FRANCK STOFER (SONORE) INTERVIEW
(1999年8月発行oo6号に掲載)

日本文化が東洋の神秘ともてはやされたのも今は昔。いまやわが国は文化の輸入大国。
そんな中にあって、日本の音楽に目を向けて活動するフランスのレーベルがある。
SONORE。
日本の音楽を欧州へ。欧州の音楽を日本へ。
主宰者であるFranck Stoferにインタビューした。

●SONOREについて教えてください。SONOREとは何ですか?
レコード屋? ディストリビューター? レーベル?
SONOREは、1997年の終わりに始めたレーベルです。僕はもともとはミュージシャン(ドラム)とコンサート・オーガナイザーをしていて、変った音楽をプロモートするのは難しいことだと気付いていた。フランスの音楽界に何かが欠けているのを感じたのでSONOREをはじめたんだ。もうすごいよ! SONOREで最初に出したCDがRUINSの新しいアルバム『VRRESTO』だったんだ。それからホッピー神山の『JUICE AND TREMOLO』と『MOSIQVES JAPONAISES』(日本の音楽)の本とCDを出した。4つ目のCDはフランスの東南のパウ出身の6人組、KOURGANEというすごいグループのもので、10月にはALBOTHというスイスのバンドのCDを出すんだ。その上、日本のアーチストだけの小さなカタログも作ってディストリビューターの活動もやっていて、それももっと大きくしたいと思っているんだ。SONOREでは、コンサートのブッキングもやっている。1996年からMUSICA TRANSONICとRUINSとACID MOTHER TEMPLEのフランスツアーとかチェコのLEDE ZIVE SLEDEやKOURGANEのツアーを組んでます。SONOREで出しているような音楽をサポートしてくれる会場のネットワークにつながりを持つのも大事だと思うからね。

●FranckさんはSONOREの代表なんですか? 他のスタッフはいますか?
レーベルは1人ではじめたんだけど、その後CYRIL CLAUZONという友人が手伝いに来てくれるようになって、今はパートでレーベルのスタッフをやってます。3〜4人のスタッフがいたらとっても助かるけど、今は人を野党資金がないので・・・あと数年したらスタッフを増やすことができたら嬉しいね。

●SONOREで『MUSIC JAPANAISES INDEPEND-ENTES DES ANNEES90』という
日本のアーチストを紹介するCDとビデオを出していますが、
収録アーチストはどうやって見つけたのですか?
1996年にチェコで開かれた国際文化交流祭で手伝いをしに行った時のこと。このフェスティバルはCESTAという所で行われたんだけど、オルタナティヴのアーチストの共同的なフェスティバルを作り出そうとしていた(詳しくはwww.cesta.cz)。このフェスティバルで吉田達也と知り合ったんだ。僕はそれ以前からからRUINSのファンだったんだ。彼がフランスで数日間空いているときいて、ライヴをすることを勧めたらOKしてくれた。それから何年間かお互いに連絡をとりあっていて、ある日『VRRESTO』を出すレーベルを探していると言われた。僕はSONOREをはじめて『VRRESTO』を出しました。そして僕自身も、日本に行ってライヴをする機会ができて、日本の音楽についての本を書きたいと思っていたので、いろんなレーベルの人と会った。その時、GOD MOUNTAINで出されているすごい音楽を発見したんだ。ホッピー神山の未発表CDを聴いて、SONOREで出したいと言ったら、賛成くれた。そこから彼との親しく信頼深いつきあいがはじまったんだ。HIROSHI MASUDAのおかげで日本で集めた資料を整理して『MUSIC JAPANAISES INDEPEND-ENTES DES ANNEES90』という本を出版したんだ。近いうちに他の日本のアーチストとの共同作品も始める予定だ。このプロジェクトについてはANA(全日空)が協力してくれるので、とってもラッキーだと思う。

●『MUSIC JAPANAISES INDEPENDENTES DES ANNEES90』はフランス以外でも売っていますか?
最初はフランス語が主の国(フランス、ベルギー、カナダ)だけに卸す予定だったけど、イギリスやイタリアや日本等の国の人からの注文も入るようになったんだ。今は英語に訳している最中だからフランス語国以外の国にはまだ出さないようにしている。でも、本を一冊翻訳するのは大変な作業なので、ちょっと予定より遅れてるんだけど、99年の10月には英語版を完成させようと思っている。

●その本の内容はどんなもの?
これは90年代の日本のインディーズ音楽をアルファベット順にして紹介する、120ページもある本だ。この本で紹介されているのはエレクトリックやフリージャズ、プログレッシヴからアバン・ロック、ノイズまで、幅広いジャンルの500のアーチストを収録している。灰野敬二、RUINS、FILAMENT、 HACO、SOH BAND、古館徹夫、 ホッピー神山、ACID MOTHERS TEMPLE等が入った2枚組のCDコンピレーション付だよ!

