54. 大量に電気を起こすには―――起電機
[授業のねらい]
静電誘導を利用して大量の電気を起こし,電場の雰囲気を感じとります。
[授業の展開]
≪実験1≫ ファン・デ・グラフ起電機を動かして,つぎの実験をしてみましょう。
(1) 本体と放電球に電気がたまってくると,電気力で両方の球が引きあうのがわかります。放電すると,もとの位置にもどります。
本体の金属球が正負のいずれに帯電するかは機種によって異なるので,あらかじめ調べておきます。
(2) ネオン球を近づけて放電させます。
ネオン球を手で持って放電させるとショックを受けることがあります。
ショックを受けないようこするにはどうしたらよいでしょう。
全員がトライするように云って,教師は準備室へもどります。教師がいないと全員の生徒がやるようになります。番長さんは何時やると思いますか。
(3) 蛍光灯をつけてみましょう。
本体と放電球のあいだを蛍光灯で橋渡しをするようにして放電させます。
本体からすこし離しておくと,電気がたまってから放電するので,明るくつきます。
蛍光灯のガラスの部分を手で持って放電させます。持つ位置を変えてみましょう。蛍光灯はきれているものでもよいのです。
(4) 本体の金属球に長さが30cmくらいの木綿糸を20〜30本,ほぼ等間隔にセロテープで貼ってから発電します。
糸が本体に垂直に立って,電気力線の様子が見えます。
糸の先端に指を近づけてみましょう。
実験のあとでは,セロテープをきれいにはがしておかないと,発電性能が悪くなります。炊事に使う金属のボールで適当な大きさのものかあったら,これを本体にかぶせて,この実験の専用にするとよいでしょう。
(5) 近くて線香をたいて,煙がどうなるか観察します。
小さいシャボン玉を吹きつけてみましょう。シャボン玉は静電誘導で起電機にひきつけられて,そこから電気をもらうと,こんとは同種の電気の斥力で跳ねとばされるのですが,あとから行ったシャボン玉は途中でもどってきてしまいます。どうなっていると思いますか?
≪問1≫ 起電機の本体に,電気をためておくことができない理由を考えなさい。
空気中の小さなゴミなどが,線香の煙やシャボン玉のようなはたらきをして,電気を奪い去っていることに気がついたでしょうか。
電気集塵器のはたらきを考えてみましょう。その装置を工夫してつくり,実験してみましょう。
(6)ハミルトン車を回してみましょう。
1cm平方の銅板の四方に,長さ6cmの銅線を4本ハンダづけして,その先端を1cmずつ同じ向きに直角に曲げておきます。銅板の真ん中に円い穴をあけて,アルミの鉛筆キャップを差します。粘土に立てた銅の針金に,この鉛筆キャップを差し込めば,ハミルトン車のできあがりです。これを本体の中央に置いて発電すれば,ハミルトン車は回りだします。
大型のハミルトン車を紹介しておきます。100円の洋傘が捨てられていることがあります。
生地を取り去り,親骨(放射状の骨)の露先の一つ一つに,細い針金の放電電極をつけます。手元(持つ所)をプラスティックの紐で棒に吊って,石突きをファン・デ・グラフの電極の上に据える(触れなくても良い)と傘全体が回りだします。
(7)起電機の本体をライデン瓶につないで,電気をためてみましょう。電気がたまったら,放電叉で放電してみましょう。
多勢の人が手をつないで回路(輪)をつくり,ライデン瓶にたまった電気を放電させて、ショックを楽しむ<百人おどし>という遊びがあります。はじめ,放電叉で軽く放電しておいて,2度目の放電をこの方法でおこないます。はじめは、弱くしておいて,徐々に強くしていくと…
≪実験2≫ ファン・デ・グラフ起電機の実験の統きです。床に敷いた発泡スチロール板に乗った実験者がおこないます。
(1)実験者が片手を本体に乗せたままの状態で,起電機を作動させます。
