理科実験を楽しむ会

  43.  止まっている波−−−定常波
 
 [授業のねらい]
 進む波と,反射して戻る波は,重ね合わされて「止まった波」ができます。
これを定常波といいます。定常波を作図や数式を使って考えてみます。
 
 [授業の展開]
 実験1ウェーブマシンで波の反射を見せます。はじめ,半波長の山の波を送ります。次に,半波長の谷の波を送ります。最後に1波長の波を送ります。
 問1実験装置の反対側を固定しないで自由にしておくと(自由端),波はどのように反射しますか。 固定して動かないようにしておくと(固定端),波はどのように反射しますか。
P
 自由端では山は山で,谷は谷で帰ってくる。
P
 固定端では山は谷で,谷は山で帰ってくる。
P
 自由端で反射するときには,1波長の波では,山が先頭で行った波は山が先頭で帰ってきて,谷が先頭で行った波は谷が先頭で帰ってきて,固定端では,それが逆になっている。
P
 自由端反射というのは,もっと先に振動子があって,波がそのまま進んでいくのと同じです。もっと先まである振動子の列が手前の方に折れ曲がっていて,波も曲がって帰ってくると考えればいい。先にあると考えた振動子を,もとの振動子が兼ねていると思えはいい。  (  図p202
P
 ヘー! じゃあ,固定端は?                   
T
 固定端の振動子は動けないのだから,結果から考えると,行った波と反射した波が重なって,その和が0になるように反射が起きると考えればいい。
だから,反射点の先にも振動子があると仮定して,半波長先で波が反射してくるとすると,そうなる。
 問2波の反射を振動子でカ学的に考察しなさい。各振動子はお互いに弾性的な力でつながっていると考えます。
T
 右に進行する波の A, , , , , F振動子の位置が,ある瞬間,このようになっていたとします。C振動子はどのような力を受けますか。   (p203)
P
 B振動子から下向きに,D振動子から上向きの力を受けます。
T
 横向きの力はどうかな?
P
 振動子は横には動かないのだから,横向きの力はプラス・マイナス0
T
 では,そのような力を受けて,それぞれの振動子はどうなるかな。
P
 C振動子は下向きに加速する,つまり上向きに減速します。
P
 A振動子にはたらく力は0,D振動子は両側の振動子から下向きに引かれるので,下向きに大きな力がはたらきます。
P
 E振動子はD振動子とF振動子から力をもらうけど,DEの長さがEFの長さより短いので,EはD振動子よりF振動子から大きな力で引かれて,加速度がマイナスになります。
T
 ところで,F振動子が自由端で先に振動子がなかったらどうだろうか。
P
 F振動子はE振動子から上に引き上げられるか,下から引っ張るはずのG振動子がないので,上向きの加速度が大きく,たぶん2倍に引き上げられる。
T
 F振動子がもとの位置にあって固定端の振動子だったとしたら?
P
 E振動子はF振動子から大きな力を受けて,最高点へ行かないうちに下に向かう。
 問3波の反射を幾何学的に表現するとどういうことになりますか。
 自由端反射の場合には,その先の進行波を仮定し,それをy軸(反射面)で折り返せはよい。つまり,進行波と反射波はy軸に線対称です。
 固定端反射の場合には,その先の進行波を仮定し,それをx軸で折り返してからy軸て折り返せばよい。または,πだけワープしてy軸で折り返せばよい。つまり,進行政と反射波は反射点に点対称です。
 実験2電磁音叉で定常波を見せます。
 実験を見せるときには自由にしゃべらせます。ああしよう,こうしようという提案が出てくるようにしたいものです。
P
 どうなっているの?
T
 行く波と帰る波が重なっているんだよ。
P
 ピッタリ止まっている(節の所を触っている)。
P
 ここ(腹のところ)に指をつっこんでもいい?(笑い)
T
 どうぞ。(生徒がやってもうまくいかない)
T
 では,どうなっているのかストロボで見てみます。
 実験3暗くしてストロボで照射してみせます。
Ps
 オー,おもしれェ。 
P
 気持ちワリー。
T
(ストロボ時間を調節して)最も振れている所。いつも変位が0の所。
P
 糸は伸びたり縮んだりしているんだ。
T
 引っ張っているおもりの方で調節しているのかな。
P
 下がっている方の糸も定常波になっている。(おもりて張力を与えている部分)
T
(ストロボをつけたまま電灯をつける)
P
 濃いのと薄いのが見える。 
P
 こういうことになっているのか!
 実験4旧式の記録タイマー,バイブレイター,ベルなどを利用して,糸に定常波をつくって観察しなさい。                      (図p204
 行く波と帰る波が重なって定常波になるのを,二つの波を重ね合わせる作図で考えます。
 問4破線の波は右へ進む波で,点線の波は左へ進むとします。それぞれの図で,ニつの波を重ね合わせなさい。気がついたことをいいなさい。 
P
 振動子というのは,二つの動きを同時にやるのか。
P
 違う命令を一緒に聞いちゃうんだ。二重人格的に。    
P
 Dの振動子では,点線の波の高さと破線の波の低さがいつも同じになるので,プラス・マイナス0になっている。だから,節になる。
P
 B振動子も同じだ。 
P
 その中間のC振動子のところは腹になる。
P
 どれも破線の波と点線の波はCの所て交わっている、重なっている。
T
 合成波の変位は,二つの波が交差している所で最大なんです。
P
 (5)では,C振動子の変位は0だけど,それでも「最大」なんだ。
 問5右に進む波と左に進む波を数式て重ね合わせなさい。
 yy
1y2Asin2π(t/Tx/λ)Asin2π(t/Tx/λ)
       =A2sin2πt/Tcos2πx/λ=[2Acos2πx/λ]・sin2πt/T
 問6この式の意味をいいなさい。
 これは生徒にはちょっと無理のようです。教師が説明します。
 [  ]の中の 2Acos2πx/λ は波形で,それぞれの場所における振幅を表しています。それが位置の関数になっていて,場所によって振幅が違うことになります。最大の振幅は2Aで,進行波の振幅の2倍になっています。
 sin2πt/T は単振動の式ですから,各点の振動子は一斉に単振動をしています。つまり,バタバタです。進行していく波ではありません。しかし,半波長ずつ,位相が180度ずれています。それは,振幅の符号が半波長ごとに反対で,全部の振動子が同じ位相で単振動していると見なすこともできます。
 7≫ x0λ/82λ/83λ/84λ/85λ/86λ/87λ/8  λ
           
  t0  T/8 2T/8  3T/8 4T/8  5T/8 6T/8  7T/8  T 
として,そのグラフを書きなさい。                       (図p205
 
  [まとめ]
1
 行く波と帰る波は重ね合わされて定常波をつくります。
2
 自由端では入射波はそのままの形で反射し,固定端では進行波は半波長ずれた形で反射します。
3
 定常波では,振動子は同位相で単振動しています。

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石井信也
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