チューブのブツリ 


Reedのなかでも、比較的一定な要素として
あんまり重要視されることのない(ような気がする(^o^;)…)チューブ。
でもOboeの管体より種類も多くて、選択の幅も広いわけで
いったいどれを選んだらいちばんよいと言えるのでしょう…?

追加のお話はこちら

専門店に行くとたくさんのブランドのチューブがずらずらずらっと箱詰めにして並べられてますよね。そういう光景を見ると、普段からよく使うブランドが決まっていてもついつい違うものを買ってみたくなったりするもの…そんなことってないですか?
「もしかしてこっちのチューブのほうが今使ってるのより劇的によい結果になったりしないかしら?」とか、「だいたいなんで今の使ってるチューブ使い始めたんだっけ?べつに根拠とかなかったじゃん…」とか、いろんな考えがむくむくと湧いてきたりして…(^o^;)
LOREEとかRigoutatとかみたいに楽器メーカーが同じブランドのチューブを出している場合には楽器とチューブのブランドを揃えておけば無難(わざわざ自分トコの楽器に合わないものを作ったりしないだろう、という発想…)な気もするけれど、じゃあたとえばMarigaux吹きさんはどうしたらいいんだろう???って話になりますよね。

チューブって、どのブランドも長さだけはハッキリ明記して作ってくれていますが、たとえば同じ47mmのチューブでも、違うブランド同士を比べてみたら微妙に径が違ったりします。こういう違いって、OUTPUTとしてのOboeの音にどういう影響を与えるのでしょう?それがわかっていれば少しは自分の好みのチューブが選べたりするのでは…?

Reedそのものでもそうだけど、「○○さんみたいに吹けるようになりたいから…」って○○さんみたいなReedを使うのがそのひとにとってベストな結果をもたらすとは全然限らないし、もちろんチューブだってただ真似するだけでイイとは思えない。使っている楽器のメーカーによっても、楽器個体の個性によっても、合うチューブは変わってくるはず。でも、むかし懐かしい物理の授業を思い出せば『音=空気の振動、波』とか教わったような気がするし、チューブの微妙な形状の違いが空気の波にも違いをもたらすであろうことはまず間違いなさそう…。

…というわけで、それならチューブのどこがどうだったらOboeの音はどう変わるのか、ということをいろんなひとの経験をもとにちょっとまとめて書いてみたいと思います。今使っているチューブと他のチューブを比べるときの参考になれば…♪


★チューブの上端(=ケーン側)

チューブの上端は小さい楕円〜正円型。ケーンをを直接固定する部分だし、Reed先端の開きにも大きく影響しそうな部分ですよね。
この部分の半径(大きさ)が大きいと、オクターブの間隔をしっかりKeepしやすい=高音域がぶらさがりにくい傾向があります。
チューブ上端のカタチに関しては、楕円の弱い=正円に近いと高音域が高めに出せるようです。
高音域がぶらさがって困っているひとは、チューブ上端の開きが大きめで丸に近いカタチのものを試してみたらいいかもしれません。


★チューブの下端(底=楽器側)

チューブ下端はReedと楽器が接して、Reedの振動がOboeに直接伝わっていく部分。じつは楽器上端のいちばん狭い部分よりもチューブ下端のいちばん大きい部分のほうがほんのちょっとだけ大きかったりすることが多い、って知ってました?(断面図で書いたらこんな感じ…よけいわからなかったですか?すみません(^-^;)…。)


このチューブ下端の開きが小さいと、低音域が出しやすい反面、高音はコントロールしにくくなります。完成Reedの内部に筒型の詰め物をしてチューブの内径をむりやり狭くする(^0^;)という実験をしてみると、倍音が減って音程が下がることがカクニンできます。

チューブ上端のところでも音程について触れましたが、円錐のカタチの相対的な問題ということ…でも、基本的には内径が広めのほうが高音域の音程は取りやすいということでしょうか。チューブは楽器の管の延長と考えられるので、内径の太い楽器には内径の太いチューブが合うはずですし…。
音程にも大きく影響するチューブ…気楽にコロコロ変えるのはキケンな気もしてきますが、じっくりいろいろ試してから実用にもちこむのなら、試し甲斐がありそうですね。


★内径…その他

Reedの調整でいちばん大切なのは、たぶん先端の開き。Reedの開きには、ケーンの丸材のときの直径とかガウジングのやりかたとかがもちろん大きく影響するけれど、チューブによっても微調整することができる…?
私は試したことはないのですが、完成したReedのチューブ(糸がグルグルのところ)の上から3mmくらいのところを横からペンチで軽くつぶすと、Reedの開きを狭めることができるのだそうです。そんなところを横からつぶしたらむしろ大きく開いてしまいそうですけど、…意外ですね。
ただし、このペンチでチューブをつぶす方法は、Reedの開きを調節する最後の最後の手段と考えたほうがよさそうです。せっかくいつも同じチューブを使っているのに、Reedづくりの条件が一定に保てなくなってしまうから…つぶしたチューブは元に戻せなくなるという覚悟も必要かも。