●本への反応はどうですか?
フランスとベルギーではすごくいい批評を受けたね。4ヵ月で500冊も売れたので、フランス語版はほとんど売り切れ。日本の音楽に興味を持ってる人はいっぱいいるけど、情報や音源が手に入りにくいからね・・・それにいろんなミュージシャンがいろんなプロジェクト、バンドをやっていて、何が何なのかわかりにくくなってしまうんですよ。そして、私達にとっては日本語の名前が覚えにくくて! この日本の音楽というジャングルをわかりやすくするためにもこの本を出版したんです。

●日本でこの本を手に入れたい人はどうすればいい?
1つの方法はレコード屋にわたしの住所を教えて、SONOREから直接注文してもらうこと。でも今、日本のディストリビューター(I.D.N)と話をしているので、準備ができたらそこを通して出回ると思うよ。今すぐに、という人はSONOREに個人的に注文を入れてもいいけどね。今はメールオーダー(通販)が多いんだけど、メールオーダーは個人に直接連絡を取れてSONOREの活動等も知らせることができるので、とてもいいシステムだと思う。

●ちなみに君はいくつなの?
26歳だ。若いだろ? だからこそこのプロジェクトに尽くすエネルギーがこれだけあるわけさ。

●いつ、どのように日本の音楽と出会ったんですか?
上に吉田達也との出会いを話したけど、日本の音楽との出会いは、数年前にボルドーでRUINSのライヴをみた時だと思う。その前にSUPERSNAZZのライヴをみてるかもしれないが、どっちが先だったか覚えていない。僕は昔から他文化に興味を持っていて、東ヨーロッパとの関わりを深めようと長い間、バンドやディストリビューターやレーベルと連絡をとっていたが、フィードバック(反応)があまりにも少なかったんだ。それが、日本のバンド等とコンタクトを始めたら、反応も関心もすごいので、夢中になってしまった。そしてKIRIHITOやCOAと出会い、GAJIや津山篤、川端一とも連絡をとっている。日本のミュージックシーンのことをもっと知りたいので、今年の夏に3ヵ月間、日本に行くことになりました。それと日本でのヨーロピアン・シーンを作りたいと思っています。ヨーロッパには、日本では知られていないものすごいミュージシャンが沢山いるんだよ。

●フランスで日本のバンドがそれほど人気があるとは思えないんだけど?
そうだね。むずかしいね。あまり有名だとはいえないが、フランスでは日本の音楽に対する興味があることはたしかだね。でも、日本の音楽というのはそれほど大事ではないんだよ。ヨーロッパでしょっちゅう’ライヴしている日本のグループはいっぱいいるよ。大友良英、吉田達也、灰野敬二、HACOなどね。私がアーチストやツアーをプロモートするのは、その人達が日本人だからではなく、その人達の音楽的プロジェクトに関心があるからなんだよ。ヨーロッパと日本とのコネクションを作るのも大切だけど、日本をエキゾチックなものにしてしまわずに、音楽自体を鑑賞する大切さを忘れてはいけないと思う。まあ、フランスで日本の音楽がどれだけ売れているかについては、RUINSとホッピー神山のアルバムは数百枚売れたし、僕がツアーをブッキングする時はだいたい10ヵ所でライヴしてるよ。

●日本のCDはフランスでいくらぐらいで売れているんですか?
輸入盤は高くて4,000円から5,000円ぐらいするよ。わたしがヨーロッパでリリースする時や輸入する時は2,000円から2,500円程度で売るようにしているけどね。これは比較的平均な値段だと思うよ。

●あなたはどんな音楽をリリースしたいのですか?
フリージャズ? アバン・ロック?
う〜ん、いい質問だ! それは毎日考えてるんだけど、いろんな音楽があるからね。僕が求めているのはクリエイティブ(創造力のある)音楽なんだよ。アバンロックでもフリージャズでもチェンバーミュージック(オーケストラ等)でも、とても音楽的に面白いアイディアがいっぱいあるんで、僕はあまりボーダーは作ってないんですよ。やっぱりその音楽を聴いて刺激を感じて、そしてそのアーチストと友好的なコンタクトをとれたら、もうそれでバッチリ。ジャンルは関係ない。
僕がアバンギャルドという単語を好む理由は誰でもわかるフランス語の言葉だからなんだ。その意味はとてもクリアーで僕のやりたいことにぴったり合うんだよ。アバンギャルドはもともと軍隊の言葉で、戦争の時に先頭になる人達を意味するんだよ。要するに最初に殺されるので、すべてをリスクして命を賭ける人のこと・・これは12世紀からの言葉なんだ。音楽に関しても古くから使われている言葉で、今はその研究をしていて『L'avant-garde musicale  Paris de 1871 1939 』という本を読んでいるんだ。SONOREのことも "L'avant-garde musicale" と言ってもいいと思うね。

