理科実験についてのお問い合わせ等はメール・掲示板にてお願いいたします。 | |
---|---|
掲示板 | 石井信也 |
56. 走った電気と止まった電気―――電流と電気量
[授業のねらい]
これまでは止まっている電気,つまり静電気について学んできましたが,ここでは走っている電気,つまり電流について学びます。
力学にも静力学と動力学があったのと同じように,電磁気学の全体は,止まっている電荷と動いている電荷,止まっている場と動いている場,から構成されているといってもよさそうです。
[授業の展開]
≪実験1≫ 定電流装置*1でつぎの実験を行いましょう。
2000μFのコンデンサーを使います。
(図p28)
(1) このコンデンサーを,電流値を1mAに指定した充電回路で10 s間充電します。
これを (a) 電流値を1mAに指定した放電回路で放電します。
(b) 電流値を2mAに指定した放電回路で放電します。
(c) 電流値を3mAに指定した放電回路で放電します。
それぞれ,何秒で放電するでしょうか。
(2) 電流値を1mAに指定した充電回路で15 s間充電します。
これで,上の(a)(b)(c)を行います。それぞれ何秒で放電するでしょうか。
(3) 電流計を2mAに指定した充電回路で10 s間充電します。
これで,上の(a)(b)(c)を行います。それぞれ何秒で放電するでしょうか。
≪問1≫ この実験でどのようなことがわかりましたか。
I(1) mAの電流でt(1) s間充電されたコンデンサーが,I(2) mAの電流でt(2) s間で放電されたとすると I(1)×t(1)=I(2)×t(2) の関係がいえそうです。
これは,コンデンサーに電気がたまったり,出ていったりしているとみて,電流×時間 で電気の量を表すことにしてもよさそうに思えます。
そこで, I(A)×t(s)=It(As) を電気量と定めて,これをQ(C)とすることにします。 I×t=Q I=Q÷t Cはクーロム
P 電気って,なんて義理がたいんでしょう。なんどやっても,きちんと, 同じ結果がでてきます。
P コンデンサーには電気がたまっているという実感がもてました。
P 定電流装置の中身が知りたい。
≪実験2≫ このコンデンサーがいっぱいになる(充電が完了する)と,いくらの電気量がたまりますか。
1mAでは何秒で充電完了しますか。 2mA,3mA,4mA,5mAではどうですか。
(定電流装置の電源は006 P を使用していて,電圧は約9Vです)
≪実験3≫ 外部の電源(蓄電池や乾電池など)を使ってコンデンサーを充電完了してから,定電流装置で放電して,コンデンサーにたまった電気量を求めなさい。
電源電圧の大きさVと,このコンデンサーにたまった電気量Qとの関係を調べましょう。コンデンサーの耐圧に注意しなさい。
電流計を電気量計として使って,コンデンサーにたまった電気量を測定することができます。
充電したコンデンサーを,電流計を通して無負荷(抵抗なし)で放電させると,針の振れの最大値は,放電させた電気量に比例します。ただし,針は振れたあと,すぐにもどってしまうので,素早く計器の目盛りを読み取ることが肝要です。このことを利用すれば,電流計を電気量計として使うことができるということです。
説明 メーターの針には電流Iに比例した電磁力fがはたらきます。
I=cf(cは比例定数) 電流の値は変化するので積分で表すと
Q=∫Idt=c∫f dt=c(mv−0) 初速度 v の針の運動は,その運動エネルギー
1/2・mv^2 の全部が,ばねの位置エネルギー1/2・kx^2 に変わって終了します。
1/2mv^2=1/2kx^2 v∝x Q∝x
針の運動は回転運動ですが,ここで証明したように,併進運動として考えても,本質的には変わりはありません。
電流計をこのように使うことを,弾劾検流計として使う,といいます。クーロンメーター(電気量計)としての目盛りがほしいときには,電気量がわかっている電荷を流して,自分で目盛りに数値をふります。 (図p30 1,2)
≪実験4≫ 定電流装置で,コンデンサーに一定の電荷をためてから,テスターのmAレンジで放電させ,mA〜mCの換算率をだしておきましょう。
これはそのメーター固有のものであることを忘れないようにします。
実測の例をあげておきます。 (表p31)
≪実験5≫ 電気振り子を電気盆で充電して,その電気量を電気量計(クーロンメーター)*2で測定しなさい。
電気振り子は,直径4〜5mmの発泡スチロール球を薄い金属箔で包んで(洗剤を1滴らした墨汁をぬってもよい),0.2号のナイロン糸(水糸でもよい)で吊したものを使います。これに電荷を与えたときに反発する様子で,どのくらいの電荷がたまっているかがわかるようになりたいものです。そうなるまで練習しましょう。
電気振り子を,プラスにでもマイナスにでも,自由に帯電させられるように練習します。
注*1,*2県立千葉高校で使用している定電流装置とクーロンメーターの配線図を示しておきます。
[まとめ]
1 定電流装置で 電流×時間=電気量 と決めてよいことが発見できます。
2 電流計を弾劾検流計として使うことができます。
3 電気振り子の跳ね方で,そこにたまったおよその電気量がわかるように なります。