※ モノドラマMonodram[独]1909年8月27日から9月12日に作曲、10月4日にはスコア完成
登場人物が一人のメロドラマ(すなわち、台詞と音楽伴奏から成る作品)のこと。(『ニューグローブ世界音楽大事典』,講談社,1994年,
項目[モノドラマ])
「モノドラマ『期待』(作品17)の半時間分のスコアを14日間で書き上げたこともあったし…」作品全体は4場から成るが、第4場が作品の約4分の3を占める。(シェーンベルク『音楽の様式と思想』)
登場人物は名のない女一人(Eine Frau)。 物語としては、ほとんど何も起こらない。 自分を裏切った恋人を探しに夜の森の中に入った女が、恋人の死体を発見し、混乱した意識のままモノローグを続ける。
第1場(mm. 1-37) … 38小節 第2場(mm. 38-89) … 52小節 第3場(mm. 90-124) … 35小節 第4場(mm. 125-426) … 302小節
→ 出来事・物語ではなく、登場人物の心理そのものを描き出すことが主眼とされている。
* クラウス,カール(1847-1936): | 文芸批評家、ジャーナリスト。 ウィーン世紀末文学の新しを牽引した。 批評活動の他、自らも諷刺作品などを書いた。 彼の雑誌『Die Fackel』には、シェーンベルクも寄稿している。 |
1895年 フロイト=ブロイアー『ヒステリー研究』出版。 1900年 フロイト『夢判断』出版。 1908年 7月『ヒステリー研究』第二版 出版。(改訂なし)
つまり、今までのことはすべて「私の芝居小屋」とよばれる、妄想、白日夢で、患者はそれを演じていた。 実際に見えた"あなた"とは、医者のことと考えられる。§ 最後の台詞の削除問題(Falck, Robert)
1930年の手紙「作曲している間、常にそれぞれの場面の効果を極めて具体的かつ精密に考えていた」(Arnoold Schoenberg. Letter to Intendant Legal, Berlin, Oper am Platz der Republik Baden-Bade, 14 April, 1930)
最後の台詞の削除がおこなわれているが、シェーンベルクは最終的に最後の台詞「ああ、あなたがそこにいる…」を残した。なぜこの台詞を残したのか?
「出版されている書簡集の、1910年ごろの早い時期の手紙を読めば、彼がフロイトの概念に精通しているのは明らかである。」(Falck, Robert)「彼らはフロイトについて語り合い、クラウスのことも、ユングのことも大いに語り合いました。」(ジョーン・アレン・スミス『新ウィーン楽派の人々』より
ザルカ・フィアテルの証言,22頁)