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掲示板 | 石井信也 |
59 .電気が高い所から落ちてくる―――電位
[授業のねらい]
物体が高い所から落ちてきて運動エネルギーを得るように,電気も高い所から落ちてきて運動エネルギーをもちます。このように考えたときの電気の高さを電位といい,このような場をポテンシャルの場といいます。
[授業の展開]
≪問1≫ 平行平板コンデンサーで,テスト電荷(小量の+電荷)がプラスの極板からマイナスの極板まで移動するとどうなるでしょうか。
平行平板コンデンサーの極板の間隔をdとします。プラスの極板のすぐ近くに置かれたテスト電荷+Qは電場Eから F=QE の力を受けて運動を始め,マイナスの極板に到達するまでに,電場EからFdの仕事をされて,それだけの運動エネルギーを得ます。 電荷を担っている質量mの物体が得た速さをvとすると, Fd=QEd=1/2・mv^2
≪問2≫ これを重力場における物体と比較しなさい。
地球上で高さhに置かれた質量mの物体は,鉛直下向きにmgの重力を受けて運動を始め,地上に達するまてにmghの仕事をされて,運動エネルギ−を得ます。重力の大きさをFとすると, Fh=mgh=1/2・mv^2
電場や重力場のように,そこに置かれた電荷や質量が力を受ける場を力場といいます。力場はベクトル場です。これに対して,そこに置かれた電荷や質量がエネルギーをもつ場を考えたとき,これをポテンシャル場といいます。
ポテンシャル場はスカラー場です。
重力場gの場合には,適当な位置を基準面に決めて,そこからの高さhのところにghというポテンシャルを考えます。そこに質量mを置くと,その物体は基準面に対してmghのポテンシャル・エネルギーをもつことになります。ghを重力ポテンシャルといいます。
電場Eの場合にも,適当な場所を基準に決めて,そこから「高さ」dのところにEdというポテンシャルを考えます。そこに電荷Qを置くと,その電荷は基準面に対してEdQのポテンシャル・エネルギーをもつことになります。Edを電気ポテンシャルといいます。
基準面は,重力場の場合には地球表面に,電場の場合にはアースされたところにとることがあります。
重力場の場合のghには特別な呼び名はありませんが,
電場の場合にはEdはVと書かれて電位と呼ばれます。単位はボルトです。ふつうはアースされたところを電位の基準面とし,V=0 とします。基準面のとり方は自由です。
これをまねて,重力場のghを<重位>とでも名づけてみましょう。単位はG(ガリレイ)とでもしましょうか。
電位の差を電位差といいます。重位の差を重位差としましょう。
≪問3≫ 1kgの物体を運ぶのに1Jの仕事を必要とする重位を1Gとします。1Gの重位差は地上付近では高さ何メートルに相当するでしょうか。
W=mgh=mG g=10 とすると,
1=1×10×h=1×1 h=0.1(m)
≪問4≫ 1回の落雷で「落ちる」電気量Qは20〜30C程度だそうですが,雷雲と地球との電位差は20〜30MVもあります。1回の落雷で運ばれる電気エネルギーはおよそいくらでしょうか。M(メガ)は10^6です。
≪問5≫ 電位の等しいところを結んだ線,および面を等電位線,等電位面といいます。等電位線や等電位面は電気力線に垂直です。その理由をいいなさい。
≪実験1≫ 印刷用ファックス原紙の裏紙を回路の一部にして,紙の中の電位の等しい所(等電位線)をテスターで探して結んでみましょう。電気力線は等電位線に垂直であることを使って描くことができます。
途中に金属片を置いたらどうなるでしょうか。アルミ缶を輪切りにしたものを置いたら,その内部はどうなるでしょうか。
≪実験2≫ 交流100Vを整流して電源とし,ファックス原紙に電流を流しておいて,発光ダイオードの両足を原紙の2ヵ所につけて点灯させてみましょう。
足の位置をいろいろに変えてみましょう。
ファックス原紙にはさみで,切り込みをいれてからやってみましょう。1)
両足の位置が同電位では発光ダイオードはつきません。電位差が大きいと明るくつきます。発光ダイオードには点灯する向きがあるので,電位の向きもわかります。
注1)ファックス原紙の抵抗は大きいので,100Vの電源をつかっても危険はありません。
これまでに,力場とポテンシャルの場を学習してきましたが,場の考えをもっと拡大してみましょう。
一般に,物質または空間の一つの領域において,ある状態量が各点の関数として与えられるとき,その領域をその状態量の場といいます。
原因になる量が点状(0次元)に存在していて,それが3次元空間に場をつくる場合には,場の強さは距離の2乗に反比例します。点光源による明るさもこのケースです。点状の音源からの音の強さも同じです。ただし,そのような量が連続性をもっていて,吸収されることがないとして,話をすすめています。
≪問6≫ 原因量が0次元,1次元,2次元で,これが1次元,2次元,3次元空間に場をつくる場合について,それが距離とどのような関係にあるかを論じなさい。
上のそれぞれのケースを,0-1,0-2,0-3,1-2,1-3,2-3と書くことにします。
0-1 距離に関係なし
回路における電流の強さ
ホースの中の水道水の速さ (表p42)
レーザー光の強さ(吸収がないものとする,などの理想化をしたことにして)0-2 距離に反比例
涌き出し口から出て面を流れる水の速さ(土手の決壊による増水)
“古池や蛙とびこむ水の波”の振幅
去るものは日々に疎し?
0-3 距離の2乗に反比例
点電荷による電場
重力場(太陽系の規模でみた場合)
点光源による明るさ
点音源による音の強さ(鐘は上野か浅草か)
点香源による香の強さ
海の底に塩のわきたす壷があって,という昔話の海の食塩濃度湯
煙突からでる二酸化硫黄の大気汚染濃場
(図p42)
1-2 距離に無関係
裂け目噴火の熔岩流の速さ
一列に並んで草刈をするときの速さ(草刈速度湯)
海嶺からわきたすプレートの速度
1-3 距離に反比例
直線電流がつくる磁束場の強さ(アンペールの法則)
(無限に)長い蛍光灯による明るさ
自動車がつながっている高速道路からの騒音
電線か鳴る音(もがりぶえ)の強さ
2-3 距離に無関係
面全体を発光体としたときの明るさ(壁面を光源にした照明)
平行平板コンデンサーがつくる電場
以上は生徒があげた例もいっしょにしてまとめたものです。
≪問7≫ このような例を探してみましょう。
[まとめ]
1 力の場とエネルギーの揚が考えられます。
2 エネルギーについての電気(電荷)の「高さ」を電位といいます。
3 場の考えを拡張できます。