観て、知って、楽しんで、宝塚

―日本における西洋文化の受容と宝塚―

2000/10/5 2年 時田 純子


1.宝塚のレビュー(ショー)
2.レビュー(ショー)に使われる音楽
3.洋物と日本物
4.考察
5.宝塚の名作紹介

序.

すみれの花咲く頃 (純名理沙、「'92TMP音楽祭」より)

 宝塚は今年で創立86年目を迎える。 ミュージカル、音楽付きのお芝居、レビュー(ショー)などを上演する総勢約400名の劇団。 演目は多岐にわたる。 演じるのは未婚の女性であること、脚本や音楽なども専属のスタッフが手がけていること、スター制度、組制度、豪華な衣装、などは宝塚の特徴といえる。
 大げさだといわれてしまうこともある化粧、演技、衣装などは、広い劇場の最後方から観劇するお客様にも、表情がはっきりわかるようにという配慮。 最近は昔よりもナチュラルになってきている。
 また、生徒たちの多くは20代と他の劇団よりも若く、宝塚歌劇団は女優の養成機関であるといえる。 生徒たちがスターを目指して成長していくのを見守り、応援することは、宝塚の楽しみ方の一つであると考えられる。

1.宝塚のレビュー(ショー)

 昭和2年『モン・パリ』が最初のレビュー。 作者の岸田辰爾は大正15年にパリで劇界を視察した。 随所にちりばめられたパリ直輸入の唄と踊りが売り物であり、レビューという形式自体パリの劇場での流行を直輸入したものであった。

『シトラスの風』('98宙組、作・演出/岡田敬二、トップ/姿月あさと、娘役トップ/花總まり)
<オープニング>(出演者全員)
『シトラスの風』
<そよ風と私>(姿月、花總、和央ようか、湖月わたる 他)
レクオーナ(1896-1963、キューバの作曲家・ピアニスト)『アンダルーサ』
<ノスタルジア>(姿月、花總、和央 他)
プッチーニ『O mio babbino caro(ああ、私のお父さん)』
<ザ・ロケット>(初舞台生約40名によるラインダンス)
<明日へのエナジー>(姿月、和央、湖月わたる 他)
Brooklyn Tabernacle Choir 『Favorite Song Of All』
<フィナーレ>(出演者全員)
『夢・アモール』(姿月、花總によるデュエット)
『シトラスの風』

2.レビュー(ショー)に使われる音楽

 宝塚のお芝居、ショーでは作品ごとにオリジナルの音楽が作曲される。 しかし、クラシック、国内外のポップス、ラテンミュージック、シャンソン、などさまざまなジャンルから引用される場合もある。

3.洋物と日本物

 宝塚では「日本物」と呼ばれる、歌舞伎や日本の歴史上の人物、古典作品などに基づくお芝居・音楽付きの劇や、日本舞踊、その他の日本の伝統的な舞踊を用いたレビュー(ショー)も上演する。 創立者・小林一三の理想を受け継ぎ、を洋楽に演じるものである。
舞踊詩「浅茅が宿−秋成幻想−」('98雪組)より

4.考察

(1) 渡辺裕『宝塚歌劇の変容と日本近代』より (2) 宝塚で使われる(オリジナル)音楽に関しての私見

宝塚歌劇団 略年表(昭和初期まで)
1913年(大正 2)宝塚唱歌隊を組織
1914年(大正 3)宝塚少女歌劇第一回公演『ドンブラコ』他
1918年(大正 7)初の東京公演(帝国劇場)
1919年(大正 8)宝塚少女歌劇団を組織
1927年(昭和 2)日本初のレビュー『モン・パリ』上演
1940年(昭和 15)宝塚歌劇団に改称

5.宝塚の名作紹介

○ 「ベルサイユのばら」('89〜'91、脚本・演出/植田紳爾、初演は'74〜'76)
○ 「エリザベート」('98宙組、潤色・演出/小池修一郎、姿月あさと、花總まり)
* 小池修一郎・・・慶応義塾大学文学部出身、宝塚以外のミュージカルの演出も手がけている

『愛と死の輪舞』(トート:姿月あさと)
『私だけに』(エリザベート:花總まり)
『愛のテーマ』(トート、エリザベート)

I 公演の種類

宝塚大劇場公演(兵庫県宝塚市、2527席) 約1ヵ月半、1日1公演か2公演
新・東京宝塚劇場公演(日比谷、2069席、)

ミュージカル、音楽付きのお芝居約1時間30分 * 開演前、休憩中は飲食OK
休憩35分
レビュー(ショー)約1時間
* 各公演中1回、研究科7年目までの生徒による新人公演がある

宝塚バウホール公演(大劇場に隣接、500席)約14日間
東京特別公演(代々木・日本青年館、1460席)約6日間
約2時間30分(うち休憩25分間)
出演者は30名程度、音楽付きの劇だが本公演よりも芝居中心。
主役をトップスターが務めるとは限らない。
シアタードラマシティ(大阪市)、赤坂ACTシアター、
中日劇場(名古屋市)、博多座(福岡市)、地方公演 等

トークショー、ディナーショー、TV、ラジオ、等にも出演
東京宝塚劇場は建て替えのため、1998年5月から2000年12月まではTAKARAZUKA 1000days劇場(有楽町、2031席)にて公演。

II 宝塚の仕組み

宝塚
歌劇団
専科
(組には所属せず、生徒たちの指導をしながら各組に出演)
花組月組雪組星組宙組(各組約80名)
各組に組長・副組長
トップスター(必ず主役を務める)
娘役トップ(トップの相手役、ヒロイン役)
二番手(= 準トップ)
三番手
:
:
三年
二年
研究科一年(=初舞台生)
宝塚
音楽学校
本科(約40名)
予科(約40名)
トップは研究科12〜15年目で就任し、3〜5年程度務めることが多い
娘役トップは研究科3〜7年目で就任し、2〜3年程度務めることが多い
組替えもある
宝塚の舞台に立つためには必ず宝塚音楽学校を卒業しなければならない
新専科制度…2000年6月より、新専科制度の導入により、二番手・三番手のポジションにいた10人は現在、専科に所属し各組に出演中

スタッフ
理事長、理事(以上は演出家も兼任)、演出家、作曲家、振付家、プロデューサー、指揮者、オーケストラ、衣装、装置、小道具、等

外部の方に依頼することもある。
松任谷由美、谷村新司、高見沢俊彦、(以上作曲)、日比野克彦(装置・舞台美術)、横尾忠則(ポスター)、SAM(振り付け)、辻村ジュサブロー(衣装)

III ミュージカル・音楽付きのお芝居、バウホール公演の作品について

ブロードウェイミュージカル
WEST SIDE STORY, MY&MY GIRL, ハウ・トゥ・サクシード
座付き作者によるオリジナル作品が基本だが、題材を映画、小説、漫画、歴史等から採用していることもある。
例:シェークスピア、風と共に去りぬ、エデンの東、俺達に明日はない、嵐が丘(ブロンテ)、大尉の娘(プーシキン)、凱旋門(レマルク)、帝政ロシア時代、ブルボン王朝、三文オペラ、カルメン、バラの騎士、源氏物語、忠臣蔵、新撰組、坂本竜馬、浅茅が宿(上田秋成)川上音二郎、明智光秀、石川五右衛門、ベルサイユのばら、ブラックジャック(手塚治虫)

IV チケットの値段

宝塚大劇場 新・東京宝塚劇場
S席7500円 SS席10000円
A席5500円 S席8000円
B席3500円 A席5500円
立見席2500円 B席3500円
B席2500円
(2階席16列目:当日券のみ)

参考文献