積なので,単位体積当たりのエネルギー,つまり電場のエネルギー密度は 1/2・ε0 E^2 となります。
≪問2≫ このように1/2・ax^2 という形で表現されるエネルギーにはどのようなものがありましたか。
≪問3≫ 平行平板コンデンサーを充電してから,極板の間隔を2倍に引き離したらどうなるでしょう。
(1) 充電完了後,電源から切り離した場合には Q=CV 極板の間隔を2倍にすると,容量は半分になるのに,電気量は変わらないので,電圧が2倍になります。したがって,エネルギーも2倍になります。
(2) 電源につないだままこの操作をすると,FはそのままでCが1/2になるので,静電エネルギーは半分になってしまいます。
≪問4≫ 上の(2)で,外力は仕事をしたのにコンデンサーのエネルギーが減ってしまったのはどうしてでしょう。
電源が充電されたのでしょう。
[まとめ]
1 コンデンサーは電気をためる道具です。
2 コンデンサーは二つ以上つないで使うことができます。
3 コンデンサーは充電されるとエネルキーがためられます。
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