西川研究会2002年度前期発表/6月20日(木)2限/菊地 太郎
T.卒業研究の概要および卒業論文の構成・執筆計画
U.H・ヴィラ=ロボスのギター作品における様式変遷(その2)
〜《5つの前奏曲 5 Prelúdios》をふまえて
昨年度の発表では、ブラジル人作曲家のエイトール・ヴィラ=ロボス Heitor Villa-Lobos(1887-1959)のギター独奏作品中、ブラジル民俗音楽との結びつきが強い初期の作品《ブラジル民謡組曲Suíte Popular Brasileira1》(1908-1912)と《ショーロス第1番Choros no.1》(1920)、そしてその後のパリ時代に書かれた《12の練習曲12 Estudos》(1929)の様式分析を、作曲経緯など作曲家の周辺状況の確認、他の楽曲との比較を通して行ってきた。その過程でも示してきたが、ヴィラ=ロボスの全ギター独奏作品における様式の変遷と総合的な特徴の考察、そこから導かれる他作品の作曲書法との共通点と相違点、そしてギター史における意義を提示するということが、これらの研究の最終目標と考えている。
そこで今回は、徐々にせまりつつある今年度の卒論執筆のための準備として、まずは現段階で考えている論文構成の概要(したがって以下の構成はあくまで予定です)の紹介と説明をすることにする。そして残りの時間を使って、前回までを引き継ぐかたちで、卒論内容の中でこれまでに未発表の部分から、《5つの前奏曲5 Prelúdios》(1940)についての発表をしていきたい。
T.卒業研究の概要、卒業論文の構成
テーマ:H・ヴィラ=ロボスのギター独奏作品における様式変遷(仮)
序論
1. 作曲家の概要
1-1.H・ヴィラ=ロボスの略歴、基本データ
1-2.19世紀後半〜20世紀前半のブラジル社会状況
1-3.作曲家生涯の一般的な時代区分2とその間の主な音楽活動
1-3-1.幼少年期(1887-1903)
1-3-2.ボヘミアン期(1903-1923)
1-3-3.パリ時代(1923-1930)
1-3-4.ブラジル音楽教育主事時代(1930-1945)
1-3-5.老年期(1945-1959)
1-4.作曲家とギター
1-4-1.演奏経歴(特に上記の少年期やボヘミアン期のショーロ3での活動)
1-4-2.ショラン4や他のギタリスト(とりわけA・セゴヴィア5)との交友関係
1-5.主要作品リスト
2.ヴィラ=ロボスのギター作品(基本データ、作曲経緯など)
2-1.《ブラジル民謡組曲Suíte Popular Brasileira》(1908-1912)
2-2.《ショーロス第1番Choros no.1》(1920)
2-3.《12の練習曲12 Estudos》(1929)
2-4.《5つの前奏曲5 Prelúdios》(1940)
2-5.その他の作品(習作や合奏曲、協奏曲など)
2-6.ヴィラ=ロボスが触れた他作曲家のギター作品(ソル、カルカッシ6等)
3. 各楽曲の具体的な様式分析・考察
3-1.《ブラジル民謡組曲》(全5曲)
3-1-1.形式、調性、和声、リズム、音色など音楽的な特徴(このあたりの分類?)
