marmaduke
saxophone accessoriesのデックスさんより、オリジナルマウスピースの新型が完成したとの連絡が入り早速サンプルを送っていただいた。以前からもマーマデュークのオリジナルマウスピースは存在したのだが、テナーに引き続いて全く新しくなった。
見かけは何の変哲もないオーソドックスなラバーマウスピースなのだが、吹けば吹く程にその骨太のサウンドに似つかわしく無い程あっさりとした外見に思わずニヤけてきてしまうほどだ。近年はデザイン過多で高級感をかもし出そうと言うブランドが多いだけに、サウンドのみで勝負しているデックスさんの誠実さが溢れていて非常に好感のもてるものになっている。
さて、そうなると一番肝心なのはサウンドなのだが、基本的にはニューヨークマイヤーのコピーであり、いかにビンテージマウスピースのサウンドや吹き答えをプレイヤーの視点から現実化した商品と言えるだろう。第一印象は、近年のビンテージ復刻タイプにありがちな「反応が軽すぎる」ことが無いこと。
むろん仕上がりのいいビンテージマウスピースは余計なストレスが無く、息がスムーズに入り、リードを1サイズ固くしても無理なく吹けるというものではある。
もちろんこのマウスピースもピアニシモが吹き辛い訳では無く、十分スムーズなのだが、ビンテージよりは音質的に若干硬さを感じる。それよりもこのマウスピースの美点はもっと息を入れてからにあって、息を入れれば入れる程、程よい抵抗が返って来て、プレイヤーとしては思う存分MAXに息を入れたとしても、ベルから出るボリュームがバカみたいに大きくならないという感覚だ。
このポイントがビンテージマイヤーに非常に似ていて、他のネオビンテージ系マウスピースではMAXパワーで完全に抜けてしまい、フルパワーで楽器が鳴ってしまうマウスピースが多すぎて、ビバップ的なフィーリングが得られないのだ。
筆者が思う所のマイヤーを使うプレイヤーは割とハードブロウのタイプが多いことを考えると、しっかりパワーも入れて気持ち良い抵抗感で吹けるこのマーマーデュークのマウスピースは大歓迎だ。しかもそういう局面でもダークさを失わないということはなかなか難しいことだと思う。素材の響きもビンテージほどではないが現代の素材としては十分にダークで良好なのだと思う。
ピアニシモが若干固い音色なので、小さい音でビンテージマウスピースを楽しむ方々には不満かもしれないが、生のドラムやベースと勝負するライブ派の人には是非使っていただきたい。
ところで「ニューヨークマイヤーの復刻」というのは今や多くのマウスピース製作家が手掛けるアルトでも最も待ち望まれてるマウスピースなのだが、根源的な素材の違いなどもあり、ミクロ単位で完璧にコピーしたとしてもサウンドや反応が同じにはならないのが頭の痛い所だ。
様々な製作家がそれぞれのNYマイヤーを作っているのを吹いてみると、それぞれの解釈がNYマイヤーに対してあるものだと思うが、今の所筆者としては一番近くビンテージマイヤーを感じるマウスピースの一つだと思う。筆者の欲しい「マイヤーらしさ」がこのマウスピースにはあると思う。
プレアビリティはもちろん最上で、フラジオなどハイトーンも問題なく、この辺は「造りの良さ」が十分発揮できていると思う。
値段も海外のプレミアムヴィンテージ系マウスピースよりはずっとこなれていて、クオリティを考えると「分かる人」にはとてもお買得なマウスピースだと思う。是非機会があれば試していただきたい。
NYマイヤーなんて見た事も無い、という人にも「ビバップのサウンド」で吹きたいという人なら選んで間違いないだろう。筆者的には「元気に吹いてもダークさを保っている」という点で、「マイヤー+マーク6」が定番だった80年代フュージョンにも是非使ってみたい。
2011/06/20
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