乗り物の中の実験(その5) M-23 No54 07年7月12日(木)
(0) 電車の中で 慣性系
(1) 中学へは電車で通学していましたが、 車中で気になることがあって、 実験をしました。 その記憶を辿ると…
(2) 実験と「結論」
(実験1) 電車が走っている時、 手に持っていた小石を落したら足元に落ちた。
(疑問) 私の体(足)は電車から力を貰っているので、 私は電車と一緒に走って行くのだが、 落ちて行く小石は、どこからも力を貰っていないのに、 私のところから離れて行かないのはどうしてか。
(実験2) 真上に放り上げた小石も手元に戻ってきた。
(推論) 手から離れた小石は、動いている空気から押されたのだろう。
(実験3) 電車の後ろに<落し窓>があるので、 ここから顔を出して唾を落としてみた。 唾は電車の外壁に沿って落ちて行ったが、
車体から下の位置まで来ると、 急に後ろへ離れて行った。 つまり、 電車から取り残された。
(結論) 電車の中及び周辺の空気は、 電車と一緒に運動するので、 小石や唾は空気から力を貰って、 電車と一緒に運動する。 電車から離れている空気は、電車と一緒に運動していないので、
唾は、こちらの空気から力を受けて電車から離れて行った。
(3) これが、 中学1年の頃の私の結論でした。 当時の私の「理解」はおよそ、次のようなものだったと思われます。
ものは、
触れている他のものから力を貰って、 動いて行く。
野球のボールは斜め前に投げられたから前方に走って行くが、車中での小石は真上に投げられたのに…。
落ちるものに力がはたらいているという感覚はなかった。
その後、 慣性を習ったはずだが、
その意味が理解できたとは思われない。
[蛇足]
[1] この種の運動については、子どもがどのように考えているかを把握してから、その線に沿った実験をするべきでしょう。
[2] 電車の実験を補足する意味で、 "当時の私に、 現在の私が教える"とするなら、 先ず、 次の実験を見せるでしょう。 真っすぐ歩いてきて、
真上に投げ上げた(斜め前方へ投げ上げたのではない)お手玉*は、 手で受け取れます。 空気は私と一緒に動いていないので、 お手玉は空気から力を受けたのではありません。
[3] 現在, この電車の中の実験をしたとしましょう。
1mの高さまで放り上げた小石が、
手に戻るまでの時間は 2・√(2s/g)=2√2/10=0.9[s]
電車の速度を 72[km/h]=20[m/s] とすると、 移動した小石の水平距離は 20×0.9=18[m]
JRでも私鉄でも、 現在走っている電車の車体の長さは18〜20mなので、 小石は殆ど1車両の距離を<つっぱしる>のです。 水平に投げるんだって大変なのに!
外房線長さは20m | 投げたお手玉 |
理科実験についてのお問い合わせ等はメールにてお願いいたします。 | |
---|---|
shinya@aqua.dti2.ne.jp. | 石井信也 |