3-1-2.運指、使用弦、押弦などギターの演奏技術における特徴
3-2.《ショーロス第1番》
3-2-1〜2.3-1と同様
3-2-3.当時のブラジル大衆音楽との比較
3-3.《12の練習曲》
3-3-1〜2.3-1と同様
3-3-3.他作曲家の練習曲との比較
3-4.《5つの前奏曲》…上の各曲と同様
3-5.その他のギター作品(できれば)
3-6.まとめ
4. 結論
4-1.ギター作品の様式変遷とヴィラ=ロボスの作品全体における作曲語法
4-2.ギター史におけるヴィラ=ロボス作品の意義
U.H・ヴィラ=ロボスのギター作品における様式変遷(その2)
〜《5つの前奏曲 5 Prelúdios》をふまえて
序
ギターのための《5つの前奏曲》(1940)は、ヴィラ=ロボスのギター独奏曲の中では(現存しないものも含めて)最も後に書かれたもので、今日も《ショーロス第1番》と同様によく演奏され親しまれている作品である。一方で、前作《12の練習曲》(1929)と比べて、調性やリズム、和声といった諸要素が複雑でなく叙情的な旋律も現れることから、《練習曲》でみられたギター作品としての革新性はほとんど認められず、むしろ作曲家の古い時期の作品に近いという見解が強い。現在のヴィラ=ロボス研究においては「その一連の作品群は様式的な連続性を持たない。この作曲家の一貫した成長過程を見出すことは困難である」7といった「ヴィラ=ロボス…様式変遷の無秩序傾向」論が定説のようだが、ギター作品における以上のような一見した上での作曲様式の非連続性はしばしばその引き合いに出される。今回の発表では、ここまでみてきたギター作品に加えて《5つの前奏曲》の様式や演奏技術を考察するわけだが、その際にはこのようなヴィラ=ロボス作品に特有な「非連続的な様式変遷」という点についての検討もしたい。
1.《5つの前奏曲》作品概要
1−1.作品基本データ
自筆譜…あり(ヴィラ=ロボス記念館所蔵。その他多少のスケッチもある模様)
作曲年代…1940年(完成年代)
作曲場所…リオデジャネイロ
献呈…ミンジーニャ8
初演…アベル・カルレヴァーロ9、1942年12月11日、モンテヴィデオにて
1−2.各曲の調性とサブタイトル
@第1番 ホ短調「叙情的旋律、ブラジルのセルタネージョ10へのオマージュ」
A第2番 ホ長調「カパドシオとカポエイラ11の旋律、リオのごろつきへのオマージュ」
B第3番 イ短調「バッハへのオマージュ」
C第4番 ホ短調「ブラジルの先住民へのオマージュ」
D第5番 ニ長調「社会的生活へのオマージュ、特にコンサート会場や映画館の少年少女へ」
※ヴィラ=ロボスがギター作品にこのような表題を付けたのは初めてである。
2. 作曲家周辺状況の確認
2−1.パリ時代以降のヴィラ=ロボス
前回の発表でも取り上げた《12の練習曲》(1929)は、1923年〜30年のいわゆるパリ時代に書かれた作品である。この時期は、連作《ショーロスChoros》(1920-29)の作曲時期とも重なり、それ以前にはなかった斬新なリズムや調性、和声などの使用が多くの作品にみられ、この時にヴィラ=ロボスは独自のスタイルと名声を確立したことで知られる。
1930年、祖国に戻った後は、ブラジル音楽教育主事として政府の芸術・音楽総局にて音楽教育計画に参加する。リオデジャネイロを中心にコンサート活動を行うかたわらで、作曲活動も行うが作品数は前時期に比べて減少傾向にあり、また作品も合唱曲をはじめとした教育用の楽曲が中心となる。その後約15年ほどはこのような音楽教育中心の活動が続くことになるのだが、その中で完成したのが《5つの前奏曲》である。
2−2.作品成立過程について
この作品については、前作の《練習曲》のような明確な作曲経緯は不明である。その目的や経緯についてヴィラ=ロボス本人の証言は現存しない。しかし《練習曲》と同様にパリ時代からの親友であるセゴヴィアのために書かれたものである可能性は強い。なぜならセゴヴィアがM・ポンセ12に宛てた書簡(1940年10月22日付)には、当時モンテヴィデオ滞在中のセゴヴィアのもとを訪れたヴィラ=ロボスによって《6つの前奏曲》をプレゼントされたという記述がみられるからである13。しかし同時にこの時、セゴヴィアは《練習曲》とは違い、この《前奏曲》をあまり良くは受け止めなかったようで、そのことはやはり先のポンセへの書簡で触れられている。これは後に訂正されるが、この時のセゴヴィアの反応が契機となって《前奏曲》の献呈先がセゴヴィアではなくなったとする説もある。
