高圧をつくる その1 E-91 No166
09年9月3日(木)
0 誘導による
1 <多数巻き>のコイルに、3Vの直流電源(単3乾電池2本直列)とネオン球を並列につなぎ、電源を断続すると、ネオン球が点滅します。自己誘導によるものです。
V ∝ n・di/dt
2.
電源の回路の電流を断続するのが要訣です。
方法としては、
(1)回路の一部に金属鑢を入れて、導線をこの上を滑らせる、
(2)スイッチの代わりにマブチモーター(FA-130)を入れる(回る時に回路が断続する、クリップモーターが解りやすい)、
(3)リードスイッチを入れて、磁石を近づけたり離したりする(磁石ごまを回すとよい)、
などいろいろ工夫して実行してみます。
電源を交流の3Vにすると、このままでネオン球が点灯します。
3 ネオン球は100V近くの電圧でないと点灯しないので、この操作では3Vが100Vを誘起したことになります。
この<多数巻き>がどの程度の巻き数かをチェックしておきましょう。
4 以上の操作は自己誘導によるものですが、これからは相互誘導によるものです。
トランスの高圧側にネオン球をつなぎ、低圧側に直流を断続するか、低電圧の交流(脈流)を流すかするとネオン球が点滅します。
5
更に高圧をチェックするには電気振子を使います。振子が振れるようであれば、1000V程度は出ているのでしょう。
具体的な例をあげておきます。 下記7の使い捨てカメラのトランスの低圧側に、マブチモーターを直列にした3Vの乾電池をつないでおきます。
小形のキャパシタ(0.2nF程度)の脚を長くして電気振子の放電電極とします。キャパシターの片方には高圧のダイオード(IN4007)を入れて、トランスの高圧側につなぎました。これで、電源をONにすると、電気振子は盛に振れます。
6 4cm×3cmの銅板を、間隔1cm
で、方形の皿(絶縁体で、安定する)の上に平行に立てました。これに小容量のキャパシタをつなぎ、高圧ダイオードをつけました。低圧側の電流を断続させると、この間で電気振子が振れます。
7
使い捨てカメラのIC部分は、乾電池1個を、交流の数百ボルトにコンバートし、これを整流してキャパシターに蓄電しています。
これに使われているトランスは、低圧側のオーム抵抗が1Ω弱、高圧側のそれが180Ωほどです。電流の断続はトランジスターのスイッチング作用によります。
8 CW装置は、この蓄電したキャパシターを直列につないで、高圧をつくっています。だから、キャパシターのn個の装置では、出力電圧はおよそn倍ということになります。
手軽には4段の装置を使っていますが、電源電圧が1.5Vだと、出力電圧はおよそ2000Vで、電源電圧を3Vにすると3000V
にもなります。
9 以上をまとめると、高電圧を得るには次の素子を必要とします。
(1)
自己誘導か相互誘導の装置 多数巻きコイル、チョークコイルとかトランスとか、上記のカメラのトランスがよい。
(2)
スイッチング作用の装置 上記の2の(1)(2)(3)、手動で断続させてもよい、発振器はどうか。
(3)
CW装置 実験項目の<静電気7・8>、<使い捨てカメラを電源に 2>
蛇足
1
電気振子が振れるケースでは、装置は小さくても高圧が出ているので、回路に手を触れないようにしましょう。軽い電気ショックを受けます。危険性はありません。
2
自己誘導の場合、コイルの巻き数が多いと、オーム抵抗も大きいので、電流が流れにくくなります。その点、トランスでは低圧側には電流が流し易く、高圧側は電圧が出やすいので効率的です。
3
昔の蛍光灯には重いチョークコイルが使われていました。このコイルは自己誘導の実験には便利です。イグニション・コイルも有効です。
4
CW装置の出力電圧については、<仲間のページ8>に、福田利明さんの測定記録があります。
5 写真の説明。缶の右手にあるのがイグニションコイル、左手が古い蛍光灯のチョークコイル、右手前が平行平板キャパシタ、電池は3V、断続はリードスイッチ(赤いみのむしクリップにつながっている)による、トランスは使い捨てカメラのもの(数字は抵抗値)、電気振子はプラ球に墨汁を塗って水糸で吊ったもの、整流用のダイオードは見えていない(平行平板キャパシタには見えている)、缶に立っている(白いストロー)のは放電叉、缶の向こうには種々の装置が…。