四月の顔 男声合唱組曲 

                     2)つめたい春の憂鬱

                   大手拓  作詞
                  林 宏太郎 作曲


                 九州工業大学メンネルコール 定演
                     指揮: 入口紀夫

                    昭和43年
                      北九州市 小倉市民会館


              
にほひ袋をかくしてゐるやうな春の憂欝よ、
              なぜそんなに わたしのせなかをたたくのか、
              うすむらさきのヒヤシンスのなかにひそむ憂欝よ、
              なぜそんなに わたしの胸をかきむしるのか、
              ああ、あの好きなともだちは
              わたしにそむかうとしてゐるではないか、

              たんぽぽの穂のやうにみだれてくる春の憂欝よ、
              象牙のやうな手でしなをつくるやはらかな春の憂欝よ、
              わたしはくびをかしげて、おまへのするままにまかせてゐる。
              つめたい春の憂欝よ、
              なめらかに芽生えのうへをそよいでは消えてゆく
              かなしいかなしいおとづれ。
 

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