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Inspiration クラシック界のチェロ無伴奏曲は有名な作品がありますが、マンドロンチェロのソロ曲なんて今まで想像した事がありませんでした。しかし、この楽器にもプロの演奏家がいらっしゃる事を聞き、これからのこの楽器の可能性が広がっていくような気がしています。
そして驚くことに、Ovation社製のマンドロンチェロ(エレアコ)まで出現しているということを聞きました。

「この楽器でどんな音楽をするのだろう?」

あるOvationのギタリストは、楽器から出る音を電気的な処理をして、今までにないギターソロ曲を発表しています。それじゃあマンドロンチェロもこの世界に挑戦してみたらと思い、この曲を書いた次第です。
でもこの曲の演奏にあたり、決してOvationの楽器でならなければいけないという訳ではありません。従来のマンドロンチェロでもポピュラーな世界への第一歩として演奏して頂けたら、と思っています。
いつかマンドロンチェロを抱えて全国を旅するアーティストが登場すれば、マンドリンの世界も変わってくるでしょうね。
幻想即興曲 -加賀城-

 この曲は大きく前・中・後の3部分に分けることができる。前半は16ビートの単音カッティングをベースにしてそこに音を足していくパターン。中盤はよりマンドリン独奏的な技法であるデュオ奏法を用いた、ミドルテンポで“歌う”パターン。そして後半は前半を再現しながらも、それをより激しく発展させていくパターンである。

ex.1-1)ミュートを含む16ビート・カッティング
 まずは基本テクニック・エクササイズの頁にも出てきた単音カッティングから。確認のつもりで一度弾いてみよう。
 右手は16分音符の速さでダウンアップを繰り返し、鳴らさないところではピックを空振りする(空ピック)。この場合は下記のようになる。

   ↑(↓)↑↓  (↑)↓↑(↓)  (↑)↓(↑)↓  ↑(↓)↑(↓)
                                       ( )は空振りするところ。


ex.1-2)16ビート・単音カッティング、発展型。
 さて、次はカッティングの合間を縫って低音の飾りを入れていこう。下の例では、1拍目の16分休符を利用して3・4弦開放を鳴らし、それをハンマリングでつなげていく。これにより聴いている人にあたかも2人で弾いているような錯覚を与えられる。2・3弦のピッキング・ハンマリングを1弦のカッティングよりも大きく弾くとよりクールで効果的。


ex.2)16ビート・リフ+3度の和音
 次のようなパターンでは和音を鳴らすのにトレモロ奏法は使用しない。低音のリフを刻みながら1・3拍目のみ1・2弦を一緒に鳴らしていく。このとき和音を押さえている指は次の音まで離さないように注意。コツは…基本的にインテンポで流れていくところなので、和音を鳴らす1・3拍目のオモテが間延びしすぎないようにすることか。


ex.3)デュオ奏法
 基本テクニック・エクササイズでも登場したこの譜例。エクササイズとしてできるだけセーハの少ないところをピックアップしてみた。…が、実際はかなりセーハが多く、しかもそれがけっこう長い。右手を鍛えるべし。
 この譜例では、符尾が上向きの音符をトレモロ奏法で弾き、下向きの音符をピッキングではさんでいく。


ex.4)レフトハンド・ピチカート
 これも特殊テクニック・エクササイズに登場した譜例。重音をトレモロで弾きながら空いている左手中指でC線を弾弦していく。このとき重音の押弦が緩まないように注意を払う。


ex.5)開放弦を上手く使ったフレージング
 1小節目、音符を見ただけでは何のこっちゃよくわからないが、タブ譜を見れば納得。3弦のハイポジションを押さえ、1・2弦を開放で鳴らすことでこのようなフレージングが可能となる。ポイントは3弦を押弦する指が1・2弦に触れないようにすること。押弦する指をしっかり立てることが必要になる。


ex.6)レフトハンド・タッピング
 1弦開放を普通にピッキングしながら2・3弦を左手で叩いて音を出していくパターン。とりあえずタッピングをより大きな音で鳴らすことが必要となる。弦のテンションの強いマンドロンチェロでは少々の訓練が必要。
 弦高を低くすれば左手にかかる負担を少なくすることができる。


ex.7)ハーモニクス
  ●A.H.---アーティフィシャル・ハーモニクス
  ●N.H.---ナチュラル・ハーモニクス
 左手は1拍目をタッピングしたまま押弦を続けるので、3拍目はナチュラル・ハーモニクスであるが右手でハーモニクス・ポイントに触れる。





さあ、どうでしょう。サンプル音源を聴いて譜例を見て、この曲を弾きたくなってきましたか?