モリモリあつしという人はバカ野郎である。 どれくらいバカ野郎かというと、本人に何の許諾も無く人の本名を引用するくらいである。 「そんなことしてたっけ?」と思う人は、スリムあつしにおける彼のコメントをもう一度読んで欲しい。 堂々と、しかもそれが誰を示しているのか分かる人には分かるように書いてあるのだ。 一声くらいかければよかったものを、おそらくは知人だし有名っぽいし悪いこと書いてないからまあOKだろうと、ついつい書いてしまったのだろう。 それでも当事者にとっては青天の霹靂と言う他無いのである。要するに、「勝手に本名を晒しやがって!」ということである。 デリカシーというものが欠けていた、そんなイメージさえ抱いた。 このような所についつい私は、あつしのバカ野郎と罵りたくなるのである。 (えっ、こんなことを書く時点で墓穴を掘っているって?......そうだな。) それはさておき。 今回umaさんがモリモリあつしのSOUND VOLTEX FLOOR採用を祝うEPを作成するとのことで、 スリムあつしにおいて「Morimori Megamix VOL.1」及び「VOL.2」という形でモリモリあつしの楽曲をリミックスしていた実績のある私にもトラック製作の依頼が来た。 正直なところ、私はモリモリあつしのFLOOR採用を素直に喜べなかった。 俺はまだ採用されていないのに抜け駆けしやがってこのヤロウだとか、ファンコット以外のジャンルを作って採用されやがってとか、 他のコラボ作品は受かっているのに俺とあつしで作ったkors kリミックスコンテストは落ちててオレはとても心苦しい、とか、他にも色々な感情が渦巻いていた。 そのような感情が複雑に混ざり合う中、私はトラック製作に着手した。 モリモリあつし本人のサンプリングボイスを刻んだり、意図的にモリモリあつしとの楽曲と関係ないフレーズを挿入したりもした(umaさんの楽曲のフレーズも引用している)。 それどころか、明らかに他の人の楽曲を思い切りサンプリングしている(原曲の作者であるyasetaさんとShironさん、そしてVOL.1よりずっとフレーズを引用し続けているTeam Grimoireさんに、この場を借りて感謝と陳謝を)。 それも「スリムあつし2」に対するモリモリあつしの言質の部分をそっくり使った。 さらに今作は彼のスリムあつしにおける楽曲「タイムマシン」のRemixという体で作られたが、タイムマシンの要素はせいぜい30秒程度である。 モリモリあつし自身における「タイムマシン」の思い入れは相当大きいらしいことが、曲コメントを読んでも感じられる。 そんな「タイムマシン」の扱いを、このトラックでは敢えてさほど目立たないようにした。 そして私は、これを聞いたあつしの顔を見てみたいぜうへへ、というような邪な考えを抱いていた。 しかし。 トラックを作り上げ、プレビュー再生を繰り返すたび、私はもの足りなさを感じた。 これではただ、あつしをコケにしただけではないかと。 いくらバカ野郎でも、みんなから散々いじられていても、モリモリあつしという男はそれだけでは無いのではないか。 せっかくのリスペクト企画なのに、トラックから感謝の気持ちが全然感じられないじゃないか、と。 これではいつもおちょくるようなリプライに対して「は?」だの「死ね」だの「無視しよ?」だの言ってスルーするモリモリあつしでも、流石に悲しんでしまうのではないだろうか…? 私は感情の趣くがままに作ってしまったトラックを聞きながら、反省の念に駆られていた。 思えば、私とモリモリあつしとの出会いは運命的なものだった。 今年の1月頃に、彼がファンコットにアプローチをしていたからという理由だけでフォローしたのが始まりだった。 そこから「スリムあつし」というコンピレーション企画に参加することを通じて、音楽の経験知を増やすことが出来た。 同じコンピレーションに参加していた数多くの才能あるDTMerに出会えた。 今やDTMerの知り合いがそこそこに増えたが、これもモリモリあつしに出会えたことが大きい。 彼のつながりから、合作をする機会にも恵まれた。 私のDTM人生に於いて、モリモリあつしとの出会いは一つのターニングポイントだったのだ。 そしてなにより、私は彼の作った楽曲に、魅了されていたのである。 VOL.1にて盛り込んだ「Le Fruit Défendu」(今作でも引用している)。 彼の作ったファンコット風トラックである「PEEK-A-BOO」及び「粉骨砕身カジノゥ」。 バロック風でありチャイコフスキー風である上物に対してガバキックとスーパーソーと絶叫で彩った重厚なトラック「C18H27NO3」…これは違った。 数多くの東方projectのアレンジ楽曲、特にbeatmaniaIIDXの楽曲のパロディとしても完成度の高い「突撃!狂気のいもうとさま!」。 そして「Le Fruit Défendu」の続編的立ち位置であり、彼自身が現時点での最高傑作と述べた、SOUND VOLTEX FLOOR採用作品「Appliqué」。 |