SAXZから非常にユニークなスタイルのソプラノ用マウスピースが登場した。
内部はデュコフやガーデラに近いハイバッフルタイプなのだが、外観がかなり特徴的で、シャンクの部分が太いまま「ストン」と切られており、後ろに重量をたっぷり持った設計になっている。
これはバリ・ホーク2のバランサーに近い発想とも言えるが、ホーク2の取り外し式のバランサーは便利かもしれないが、振動のロスもあるので、しっかりした吹き答えと安定感のある音色を求める向きには取り外しは必要ではないだろう。(筆者もホーク2を吹くならバランサーを外したいとは思わない)
筆者のソプラノサックスはヤナギサワのSC800という最初期のカーブドソプラノサックスなのであるが、マーク6をコピーしたS-6の改良版S-800をカーブドにしたような設計で、非常に軽量だ。現在のカーブドよりもかなり軽量なので、マウスピースに重量をつけてしっかりとした吹き答えを得るというのも良いんじゃないかと思っている。
若干吹き始めに重量を感じることもあるが、ソプラノはあまり軽すぎても他の楽器との持ち替えを考えた場合は、多少の抵抗感があったほうがむしろ良い。そもそもソプラノにそんなに抵抗感を感じないので、吹き始めの重さに支障を感じる事はほとんどない。
さて、肝心のサウンドなのであるが、メタルハイバッフルということで、もちろんビッグサウンドが出るのだが、ただの「バカ鳴り」系のマウスピースではない。
音色はクリアで太く、張りがあるトーンなのに耳に刺さらない。(もちろん眼前でカーブドで吹かれればウルサいかもしれないが)バンドで吹く分にはむしろ音量が稼げるのも有り難い。重量感がありつつもキレのある独自のサウンドが得られる。
コントロール性能も秀逸で、メタルハイバッフルにありがちな気難しさはあまり感じない。ピアニシモでも安定しているし、柔らかく太く小さな音でカーブド独特のサウンドを得ることも可能である。
ソプラノをウォームに吹きたい筆者にとってこのマウスピースは果たして「アリ」か「ナシ」かと個人的に問われれば、これはもちろん「アリ」だろう。ウォームにしか鳴らないマウスピースを選んでセッティングすればラクかもしれないが、ウォームからハードなビッグサウンドまで広い表現の幅を持って音楽に臨めるのはやりがいのあるチャレンジだ。自分の個性をより明確にアピールできると思う。
また、カーブドは(特に古い機種)音程がとりにくく、マウスピースによっては非常に辛いものもあるのだが、SAXZはハイバッフルにも関わらず基本的に非常に音程が良い。
なお、軽めの音色が欲しい方には「EMPIRE」(エンパイア)というシャンクが普通のマウスピースのように細くなったモデルも存在するので御心配なく。
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