岩河智子 「アナリーゼによるオペラ表現探究の楽しみ」 発表概要
私が音楽監督を務める札幌室内歌劇場は、発足当時「アナリーゼによるオペラ表現探究会」と名乗っていました
。
アナリーゼにより音楽を時にはきめ細かく、時には大づかみにとらえ、しっかりイメージをつかむ。
そしてそれを土台に歌や演技を考えていけば、オペラがもっと面白くなる、と思ったのです。
高校のオペラ部で「カルメン」の上演に熱中し、その後島岡先生のもとで和声とアナリーゼの勉強に熱中した私にとっては、こんなオペラ団体を作るのは当然の流れでした。
それから25年、相変わらず模索が続いていますが、基本方針は変わっていません。
例えば‥‥
「この減7はケルビーノの苦悩か?陶酔か?」
「ドン・ジョバンニはソナタ的プロセスで女を口説いている?」
「このエンハーモニック転調でタンホイザーの世界が変わるのだ!」
こんな会話が飛び交っています。
和声や調の分析に加え、旋律の様子やバスの動きもしっかり観察します。
また、大きな構成の曲になればなるほど全体のプロセスを島岡方式で図示し、曲の構造が一目で分かるようにします。
稽古でアナリーゼが進み、音楽の姿が明らかになると、演奏家はさまざまな表現を考え始めます。
アナリーゼは生き生きとした演奏の土台である。
このことを示すために、
①アリアや二重唱を、アナリーゼしつつ実演し、演奏が変わって行くようすを聴いていただきます。
②参加者の皆さんにも「愛唱歌」をアナリーゼしつつ歌っていただきたいと思います。