H.Selmer SERIE3 Black Laquer
(Ballad) SAXZ Sanborn Silver
(Ballad) Meyer80th #6
(Funk) SAXZ Sanborn Silver
(Funk) Meyer80th #6
2012年購入。
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<Newアルト購入の顛末>
実の所、25年ほど吹き続けている今までの愛機フラセルマーク6アルトですが、
ネックの劣化、パワー不足など老朽化を感じる日々が続いてました。
マーク6はラクに吹けて良いんですが、もうちょっと重さも欲しい・・・
そして、その弱点を補う別の楽器探しは、ここ数年続いておりました。
一昨年、予定外にConn New Wonderを購入したのですが、
この楽器が意外にも筆者のメイン楽器の選ぶ方向を明確に指し示してくれたように思います。
筆者自身6本目のアルトということになりますが、
初心者の時から8年ほどもお世話になったヤマハのYAS-32。
そして現在まで20年以上つきあってくれたマーク6と・・・
実際の所メインとしては3代目となります。
黒と金の配色は、筆者がカイルベルトの事を「仏壇」と称して、嫌っていたものなのに、
筆者が年齢的に仏壇の世界に近付いて来たからなのか、
アルトだとそこまで目立たないからなのか、
今回はなぜか許せるような気がします。
ガーデラのブラックニッケルメッキよりもさらに漆塗りに近い、ブラックラッカーなんですが(笑)
仲間に見せると「わ〜極○っぽい!」とか言われたりしますが。
<Conn New Wonderとの出会い>
2010年に購入した"Conn New Wonder"をメインにしよう!!
という気持ちもあったのですが、
サウンド面では全然問題なくても、フラジオの運指を変えなくてはいけなかったり、
コルクなど消耗品でキーバランスが取られていたりして、
メンテナンスの頻度が多くなるなど、実用面の問題が浮上して、
やはり大事に使っていかなければならない楽器だなぁ、と痛感。
メインに据えるのはあきらめました。
<SAXZとの出会い>
Conn NewWonderのパフォーマンスはホントに凄くて、信じられないくらいバリバリと鳴るのですが、
筆者のマーク6ではこんなに素直に楽器が反応しないことが判りました。
ネックを替えてみたり、調整をしたりして、Connのイメージに近く持って行こうとするのですが、
70年代のフラセルの素材の問題もあり、キツ目の高周波が耳についてしまう。
それでもリファレンスのネックとの相性がなかなか良くて、ちょっと持ちなおしたりしました。
しかし、追い討ちを掛けたのがSAXZのスターリングシルバーマウスピースの登場です。
この圧倒的なパワーのマウスピースに耐えられて、かつ耳障りの良い鳴り方をする楽器を、
なんとしても選ばないといけない、という思いにかられました。
現代の楽器の多くよりもマーク6の方が音質的にはバランスのいいサウンドに思えるのですが、
残念ながら筆者のマーク6ではパフォーマンスが活かしきれない・・・
サンボーン氏が使っているような年代の、相当状態と年代のいいアメセルであればそれこそ
「!!!」という音になろうというものでありますが、
近年のアメセルの金額は、買うのがバカバカしくなるほどのプレミア度で、
持ち歩いたり、楽屋に置いておくのもコワイくらいです。
かといって、新品のセルマーを50万近くも出して買うような趣味もお金もないため、
中古探しの果てしない旅に出た訳です。
(・・・といっても、どっかに行った訳ではないですが)
<試奏の旅>
それこそあらゆる楽器を吹きました。
あらゆるメーカーの楽器を吹いたと言えるでしょう。
数年の歳月をかけて絞り込み、最後に候補に残ったメーカーは
セルマー
ヤマハ
カイルベルト
ガーデラ
キャノンボール
と言った所です。
「ヤナギサワが無いじゃ無いか!」とお怒りの貴兄もいらっしゃると思いますが、
ヤナギサワは筆者もカーブドソプラノを愛用しているメーカーでして、
造りもキーアクションも素晴らしく、
特にエリモナの中古などを何度か吹いた所、フィーリングがマーク6にも近く独特の良さがあったのですが、
若干音が柔らか過ぎるというか、もう少しエッジがあった方が筆者の好みと判断して外れました。
他の最近の機種もハイバッフルのメタルを使用する事を考えると、
あんまりマッチングしないため、最終選考からは外れました。
それでは、各メーカーの筆者の中での落選理由を述べてみたいと思います。
<カイルベルト>
まず「SX90R BN」ですが、フルトーンで鳴らした時は、真鍮の丸い感じがあっていいのですが、
アクセルが軽くて、すぐにいつでもフルスロットル!みたいになっちゃいます。
パワーがあって個性的な楽器なんですが、一本調子になりそうで、ちょっと好みと外れるかな?