また現在ヴィラ=ロボス記念館所蔵の《12の練習曲》の第11番の手稿譜には、《前奏曲》のいくつかの断片を示すスケッチが書かれているという報告がある14。したがって、《練習曲》の作曲時(特にその終盤)には少なくとも《前奏曲》に関するアイディアはあったといえるだろう。
2−3.失われた(?)「第6番」について
T・サントスによれば、晩年のヴィラ=ロボス本人の証言から、これらの《前奏曲》はもともと6曲あり、最後の作品(つまり第6番)のオリジナル・マニュスクリプトがなんらかのかたちで1940年の作品完成後に失われたという15。これに関しては作曲家本人の思い違いという説もあるが、ヴィラ=ロボス夫人の同様の証言や先のセゴヴィアの書簡などもあり、第6番が存在した可能性は高いといえるだろう。いずれにせよ他の多くの楽曲の場合と同様、この作品の自筆楽譜も作曲後まもなく作曲者の手を離れており、行方不明になったのは間違いないようだ。
<第6番自筆譜の行方に関する可能性>16
@ スペイン内戦で破壊されたセゴヴィア邸で消失
A 出版社オフィスにて編集者が紛失
B 盗難などその他
3. 楽曲の分析・考察
第1番〜第5番までを細かく紹介することはできないので、各曲にある程度共通する要素をピックアップしそれらを中心に考察する。
3−1.形式と調性
各曲の形式と対応する各部分の調性は以下のとおり
第1番 A-B-A e moll-E dur-e moll
第2番 A-B-A E dur-(gis moll)-E dur
第3番 A-B (a moll)-a moll
第4番 A-B-A’ e moll-(e moll)-e moll
第5番 A-B-C-A D dur-h moll-A dur-D dur
→第3番を除き、ほぼA-B-Aの3部形式である。各部分は明確に分類することができ、調性や他の諸要素で性格を異にする。3部形式をもつギター作品は他には少ないが、一方で《練習曲》の11番、12番も同様に3部形式であることは注目すべきだろう。
ヴィラ=ロボスギター独奏曲の形式による分類
|
ロンド形式(ABACA) |
3部形式(ABA) |
通作形式他 |
ブラジル民謡組曲(1908-12) |
1〜4, Choros1(1920) |
5 |
|
12の練習曲(1929) |
|
11,12 |
1〜10 |
5つの前奏曲(1940) |
|
1,2,4,5 |
3 |
3−2.開放高音弦の保続音、低音弦による旋律
ギターの高音弦・低音弦の使用法に関しては、既に《12の練習曲》の時点でヴィラ=ロボス特有の効果的な技法が発揮されていたが、《前奏曲》でも特徴あるものをあげておく。(譜例参照)
@開放高音弦の保続音 ・第1番A(1,2,3弦) cf.練習曲11番
・第2番B(1,2弦) 練習曲10、11番
・第4番B(1,2弦) 練習曲10番
A低音弦による旋律 ・第1番A 練習曲11番
・第2番A 練習曲11番
・第4番A
Bその他 ・第3番A →ルバート、変拍子 練習曲10,12番
・第4番B →ハーモニクスの多用 ×
3−3.同型移動運指
押さえる弦と指の組み合わせ、またおのおのの指の型を全く変えずに、ポジションを上下に移動することを同型移動という。《12の練習曲》にはこの書法で書かれた部分があったが(それ以前の作品ではほとんどみられない)、《5つの前奏曲》では、第5番を除く全ての曲で効果的に使われている。(譜例参照)
継続的な同型移動運指が認められる作品
|
ブラジル民謡組曲 |
なし |
12の練習曲 |
1,10,11,12 |
5つの前奏曲 |
1,2,3,4 |
|
3−4.和音
《ショーロス第1番》までと打って変わって《12の練習曲》では、後半の調性感の不明確な作品を中心に不協和音も多くみられたが、《5つの前奏曲》でその傾向はあまり受け継がれてないようである。それ以外の和音(7、9、11なども含め)は全作品に共通している。17
その中で、長6の和音で終止する(あるいはそれに準ずる)かたちが《前奏曲》では1、4,5番でみられる。この使用法は、他作品では《練習曲》の第1、5番でのみ認められる。したがって、ここまで特に前奏曲第5番だけは比較的古い時代の形式・音楽的特性を持つとされたが、この点に関してはむしろそれは否定される。(譜例参照)
3−5.その他
《5つの前奏曲》の中では一部にのみ認められる程度だが、それ以外の作品と通ずる要素がいくつかある。(まだ検討中)
・第1番→《モジーニャModinha》(1926)、《花を分けるDistribuiçao de Flores》(1937)
・第2番→《ブラジル風バッハBachianas Brasileiras》(1930-45)