普段からチューブを再利用しているOboe吹きさんは多いと思いますが、イイなぁと思っていたReedから再利用したチューブを使うとやっぱりイイReedができることが多い、という経験はありませんか?前のReedをほどいちゃう前にチューブに目印をつけておいて、そのチューブには意識的によさそうなケーンをくくってやると、さらに打率UP♪かもしれませんね。


★素材

最近のチューブはブラスだけじゃなく、銀色のもの(ニッケルシルバー)だとか銀製だとか、金メッキしたものだとか、素材もイロイロです。チューブの金属が変わると本当にOboeの音色も変わるのか…?
考えてみれば、音として振動するのはあくまで空気の柱であって、チューブの素材なんて関係ない、という気もしてきます。それならOboeの管体だってグラナディラだろうがプラスチック管だろうが、管のカタチさえ一緒なら同じ響きがするはず。
音のモトともいえる振動はエネルギー…あぁ、いかにもブツリなコトバですね(^o^;)…ということは、使う素材によってエネルギー吸収の程度が違えば、最終的に出てくる音だって違うはず。どのくらい振動を吸収する金属がOboeの音色としてよい結果を出してくれるのかは、ブラスのチューブしか使ったことのない私にはわかりません。ごめんなさいっ。でも、金メッキチューブのほうがブラスよりも音色が暗くて音がなめらかだという評判は、実際に使ったひとからお聞きしたことがあります。試してみたいなぁ…。


…さて、ここまでいろいろ書いてきましたが、大切なことは最終的に管から出てくる音がよい音であること。自分にとってピッタリのものが見つかればそれでおっけーなわけで、チューブの材質とかブランドとか、ほかのひとがどうしていようとなんと言われようと、本当はどーでもいいことなのかもしれません。
それでもいろいろ試してみたい、というチャレンジャーさんの場合(私もそうですが…)、一度にたくさんの要素をいじらないで、ひとつずつ何かを変えてみたほうがよさそうです。チューブ、ケーン、削り方…Reedにはいろいろな要素がありすぎるし、それぞれに相関があるので、いろんなことを変えるとさらにこんがらがる可能性が大、ですから(^o^;)…。



☆★☆追加のお話。☆★☆

DoubleReedHolicsのBBSで、らむさんから“すぐれものチューブ”についていろいろと教えていただきました。とっても参考になるお話だったので、らむさんの許可をいただいて(ありがとうございます♪)私に理解できる範囲で転記させていただきました。

まず、切り札的チューブとして、
  • JOKER→Glotin
  • スペードのエース→Klopfer
のふたつが挙げられます。

Glotinのチューブは直径が大きいので、豊かな音を比較的楽に出すことができますが、その反面CやGの音程がクレッシェンドすると上がりやすく、ディミヌエンドすると下がりやすいという欠点もあります。Glotinは初心者からプロ奏者まで幅広く使われていて、初心者は音の出しやすさから吹きやすいと感じ、逆にプロの方は強弱による音程の変化などを気にするため難しいチューブだと感じるそうです。それにしても幅広い支持層…やっぱり切り札的なんですね。

Klopferはジャーマン系のチューブで、数あるチューブのなかで最も細い部類に入ります(他のジャーマン系の細いチューブといえば、フランク・村田・JDRなどがあるようです)。チューブが細いと息の圧力を上げるのが易しいので、音色を作りやすかったりコントロールしやすかったり、という利点があります。一方で息の出口が細いため息の通りは悪く、がんばって吹き込まないといけなかったりもします…。

JOKER,スペードのエースに続くその他のエース陣(^o^;)はというと、
  • ハートのエース→Loree
  • ダイヤのエース→Rigoutat
  • クラブのエース→Rigotti
の名前が挙がります。

Loreeは王道を行くチューブ。その時代のOboeにマッチするように少しずつ設計が変わる、その時代の基準と呼べるチューブなのだそうです。どのチューブを選んだらいいのか迷ってしまった時にはLoreeを使うといい、ということかも…ちなみにLoreeはフレンチ系では最も細いチューブです。
RigoutatはLoreeよりは少し大きいので、少し楽に吹くことができるはず。
Rigottiはチューブの上端が細く下端は広いので、音色は作りやすいけれど音が安定しにくいのでダイナミクスに合わせた唇の微調節が必要だったりもします。

一般的に、太いチューブはReedがよく振動して音の通りがよく、その反面出口が広いのでダイナミクスの変化で音程が変化しやすい、と覚えておくとチューブを選びやすくなるかもしれません。音程をコントロールできる範囲で、太めのチューブを使うのがBESTな選択、というところでしょうか…。

みなさんもまたオススメのチューブ情報などありましたら、教えてください。