48. なにが音叉(オンサ)に見えますか―――共鳴
[授業のねらい]
周期の等しい二つの「振り子」はエネルギーのやり取りをします。これを共振といいます。音に関する共振を,とくに共鳴といいます。
楽器の多くは共鳴を利用しています。楽器は共鳴器を備えていて,音を増幅させたり,複雑な振動体から特定の振動数を選択したりして,楽器としての機能を全うします。共鳴がどのように起きるかをみてみましょう。
[授業の展開]
≪実験1≫ スプーンとフォークを両手に持って,スプーンでフォークをたたいてみましょう。フォークを軽く持ってスプーンでたたいてみましょう。
ナイフをスプーンやフォークでたたいてみましょう。持続音が出るように工夫してみましょう。
手に持ったスプーン,フォーク,ナイフは振動が手に吸収されてしまって音が持続しません。細い糸で吊ってたたくと,持続音が得られます。振動体は振動が持続するようにつくられると音源として使えます。しかし持続時間が長すぎて具合が悪い場合もあり,短くても用が足りるものもあります。
≪問1≫ そのような例をいいなさい。そのようなときにはどうすれはよいでしょうか。
≪実験2≫ 音叉は金属の棒をU字形に曲げて中央に支持棒をつけたものです。鉄の丸棒で音叉をつくってみましょう。支持棒の所は金属棒をハンダづけします。たたき棒は太めの針金に消しゴムを刺したものがよいでしょう。
≪実験3≫ 作った音叉をたたいて,支持棒を黒板,机,コップなどに押しつけてみましょう。上手に音を出してみましょう。
≪実験4≫ 他の材料で音叉をつくってみましょう。どんなものがよいでしょうか。
ガラス棒はどうでしょうか。竹はどうでしょうか。陶器でつくりたいと思いませんか。自転車のスポーク,ゼムピンはどうでしょう。
音叉は棒状ですが,これが面状になるとどうなるでしょう。仏壇のおりん,ワイングラス,木魚,釣鐘などは,いうなれば,一次元の<棒音叉>ではなくて,二次元の<面音叉>です。
≪実験5≫ ワイングラスを鳴らしてみましょう。ワイングラスをその縁に沿って,石鹸でよく洗った濡れた指でこすると連続音が出ます。ワイングラスに水を入れて鳴らしてみましょう。茶碗も鳴らしてみましょう。
薄手のものがいいでしょう。これを利用した<グラスハープ>とう楽器もあり、これのための作曲もあります。
音叉はもともとは鉄棒です。これをつるしてたたくと,波がその両端で反射して定常波をつくります。両端が自由端なので,定常波は両端が腹になり,振動数のいちはん小さい基本音では, 棒の長さが1波長相当になります。
半波長でもよさそうですが,実測してみましょう。≪問4≫も参考にして。
棒の一端が固定されている棒状の物体(片持ち梁)でも,定常波ができて音が持続します。
≪実験6≫ 万力でいろいろな棒の一端を押さえて振動させてみましょう。
≪問2≫ このような楽器を知っていますか。
オルゴール,オルガン,ムックリ(アイヌの民族楽器)などがあります。
音速が決まっているので,楽器の波長がわかれは振動数もわかります。
≪実験7≫ 塩ビのホースをいろいろな長さに切って,その一端から強く吹いてみましょう。慣れるとらくに音が出るようになります。
長いものでも短いものでも,音が出せるようになるまで練習します。
≪問3≫ ホースの長さと音の高さとの関係はどうでしょうか。
≪実験8≫ トランペットのマウスピースをホースにつけて吹いてみましょう。
≪実験9≫ 太さの違う塩ビのパイプはジョイントでつなげます。塩ビのパイプを長くつないで,アルペンホルンのようにして吹いてみましょう。
ホースやパイプの中の空気の柱(以後これを空気柱と呼びます)は,つるされた鉄棒のように,両端が自由端の発音体になっていて,両端が腹になるような定常波ができています。長い空気柱では,吹き方によっていろいろな定常波ができます。 (図p225)
≪問3≫ 図は基本振動の定常波を横波で描いたものてす。波の数がさらに多い定常波の図を描きなさい。
ホースやパイプを吹くときには,発音体である唇は複雑に振動して,いろいろな振動数の音を出しています。そのうち,気柱に共鳴した音だけが残ってあとは消えてしまいます。いろいろな位相の波はお互いに打ち消しあって熱振動になってしまうのてす。往復の波が重なって定常波ができるときには,振幅が2倍になるのを学びました。音のエネルギーは振幅の2乗に比例したことを思い出しましょう。