実験者の頭の毛が立ちはじめます。耳の産毛(?)の先で,先端放電が起きてパチパチいいます。
実験者の手の指に,他の生徒が指を近づけると,指のあいだで放電が起きて,映画<未知との遭遇>になります。少々の電撃を受けますが…。
実験を終りにするときには,実験者は本体から手を離し,ポケットに入れておいたネオン球をつまんで,その先端を近くのもの(机など)に触れて放電した後で,発泡スチロ−ルの板から「地球に」下ります。
(2)実験者は本体に触れている手でシャボン玉の容器を持ちます。この状態で発電し,もう一方の手で持ったストローでシャボン玉を飛ばします。
起電機と同種の電荷をもったので,シャボン玉は勢いよく飛び離れていきます。近くに金属の棒を立てておくと,その先端にとびつきます。天井近くへくると,加速して天井へつきます。静電誘導か誘電分極を起こして引っぱられたのです。
放電球を本体につないでおいたらどうなるでしょう。
床(地球)にいる人が手に持ったネオン球で,飛んでいるンャボソ玉に触れたらどうなるでしょう。(この実験は暗いところでやりたいものです。蛍狩りのような気分になります)
≪実験3≫ ファン・デ・グラフ起電機の放電が,なじみの電流と同じであるかどうかを確かめてみましょう。
(1)本体と放電球を検流計で結び,放電のときに検流計の針がどうなるか調べます。電流の向きも確かめます。
(2)ネオン球が光るのを,もういちど確認しておきます。
(3)沃化カリウムでんぷん紙にフェノールフタレンをつけて,本体の上に貼りつけます。放電球に一端を触れた放電叉の他端を,この試験紙のところで体に近づけて放電させます。
沃化カリウムは電気分解し,沃素はでんぷんと反応して紫に発色し,カリウムが水と反応してできたアルカリはフェノールフタレンをピンクに発色させます。
電流には三つの作用があることを中学で学びました。磁気作用,熱作用,化学作用です。(1),(2),(3)の実験で,静電気の放電にもこの三つの作用があることがわかって,放電は電流と同じもの(こと)だということがわかりました。
≪実験4≫ 逆に,普通の電源装置でも検電器の箔が開くのを見ておきましょう。
検電器を机に広げたアルミホイルの上に置き,真空管電源装置のプラスを検電器の電極に,マイナスをアルミホイルにつないで500Vの電圧をかけてみましょう。
耐圧の大きい4μFのコンテンサーを500Vで充電してから,これで検電器の箔を聞かせてみましょう。
(図p22)
≪問2≫ ファン・デ・グラフ起電機の本体の半球を開けて,中がどうなっているかを調べてみましょう。
「本物」のファン・デ・グラフ起電機は加速器として使います。
千葉市には放射線医学研究所があって,実験用にこれを使っています。起電機は横たえて,タンクの中に収めてあります。6気圧の6弗化硫黄(SF6)でタンクを充填して,高圧による放電を防いでいます。出力は2.7 MeV,
アイソトープをつくったりしているそうです。医療用の加速器は現在75MeVのサイクロトロンを使っています。M(メガ)は10^6です。
≪問3≫ ウィムズハースト起電機を作動させて,その機構を考えなさい。
≪実験5≫ 玉振り発電機を紹介します。図を見て作ってみましょう。(図p23)
[まとめ]
1 ファン・デ・グラフ起電機の周囲には電気的な雰囲気があります。
2 起電機で起きた電気が流れると電流になります。
3 ファン・デ・グラフ起電機は加速器として使われます。
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掲示板 | 石井信也 |
(ア)2本のアクリルパイプを、(イ)の金属の棒でつなぎ、(ウ)金属球を入れて金属(ボルトの頭)でふたをする。
(エ)外から銅の輪を巻いて図のように結線する。(オ)電極を引き出して発泡スチロールで保持し、横に振る。