・第3番→バロック的順次下降
・第4番→《ギター協奏曲Concerto para Violão e Orquestra》(1951)
・第5番→初期の習作、《ブラジル民謡組曲》 など
結び、そして今後の課題
ヴィラ=ロボス最後のギター独奏作品《5つの前奏曲》は、《12の練習曲》を含むパリ時代の作品と比べて、確かに調性感やリズム、旋律という面で比較的安定しており複雑さは少ない。またブラジルを連想させる表題の統一は、作曲家のやや民族・国家主義的な同時期の活動内容に合致して、この時代独自の新たな特徴がそこに表れているとも言える。息の長いモジーニャ18的旋律やバロックやブラジル風バッハに通ずる要素はその証拠になる。これらのことから、ギター作品においてもヴィラ=ロボスの作曲手法が前時期の様式を踏まえない非連続的なものであるという主張はある19。しかし一方で、楽曲の形式や、同型移動の運指や高低音弦の使用法などギターの演奏技術という面では、パリ時代の《練習曲》(10番以降、特に11番)とかなり近く、この点において両作品は強い関連性を持つといってもよい。これは、《練習曲》の手稿譜にみられる《前奏曲》の断片スケッチに関するT・サントスの調査によって裏付けられるだろう。他にも実質的にはセゴヴィアのために書かれたという点も《練習曲》との共通点である。以上のことから、《5つの前奏曲》は、ブラジル音楽教育主事時代の作曲手法、あるいはパリ時代以前のブラジル大衆音楽への回帰的な要素を含んではいるが、それと同時にパリ時代の《練習曲》において花開いた手法を存分に盛り込んだ作品であることも間違いない。したがってヴィラ=ロボスの作曲様式におけるある程度の連続性・一貫性をここに認めることができるのである。
今後は、今回ほとんど触れられなかった他作品との関連についてもう少し追究をしたい。具体的には、《ブラジル風バッハ》のような同時期の主要な作品と、他のギターを使った合奏曲・協奏曲などである。それから国内で手に入る文献で必要なものは大体集めたつもりだが、海外の論文やそれ以外に少しでも役に立ちそうなものを求めてもう少し動いてみたい。これらの作業を進めると同時に、卒論での執筆内容がほぼ決定しているような部分に関しては、草稿を書き始めることができれば理想的だろう。
<参考文献等>
Béhague,Gerard, Heitor Villa-Lobos:The Search for Brazil's Musical Soul, Austin, 1994
Wade,Graham & Garno,Gerard, A new look at Segovia, his life, his music(2nd ed.), 2000
Santos,Turibio, Heitor Villa-Lobos and the guitar, Rio de Janeiro,1975;trans. by Wade,Graham, 1985
Wright,Simon, Villa-Lobos, New York, 1992
Museu Villa-Lobos, Villa-Lobos:sua obra(3rd ed.), Rio de Janeiro, 1989
Carvalho,Herm nio Bello, O canto do paj : Villa-Lobos e a m sica popular brasileira, Rio de Janeiro, 1988
Silva,Francisco Pereira da, A vida dos grandes brasileiros Villa-Lobos, S o Paulo, 1974
Jaffee,Michael, Harmony in the solo guitar music of Heitor Villa-Lobos, Guitar Review no.29, 1966, June, pp18-22
Tarasti,Eero, Heitor Villa-Lobos : The Life and Works, 1887-1959, North Carolina, 1995
Garcia,Thomas G.C., The Brazilian Choro : Music, Politics and Perfomance, Michigan, 1997
Peppercorn,Lisa,M., Villa-Lobos, London, 1989
――――――Villa-Lobos:the Music:an Analysis of his Style, London, 1991