「Shadow」 ですが、反応は大好きです。押さえて重くも吹けるし、ギャンギャンにも吹ける。
広い表現力を持った楽器で、デザインもカッコよく、大変気に入りました。
しかしながら全体にはダークなんですが、フルトーンで鳴らした時に、真鍮とは違う洋白が持つきらびやかな響きが出ます。
吹き答えも十分な楽器で、筆者があと20才若かったら選んだかも知れませんが、
その個性でもある洋白の響きをもって選外とさせていただきました。
値段もちょっとお高いですね。
<デイブ・ガーデラ>
テナーで502BNを愛用している事もあり、ガーデラのサックスは大好きです。
ニューヨークシリーズのDG402BNも何度か吹いた事があります。
今回の選定基準からいってもベストに近いのですが、
残念ながら中古にお目にかかる事はほとんど無いのと、
あったとしてもそれなりに高価だという点がネックとなり、除外されました。
筆者が「ビッグリーフ」と呼んでる、(彫刻の葉っぱが大きくメーカーロゴを取り巻いている)
ヤマハ輸入時代の初期型ASBNは値段がこなれてて、音色も悪く無いのですが、
きっとコレ吹いていると402が欲しくなるのは請け合いですから、ヤメました。
<キャノンボール>
注目したのはヴィンテージシリーズなんですが、
ハイバッフルで吹いてもダークさやウォームさが残って、非常に良い感じです。
マーク6に比べると、パワーもいくぶん多めに入って、吹き答えもあります。
さすがアメリカ人の設計だけあって、ジャズ用とは言え吹きまくれる感じに非常に好感が持てます。
人気が割とあるのか、中古が結構高いのと、若干音色がウォームすぎるきらいがあって外れました。
少なくとも台湾製のレベルがどうこうとか言う時代では無くなって来ましたので、今後も期待して見て行きたいです。
ただビッグベルシリーズの彫刻やデザインのディティールはちょっとデザイン的に好きになれません。
<ヤマハ>
ハッキリ言ってYAS-855を狙ってました。
初心者から8年吹き続けたヤマハの記憶と、それから20年以上吹いているマーク6をミックスしたようなフィーリングで、
音色のウォームさと太さ、マーク6よりも重量感があって吹き答えは十分です。
キーの配置などがコンパクトで違和感なく、安心感があります。
音色はマーク6と若干違って重さを感じるのですが、力を入れて行った時の反応の仕方が良く似てます。
ハイバッフルで吹くと、高音がちょっと細く感じることがあって、この楽器は選ばなかったんですが、
ラバーでバリバリ吹くスタイルだったらこの楽器にしていたかもしれません。
彫刻のデザインと仕上がりはちょっと美しさに欠けるような気がします。
YAS-82Zは悪く無いですが、周りに吹いてる人が多くなって来たもので・・・
アマノジャクなんですね、きっと(笑)
冗談はさておき、82のアルトは真鍮材事体の響きはあんまり感心できませんでしたね。
パワーを入れてハイバッフルで吹くと、ヒステリックな感じの音になっちゃいます。
話はそれますが、ソプラノのYSS-82ZRはとっても良かったです。
<セルマー>
まずリファレンスですが、最有力候補だったのは間違いありません。
マーク6と吹き比べると、全体的なボリュームの大きさ、低音成分の多さ、よりしっかりとパワーの入る吹き答えなど、
「やっぱり違うな」と思わせる部分も多いのですが、ずっと吹いていると「あれ?コレマーク6だっけ?」
と思う瞬間もあったりします。
筆者がラバー吹きだったらこれを選んだかもしれません。
でもやっぱりハイバッフルで吹くと、ちょっと高音が表に出てしまいます。
F#キーの無いやつでもあまり変わりませんでした。
渡辺貞夫さんや伊東タケシさんの使用で有名なセリエ3のスターリングシルバーも吹きました。
これは吹いてても相当楽しい楽器で、最高なんですが、
値段が高すぎるのと、ハイバッフルと組み合わせると、筆者には音質がトゥーマッチな感じがします。
こういうのはスターが吹く楽器ですね、やっぱり!!(笑)
近年評価が高まっているSA80(シリーズ1)
もビンテ−ジと現代の楽器の掛け橋のようで、結構良かったです。
ウチのバンドメンバーが持っていたので、借りて吹きましたが、
音色が明るくて、フュージョンに使うにはまさにうってつけなんですが、
ハイバッフルだとこれもちょっと硬さを感じますね。
レイキーなんかで明るくパリっと吹くと、80年代っぽくて最高でしょうね。
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以上が最終ラウンドまで残った楽器達のインプレッションです。
色々吹いてるうちに、楽器に対する選定基準みたいなものが浮かび上がって来ました。
1、ハイバッフルのマウスピースで全力で吹いても耳に刺さらない。
2、全力で吹いても詰まらないで抜けるが、ギャンギャンした感じは適度に。
3、素材は真鍮である事。
4、自分の中での「マーク6」に共通する何かがある。
5、筆者自身の追い求める「フュージョン」に使う楽器である事。
6、マーク6とまでは行かなくても、反応が早い事。
7、永年愛用できる愛着の持てるデザイン。
逆にどちらでも良かったスペックが以下の通りです、
F#キーの有る無し。
ノーラッカー。
ビッグベル。
ビンテージっぽい外観。
ノスタルジックな音色。
<決定! セルマー シリーズ3ブラックラッカー>
で、なんでセリエ3のブラックラッカーを選んだか。という事なんですが。
楽器を探し出してから、最初の頃は特にマーク6の面影を求めて、
ネオヴィンテージの流れのサックスばかり狙って試奏していました。
、
そんな時、シリーズ2のブラックラッカーを吹く機会がありまして、
ん!?シリーズ2はキライなんだけど、ブラックラッカーって意外にダークでいいじゃない?