●BELLY BUTTONというバンドのドラマーとして日本をツアーしたときいたけどが、その時の印象は?
とってもエキサイティングで、夢の要だったよ! 吉田さんがブッキングしてくれたので、RUINSのフランスツアーをブッキングしたあげたお返しみたいな感じで、東京、岡山、姫路、京都、名古屋、大阪とMUSICA TRANSONICと一緒にまわった。客入はわりと少なかった。京都で9人から東京では150人。だけどとても嬉しかった! フランスのバンドが日本をツアーするのはあまりまいことなのでとてもいい経験だった。日本はフランスとは文化が全然違うので、子供のように全部一から習わなければいけなかった。このような異文化との直面は大好きなんだ。しかしバンドの面ではフランスのレーベツがツアーの為のプロモーションやディストリビューションをあまりしてくれなかったので、ちょっと残念だった。だから今回SONOREのことで日本に行くにあたっては、いく前の準備を全部自分でやりたかったんだ。
またバンドと一緒に日本ツアーしたいんだけど、ちゃんと準備もできるようにしたいからね。できたら夏にホッピー神山と一緒にピアノとドラムのデュオをはじめて、何カ所か日本でライヴしたいと思ってるんだけどね。

大阪でもライヴやったんだよね。どうだった?
そうだ! FANDANGOでやったんだけど・・・君はそこにいなかったんだよな? とてもファンタスティックな所だった。客は少なかったでど、みんなすごく興味を示してくれて良かった。JAPAN OVERSEASの少英さんに会えたし、他に大阪のシーンを支えている人にも会えました。大阪は気に入ったけど、あまり長くないなかったので、街を楽しむことができなかった。東京よりはリラックスした空気を感じたけどね。それとタコ焼がおいしかった!

●フランスの音楽シーンについて教えてくれる? 僕はCOSTESやTELEPHONEぐらいしか知らないんだ。
フランスのミュージックシーンはとても活発で、何百ものバンドが存在してるよ。しかし、長続きするものが少ない。あまり発達できないみたい。バンドというものは海外でも活動しないと、3〜4年もしたら同じことの繰り返しになってしまうからね。シーンとしてはジャンル別に厳しく別れている。ロックとジャズがまざることはめったになくて、とても残念だと思う。ロックミュージックに関しては、フランスでは重大な出来事があるんだ。数年前から、フランスの政府が社会的な面での重要さをひろげるために、"Musiques amplifiees"(アンプを使った音楽)とよぶ音楽を援助することになっているんです。アイディアとしては面白いが、今となっては行政的な音楽のネットワークができてしまって、固定的で閉鎖的なものになってしまってるんですよ。商業的な音楽業界を社会福祉と混同するのは間違っていると思う。音楽の文化的、教育的な重要さをまったく無視して、その社会的、商業的な面でしか見ていない。本当の創造力や大胆さがポップやロックの音楽からなくなっていってるんですよ。どこに行ってしまったのだろうか? 私も知らないけど、それを求めてSONOREをやっているんだ!
 ちなみに、TELEPHONEは古過ぎるよ! しかしCOSTESはとてもパワフルだ。本当のフランスのパンクだよ。バンド名だったらいくらでも言えるが、最近僕がリリースしたばかりのKOURGANEというバンドのことを話させてくれ。PAU出身のグループで、その地方 "le Bearn" のイメージとモンゴルのステップや馬や山のイメージを混ぜた音なんだ。メンバーは6人、ギター、ベース、ドラム、トランペット、サックス、そしてボーカル。とてもエキサイティングな音楽で、グルービーなラインやポリリズミック(多数のリズムを使う)なアイディアを使っているんだ。70年代の音楽の影響も感じるが、とても新鮮で新しい方向へ向かっているバンドだ。歌詞はフランス語では珍しくフランス語で、とても詩的で面白い。このCDの出来には本当に満足している。2000年の夏には日本ツアーを組みたいと思っているよ。

●フランスの景気はどう? 何か新しいことはある?
この国の経済状況については、僕達はいつも悲観的なんだけど、食べたり飲んだり、変ったクレイジーなプロジェクトもすることができるので、そう悪いわけでもないのかな。社会福祉のための政策が多くのアーチストの生活を養っていることを、政府がまだ気付いてないみたい。何かやりたいことがあったらそれをする可能性はあるので、僕達はラッキーだと思うよ。それ以外では伝統的な職業産業が大量生産に負けていて、フランスのバゲット(フランスのパン?)等の質が落ちていてさみしいね。

●日本の読者に向けて、最後に一言。
日本のみなさんにフランスやヨーロッパの出来事について情報を得る機会を与えたいと思っていますので、興味のある人がいれば、下記の住所に手紙を送ってください。ニュースレター等送ります!

SONORE - FRANCK STOFER,
BP 94 - F-33402 TALENCE cedex FRANCE.
インタビューありがとう。日本の雑誌は初めてなので楽しかった!
 
 

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