――――――Villa-Lobos:Collected Studies, Aldershot, 1992
――――――The world of Villa-Lobos in pictures and documents, Aldershot, 1996
Mariz,Vasco, HeitorVilla-Lobos:Life and Wok of Brazilian composer (2nd ed.), Washington D.C., 1970
村方千之「ヴィラ=ロボスを語る」『音楽の世界』第38巻10号(1999,11)pp4-9,第39巻1号(2000,1)
pp12-17,3号(2000,3)pp23-26,日本音楽舞踏会議
菅原潤編『現代ギター』1996年12月臨時増刊号(ヴィラ=ロボスとギター),現代ギター社,1996
中峰秀雄「20世紀最後の巨匠アベル・カルレバーロ」『現代ギター』第441号,現代ギター社,2001,10月
Turnbull,Harvey『ギター』浜田滋郎訳,音楽之友社,1985
1 ここでの作品の原題表記は、作品目録Museu Villa-lobos,Villa-Lobos:sua obra(3rd ed.)の表記に統一することする。よって各種印刷譜や一般に知られたタイトルとは異なることがある。
2 The New Grove Dictionary of Music and Musicians他、一般的な評伝でみられる区分をもとにした。
3 choro 19世紀半ばからブラジルの都市部で発生した大衆音楽およびその演奏グループ。はじめはリオデジャネイロのボヘミアンが中心となって、ポルカやショティッシュなどヨーロッパで流行した舞曲を、フルート、ギター、カヴァキーニョで演奏していたが、やがて楽器編成や扱う楽曲の種類も多様化していった。特に19世紀末から20世紀初頭にかけては、リオの新開地シダージノヴァでアフリカ系ブラジル人の舞踏「マシーシmaxixe」の諸要素を取り入れたショーロが確立する。ちなみにこのブラジル独自の音楽が、後に生まれるサンバやボサノヴァの源流となっている。
4 chorão ショーロの演奏家。
5 Andrés Segovia(1893-1987)スペインのギター奏者。高度な演奏技術を持つだけでなく、大量の編曲を行い20世紀においてギターの復興と飛躍的発展に最も貢献した人物。
6 Fernando Sor(1778-1839)スペインのギター奏者兼作曲家。Metteo Carcassi(1792-1853)イタリアのギター奏者兼作曲家。共に有益な練習曲を含む多くのギター曲を書いた。
7 現在最も権威のあるヴィラ=ロボス研究者L.M.Peppercornによる。Collected Studies, pp16-17。
8 Mindhina 当時ヴィラ=ロボスの妻だったアルミンダ・ヴィラ=ロボスAlminda Villa-Lobosの愛称。
9 Abel Carlevaro(1916-2001) ウルグアイのギタリスト、作曲家。若い頃からヴィラ=ロボスと知り合い《5つの前奏曲》の筆写譜も授かったという。またセゴヴィアとの親交も深かった。ちなみに生年月日や上記《前奏曲》の初演時期に関しては異説もあるが(Wade,Garno,p107など参照)、カルレヴァーロ本人のインタヴュー記事(中峰pp30-31)からも、この年代で正しいと思われる。
10 sertanejo 未開の奥地、僻地に住む人の意。特にブラジル北東部の半乾燥性過疎地帯を指す。
11 capadócioは詐欺師、ペテン師、ほら吹きといった意味。capoeiraはブラジル黒人奴隷の間に生まれた格闘技。音楽に合わせ、踊るように脚を使って闘う。
12 Manuel Ponce 1882-1948 メキシコの作曲家、ピアノ奏者。メキシコの民謡を多数収集し、母国の民俗音楽と西欧の芸術音楽の融合を図った。
13 Wade,Garno,p106。
14 Santos,p21などを参照。サントスはこのことから《12の練習曲》の第10番以降は、《前奏曲》になんらかの関連性があるという貴重な見解を示している。Santos,pp26-28。
15 Santos,p31。
16 Santos,p31やBéhague,p140を参照。
17 Jaffee,p18-22を参照。
18 modinha 18世紀にポルトガルで発達した芸術歌曲が、ブラジルに渡り大衆的な民謡となったもの。哀愁漂う感傷的な歌でギター伴奏によるものが主流だった。
19 『現代ギター』1996,p60