と思ったのがきっかけで、「コレ本体がセリエ3だったらいけるかも」とはその時思いました。
普通の(ラッカーの)セリエ3は巷では人気があるのか無いのかよく判りませんが、
ジャズの人からは明るすぎるし、クラシックの人からは重厚感が無い、みたいな感じなんでしょうか?
理論的に考えると、軽量化して、反応の早さを狙ったセリエ3にブラックラッカーをこってり縫って、
わざわざ反応を悪くするという楽器設計的には矛盾するような仕様なんですが、
筆者はオリジナルのセリエ3は反応が軽すぎると思ってるので、
ちょうどいい感じになってると感じるのです。
見事に高音成分がカットされて、ハイバッフルのSAXZスターリングシルバー、サンボーンモデルとも非常に相性がいいです。
弱めに吹いた時は、ちょっとこもった感じでダークに鳴って、徐々にパワーをあげると、凝縮感のあるエネルギッシュなサウンドに変わってくるんですが、
ボリュームは意外にも割と押さえられて、やたらに大音量でバリバリ鳴りまくる訳ではない。欲しいのはあくまで凝縮感。。。
という、これぞ筆者が求めていた楽器の反応でした。
でも実際はマーク6よりも相当デカイ音が出ますけどね。
<バンドでデビューさせてみる>
ほとんど新品なのに、最近の楽器は本当に良く鳴りますね〜。
フラジオなどは「こんなにラクに出て、しかも安定してるなぁ」
って感じだし、音程もマーク6に比べると格段に取りやすいです。
盛り上がって、ちょっとオーバーブロウ気味になっても、
限界が高くて音が潰れないし、素晴らしい!
逆にソフトな曲では、ハイバッフルで吹いているのに
ウォームなトーンで吹けてしまう。ここはラッカーの厚さが役立ってますね。
マイクののり方も思った通りで、最近のPAは割と過敏な感じが多いのですが、
マイルドさがまず感じられて、耳障りいいですね。
それでいて、ちゃんと抜けますし、低音成分もマーク6より多く出てて、良い音です。
ここら辺はさすがセルマーと言うべきでしょうか?
さすがに、数回吹いただけでは、楽器のクセを完全に掴んだとは言えないので、
フィーリングが馴染むにはもう少し時間がかかると思いますが、
かなり期待できそうです。
音色にビンテージっぽい味はほとんど無いので、
そう言う意味の楽しみはありませんが、
やってる音楽(フュージョン)にはマッチしていると思います。
汚く吹けば汚く鳴ってくれるのも、セルマーならではかもしれません。
日本のメーカーの楽器は、どう吹いても綺麗に鳴ってしまう傾向があるように思えます。
これは我がサックス人生最後のメインアルトとなるでしょう。(少なくとも現在はそう思ってます)
自分のスタイルが自分ではっきり判ってから、初めて選んだアルトでもあります。
最後に自分の楽器を選ばれる方にアドバイスを・・・
まず耳をフリーにして下さい。
先入観とかメーカー名に振り回されないように。
それから、録音を。高音質じゃなくてもデジカメの動画とかでもいいです。
バンドやってる人は、店の人やお客さんにイヤな顔されても、
デカイ音で吹く事。
狭い店で、デカイ音で吹くと、自分の音は自分ではなんだかもう判らないかもしれません。
でも録音して聞くと、バンドで吹いてるのに近いボリュームで吹く事ができていれば、、
バンドで使った時の反応や音質が良く判ります。
2012/12月 購入
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