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マンドリンとマンドリンオーケストラ

マンドリンの構造
 オーケストラの中でヴァイオリンにあたる役割を受け持つ。調弦は高音からEADG(ミ,ラ,レ,ソ)。あらゆる音域でさわやかな響きを持っているが、特に高音域は美しい。

胴はイチジクを二つに割ったような形である。表板には円形、または楕円の響口が一つあいている。明確な横板はない。薄くて狭い木片を幾つも横に張り合わせた半球形の裏板がそのまま表板に連なる。駒は非常に低くて、各弦は同じ高さに張られる。指板も同様に平らであり、金属製のフレットが17〜27までついている。弦の張力が強い為、糸巻きは機械ねじになっている。弦は全部で8本張られるが、2対の同音の弦を張るため、4弦の働きをする。第1,2弦は鉄線で感傷的で、1は鋭く、2は温和は音色である。第3,4弦は鋼芯の銅巻き弦で、3は甘く、4は深い音色を有する。

マンドリンの奏法
ピッキング奏法
 ピックでもって弦をはじいて音を出す。ピッキングにはピックを上から打ち下ろすダウンピッキングと下から打ち上げるアップピッキングがある。ちなみにダウンにしろアップにしろ同音の2本の弦(復弦)を同時に弾くのが原則である。これを平衡奏法という。かつてダウンピッキングは復弦で、アップピッキングは単弦で弾くという風潮が一部にみられたようであるが、これを鈴木静一氏は正しい奏法ではないと、次のように批判している。「ダウンピッキングは復弦で弾きながら、アップでは単弦をひっかけるのは完全な奏法ではない。ダウンもアップも常に均等でなければならない。(中略)多くの指導者の中にはアップのすべてを単弦だけ奏させる者がある。そしてそれをもって〈強声部と弱声部の表現〉と教えていると云う。(中略)これはおそらく撥(ママ)弦楽器〈ヴァイオリン系統の〉のボウイングから考えた誤った定義であると思うが、マンドリンの平衡奏法は、強声部、弱声部以前の問題なのである。」(遠畑剛企画構成 『鈴木静一そのマンドリン楽と生涯』 1994年より抜粋)

トレモロ奏法
 トレモロ奏法とはピックによって弦を連続して弾きつづける奏法である。マンドリンといえばトレモロ奏法というイメージがある。トレモロの速さにより演奏表現に変化をつけることができる。

 マンドリンの歴史
 マンドリンは1620年、イタリア・ヴェネチアのパロッキが当時すでにあったマンドウラという楽器を小型にし、マンドリーノと名づけたのがルーツとされる。
 マンドリンは小型の楽器としてヨーロッパの人に親しまれていたが、木製糸巻きにガット弦という構造のため、大きな音が出ず、フレットも現在のものより少なかったため、演奏能力に乏しく、それほどメジャーな楽器にはなり得なかった。

 1850年頃、廃れつつあったマンドリンをナポリの楽器製作工のパスクヮーレ・ヴィナッチアが大幅に改良した。フレット数を増やし、金属機械式糸巻きと金属複弦4コースを採用することにより演奏能力が向上し、またたく間にヨーロッパ各地にマンドリンは広まった。

 日本のマンドリンは1901年、比留間賢八が伝えたのが最初であると言われている。日本に入ってきたマンドリンはギターと共に演歌の伴奏楽器として扱われ、哀愁を帯びたトレモロの音色は日本人の心を深くとらえることになった。

マンドリンオーケストラ
 ヨーロッパでマンドリンの愛好者が増加するにつれて、大人数で合奏する、バイオリンを主体とするオーケストラを模したマンドリンオーケストラが誕生した。しかし、
通常のオーケストラに比べ、音量が劣るなどの欠点を克服できず、ヨーロッパでは、ドイツで生まれた一部のツップオーケストラを除き、現在では衰退してしまっている。
 一方、日本ではトレモロを主体としたマンドリンオーケストラが昭和時代初期よりアマチュア団体を中心に盛んになり、戦後は学生を中心とした団体により支えられ、音楽界のなかで独特の地位を築いている。
 日本人によるマンドリンオーケストラの作品はプロ・アマ問わず盛んで、現在も多くの優れた作品が世に送り出され続けている。

マンドリンオーケストラで使われる楽器
*マンドリン
 言うまでも無くメインとなる楽器である。通常のオーケストラのバイオリンにあたり、第1マンドリンと第2マンドリンに分かれる。

*マンドラテノール(マンドラ)
 通常のオーケストラのビオラとチェロの中間の役割を果たす。音はマンドリンよりちょうど1オクターブ低い。

*マンドロンチェロ(セロ)
 通常のオーケストラでチェロの役割を果たす。大きなボディから出される音には重厚感があり、低音部を支える楽器として無くてはならないものである。主に低音のメロディや伴奏を担当するが、ときとして打楽器的に使用されることもある。

*マンドローネ
 通常のオーケストラのコントラバスの役割を果たすが、マンドリンオーケストラではコントラバスをそのまま使うため、必ずしも使われるというものではない。マンドリンのお化けのような、非常に大型の楽器である。

*クラシックギター
 アンサンブルでもマンドリンの伴奏としてギターが使われることは一般的である。
そのため、マンドリンオーケストラにおいてもギターは伴奏として扱われることが多い。しかし、最近の作品ではギターメロディを効果的に使うものも少なくない。

*コントラバス(ベース)
 マンドリンオーケストラの最低音を担当する。マンドリンオーケストラにおいて、ギター・マンドリン類が撥弦楽器であるのに対し、コントラバスのみがアルコ(弓)を使用する擦弦楽器である。1920年代頃、コントラバスの代用品としてギターを大型にしたようなギタローネという楽器があったが、音量が小さいためいつしか消えていった。