57 電荷が力を受ける空間がある―――電場
[授業のねらい]
質量が力を受ける重力揚があるように,電荷が力を受ける電気力の揚(電場)があることを発見します。
[授業の展開]
≪実験1≫ 平行平板コンデンサーで一様な電場をつくり,そこに置かれた電荷がどのような力を受けるかを測定しなさい。
<装置の説明>
コンデンサーは 210×280×1(単位mm)の鉄板を2枚,間隔を20mmにして平行で鉛直に,アクリルの板に立ててあります。コンデンサーの電極の正負が変えられるように,切り替えスイッチがついています。コンデンサーの「底」のアクリルの板には5mm間隔で平行線が引いてあって,振り子の変位が読めるようにしてあります。電気振り子は直径5mm程度の発泡スチロ−ルの球を薄いアルミ箔で包んで,これがコンデンサー空間のほぼ中央にくるように,0.2号のナイロンテグスで吊ってあります。 (図p32)
<操作>
手順は(1),(2),…の番号で,注意事項は1),2),の番号で述べておきます。
(1)500Vで充電した4μFのオイルコンデンサーを,切り替えスイッチを介して平行平板コンデンサーにつなぎます。
スイッチを入れると,平行平板コンデンサーが充電されて,この空間に一様な電場ができます。スイッチを反対に入れると,平行平板コンデンサーは逆に充電されて,電場の向きが反対になります。
1)平行平板コンデンサーの容量は数十ピコファラド(pF)程度なので,4μFのコンデンサーでは,何度,充放電を繰り返しても,電場の強さが変わることはありません。
2)4μFを500Vで充電した静電エネルギーは,手で触れると相当の電撃を受けるので注意します。
この実験に先立って,充電したコンデンサーを金属の面で放電して見せます。生徒にもやらせます。
平行平板コンデンサーを充電したあとはスイッチを切っておきます。スイ
ッチを切ったあとでは,平行平板コンデンサーに手を触れても大丈夫です。
容量が小さいからです。
(2)電気振り子には,電気盆で電荷を与えておきます。電荷は正負のいずれでもかまいません。電気振り子に電荷を与えてから,平行平板コンデンサーを充電すると,振り子は電場から力を受けて,中心から一方へ変位します。スイッチを反対に入れると,振り子は反対に変位します。この変位の大きさを測定します。数回測定して平均値をだします。
3)コンデンサーの面積が十分に大きく,それにくらべて間隔が小さいときには,コンデンサーの空間は一様電場とみなせるという仮定で実験します。ただし,極板の近くでは,電場がいくらか強いことが,振り子の運動からわかります。
(3)変位の測定が終わったら,平行平板コンデンサーを斜めにして,電気振り子を電場の外へだして,クーロンメーターに触れさせて,電気量を測定します。
<目的>
電荷qが電場の強さEから受ける力fの大きさについて
Eが一定のとき f ∝ q (実験1)
qが一定のとき f ∝ E (実験2 )
を確かめます。
このことから,f ∝ qE f = kqE (kは比例定数) の k=1 になるように単位系がつくられていることがわかります。
<理論>
電気振り子の糸の長さを lm,振り子の質量を mkg,
その電気量を qC,電場の強さを EN/C,変位の平均値を xm,コンデンサーの電圧をVV,平行平板コンデンサーの極板の間隔を dmとすると, 振り子にはたらく力学的な力 f は,
f=mg(x/l) ただし,g m/s^2 は重力加速度
電気的な力Fは, F=Eg
電気力のする仕事は, Fd=Eqd=Vq で,これは重力場の mgh に相当しています。
F=V/d・q
(図p34)
この2力 F と f がつりあいの状態にあるので,
mg・x/l=V/d・q
これを確かめます。まず,実験データをあげておきます。
m=0.012×10^(−3)(kg)
化学天秤で測定して,装置に振り子の質量を記録しておきます。
l=55×10^(−2)(m) x=2.5×10^(−2)(m) V=500(V)
真空管用電源装置を使用して,コンデンサーを電源に接続したままの状態で測定します。
d=10×10^(−2)(m) q=1.0(nC)
実験のまえにヘアドライヤーで振り子の糸の一部をブロ−しておきます。
この実験のポイントはここです。よほど条件のよい日でないと,電荷がリーク
するようです。n(ナノ)は10^(−9)の意味です。
mgx/l=0.012×10^(−3)×9.8×2.5/55=5.3(μN)
V/d・q=500/0.1×1.0×10^(−9)=5.0(μN)
力学的な力を生徒がどう書いたかを調べてみたところ,あるクラス46人中
mg・tanθ(30人) mg・sinθ(7人) mg・θ(2人)
なかなか,mgθとは書けないようです。生徒の感想として,θの単位が「rad」であることをみんなが忘れていたようです,とありました。 (図p35)
<単位の関係>
平行平板コンデンサーのつくる電場 E から電荷 q が受ける力
F は,
F=Eq
この力に抗して,この電荷 q をコンデンサーの負極から正極まで d の距離を運ぶ仕事 W は,
W=Fd=(qE)d=q(Ed)=qV
この式からわかるように,Eの単位は
E=F/q で,単位は N/C あるいは E=V/d で,単位は V/m
後のほうの単位 V/m は,電場 E が電位 V の勾配を表すことを意味しています。
電場はベクトルで,電荷が力を受ける方向が電場の方向で,正電荷が力を受ける向きが電場の向きです。
電場 E の高さ, V= Ed に 電圧 という概念があるように、
重力場の高さ,(U=)gh に「重圧」とでもいう概念があってもよさそうです。
[まとめ]
1 電荷が力を受ける電場という空間があります。
2 電場の強さは電位の勾配で表わされます。
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