SAXWORKS(David Sanborn)

 

サックスワークス(絶版)※1994年当時の定価¥58,000

Ballad

Funk

SAXWORKSの想い出

あれは10年ほど前であったか・・・・ヤマハの心斎橋店で試奏した経験があるのみ。当時はサンボーン路線を脱却し、生涯の伴侶トナレックスに出会ったところだったので、買う気は全く無かった。ジョンパーセルが設計し、デビッドサンボーンが開発協力したという幻のマウスピースである。端的に言えばヂュコフDタイプのコピーなのだが、素材、精度などがアップグレードされ段違いのコントロール性を手にしている。当時筆者は鉛デュコフD8、P8(どちらもボブアッカマンチューニング)を持っていたので吹き比べたところ、とにかく扱いやすかった記憶がある。ピアニシモに苦労するデュコフとはかなり違っていた。当時の販売価格は58000円と、他にそんな高価なマウスピースなどなかっただけに度胆を抜かれた。筆者所有のP8も4万台の高価なマウスピースであっただけに、内容ではなかなか良い勝負をしていたと思う。音色ではキレの中にもダークさをたっぷり含んだ鉛デュコフがやはり最もサンボーン的であったと思う。現在キャンディーダルファーの使用で人気を博しているこのモデルだが、音色が明るめなのは録音のせいなのか?分からない。リガチャーが特殊で、輪ゴムのようなリングを好みに合わせて付けていくというやり方だ。リードを締めつけるリガチャーが一般的だった時代にリードに自由な振動を与えるこのやり方は画期的だった。(2004年2月)

IMPRESSION

WEBで公募したところオフで唯一の顔見知り(笑)「ら」さんより貸していただくこととなりました。感謝感謝・・・・・。さて、実際手にしたSAXWORKSだが、その造りの良さは当然デュコフの比ではなく、ガーデラのハンドメイドのレベルと同様に見える。デュコフとの比較は別ページで詳しく述べるとして、吹いてみた印象だが、思ったよりマイルドな音色の様に感じるが、リードが乱れる事なく振動するせいか、ピアニシモからコントロールしやすく、デュコフなどにありがちな、高音部で妙に音量が大きくなることもなく、絞り出すようなサンボーンの「苦しそうなシャウト」が演出できる。これだけハイバッフルのメタルなのに、狭いハコで1.5m前の客にベルを向けて吹いても耳障りで硬質な音にならないのは驚異的。コントロールは全域でしやすく、ラバーのマウスピースを吹いてるような錯角に陥ることさえあった。実際のボリュームやパワーの限界はポンゾールやデュコフなどよりやや低く、大音量のバンドの中では無理をすると、あまりいいサウンドにならないと思う。吹きやすいマウスピースであることはデュコフの何倍もすばらしいのだが、いかんせん小音量でもすぐ鳴りきってしまう。しかも限界はデュコフより低いので、ある程度音量を均一化して、音を揃えていく必要がある。ライブなんかで、我を失ってブロウしても決して良い音にはならないばかりか、高音では詰まって音が出ない状況に陥る。サブトーンは鳴りやすさの反面出しにくい。全般に「音が揃う」ぶん平坦な演奏になるのに注意しなければいけない。高音部で耳障りになりがちなハイバッフルの音質を絶妙にマイルドにコントロール出来ているのはこのマウスピースの最大の美点だと思う。サンボーンのCDを聞いてるとあんなにブロウしてるのにちっとも耳障りじゃない。ああいう風に演奏するには適してるマウスピースだ。独特なリガチャーはリードを変えるのがジャマくさくてちょっとイヤなのだが、ハリソンなどと付け替えてみてもハリソンがショボく感じるほどの良いリガチャーだ。たくさん付けてもそんなに振動が死ぬ事はないので、キャンディーのように全部付け、も充分アリだと思う。リードは結構選ぶほうで、ステージでリードの不調に気づいてもリガチャーのセッティングによっては交換が大変面倒なので、ちょっと不便かな?プロがあまり使って無いのは、あまりにもサンボーンのスタイル向けすぎるということか?・・・・・もはや生産終了しており全世界中で大変なプレミアムとして扱われている。10万円前後という大変な中古価格が普通についたりもする。いいマウスピースだが、適正価格でないものにワタシの食指は動かない。オープニングはD8相当だが、反応やダイナミクスはD6くらいの感覚なので、ちょっと狭いな、という感じがするのもマイナス要因だ。

SAXWORKSとかガーデラを見ていると、エッジの細いマウスピースを完璧に仕上げて吹き易くすることに価値はもちろん見出せるが、演奏の表現に直接プラスになるかはまた、違った問題なのだと思ってしまう。デュコフのような「氷の上を歩くような」サウンドも魅力に感じることがあるからだ。

(2004年3月)

たまらなく円滑なSaxworksのバッフル

リガチャーを全部付けたところ。いわゆる”キャンディーセッティング”

リガチャー拡大図。結構硬いが柔軟な素材。

リングがリガチャーとして使われている時、キャップとして機能する。

"サンボーン”印。

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