太いパイプを吹いていて,上手に共鳴音が出せたときには,唇の周辺か震えているのがわかり,やがてそのあたりがかゆくなってきて,気柱が逆に唇を振動させていることがわかります。共鳴は共振なのです。
ほとんどの楽器に共鳴箱がついています。名器といわれる楽器は,共鳴箱が優れたはたらきをする楽器である,といってもよさそうです。
長さ1m弱で,蛇腹になったフレキシブルな塩ビのパイプが,観光地のお土産として売られています。一端を持って振り回すと軽い音が出ます。(図p226-1)
回転を速くすると ド,ソ,ド,ソと音が高くなります。先端から空気が放り出されることでパイプの中に空気の流れができ,蛇腹が摩擦されて発音体となり,パイプの気柱に共鳴した音が生き残るというものです。
≪問4≫ このパイプを鳴らして,オルガンで音の高さを比較してみると,はじめの音は f1=349 Hz 2 番目の音は c2=523 3番目の音は f2=698 でした。このパイプの気柱の定常波の状態を書きなさい。 (図p226-2)
この図ては,波長は3:2になっていて,振動数は 349:523=2:3 となります。 ちなみに,このパイプの長さは0.86m,口径は0.030m,この日の気温は15℃,計算によると,はじめの音の振動数は約380 Hz で,上の実験の音より半音から1音高くなるはずてす。口で吹いてみると,やや不安定ですが,そのような音が出ました。この違いが何によるのかははっきりしません。
長さの違う中空の竹を何本も並べた<パンの笛>という楽器があります。
長さの違う気柱で音階を出そうというのです。これを1本のパイプで賄おうというときには,パイプに適当に穴を開けて,その穴を指て塞いだり開いたりして「気柱の長さ」を調節することで,ほぼ目的を達することができます。
≪実験10≫ 一端に節をもった竹の,節に近いところに穴を開けて横笛をつくります。この竹の開口端を斜めに削って歌口をつくり,縦笛とします。
1本の竹(一管の笛)で,横笛と縦笛の両方に使えます。この笛を,まず横笛として吹き,次に縦笛として吹いてみましょう。音色が違ったら,マイクロフォンで音を拾って,オッシロスコープで波形を見てみましょう。
次に,開口端を閉じて吹いてみましょう。縦笛として使うときには,「開口端」は横笛の歌口です。音の高さはどうなったでしょう。
両端が開いている気柱を開管,一方が閉じている気柱を閉管といいます。
歌口は開口端です。いまの実験では,前半は開管として,後半は閉管として使いました。閉じているところは固定端となって,定常波の節ができます。
≪実験11≫ 紐の一端を固定し,他端を引っ張ったまま振動を与え,定常波をつくります。この場合には,振動を与えた点は振動をしていても,その振動が小さいので,近似的に節とみなせます。つまり,固定端とみなせるということてす。電磁音叉がつくる紐の定常波などはこのようになっています。
≪実験12≫ 電磁音叉などを使って弦の定常波をつくります。 弦の定常波の一つの膨らみの長さを半波と呼ぶことにしましょう。
弦の長さl(エル),張力Tを調整して,1半波,2半波,3半波,4半波の定常波をつくりなさい。
≪問5≫ 1半波の定常波における波長λと弦の長さ l の関係をいいなさい。
弦を伝わる振動の速さvを,弦の線密度σと張力Tで表しなさい。
この波の振動数n,波長λ,振動の速さvの関係をいいなさい。
λ/2=l v=√T/σ=nλ これらの関係から n=1/2l・√T/σ
≪問6≫ 2半波の定常波の振動数をいいなさい。m半波の定常波の振動数をいいなさい。
≪実験13≫ 電磁音叉の方向を90度回転すると,定常波の半波数が2倍か半分になることを確認しなさい。
(図p227)
ストロボを調節して糸の動きを止めてから,ゆっくり動かすと,糸が縄跳びの縄のように回転しているのがわかります。
≪問7≫ 図を見て,その理由を考えなさい。
[まとめ]
1 固定端・固定端,固定端・自由端,自由端・自由端の場合,それぞれ 棒,気柱,弦の中の定常波の状態を図に描くことができます。
2 音階でオクターブの振動数は1:2です。
3 電磁音叉の方向が変わると弦の振動数が変わります。
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