クラブギグでは歌伴の際によくソプラノを使っていたのだが、音量的にもサウンド的にももっとジャマにならず、違う次元で歌に絡むことのできるフルートをたま〜〜〜に使っていた、しかし全く自信無し。こっそり吹いてた(笑)、ロック系のバンドでもバラードで「フルート吹いて」というのがあったので、初めて中古で買って使っていた楽器も調整し、初めて本腰を入れて毎日練習するようになった。それに加えて最近非常に上手なフルート奏者の演奏をまじかで聞く機会が多くあり、その黄金のフルートの音量の豊かさに圧倒され、「なんて音だ!これは技術もさることながら楽器も全然違う!」と思い至ったため、楽器の検証をしてみたくなったのだ。 |
プロ用フルートは手が出ない程高い。とはいえ一応一流プレイヤーの使用楽器を調べるのはムダではなかろう。 <ヒューバートロウズ>はムラマツ、<中川昌三氏>はパウエル、<デイブヴァレンタイン>はヤマハ・・・・・・・などなど、他にも、ミヤザワ、サンキョウ、アルタス、パール、ヘインズ、ハンミッヒ、ブランネン・・・・などサックス奏者には聞いたことも無いメーカーが続々出てくる。セルマーも作っているが使用しているという話はあまり聞かない。ビルエバンスとの共演で知られる<ジェレミースタルグ>などはダークでノイジーで、パワフルでクラシックとはかけ離れたサウンドでとてもよい。こういう音を目指したいね。(最近は氏も日本のサンキョウを使っているそうだが) |
とりあえず、ロクに吹けないワタクシがムラマツ、ミヤザワ、ヘインズ、パウエルなどの総銀製、高級フルートを吹いてみる、金メッキや、プラチナではないので、価格は50万〜100万ラインだ、鼻血出そう・・・、どれも筆者所有のヤマハエントリーモデルとは違って、失禁しそうな程美しい音がする。う〜む見かけは5万も100万もたいしてかわらんのだが、全く音のクオリティが違う、「この音だったらお金取れるだろう」という気がした。なお「金」「プラチナ」などの言葉がチラついてくると300万〜600万とかすでに筆者には理解不能な金額になる。 30〜50万クラスのおおまかな感想は。(それぞれ銀製) <ムラマツ>サックスでいえばヤナギサワのようで、しっかり感があるがウエットでちゃんとしたフォームできちんと鳴らせてやりたい、と思わせるサウンド。悪くはないけどこじんまりした感じ? <ヤマハ>サックス同様、基本的に鳴らし易く軽い吹き心地、高級モデルなんだからもうちょっと重量感あって・・・とやはり思う。あまり難がないのもヤマハらしい。 <パウエル>すごい!ハスキーで重く、ダークな音色。明るさの中のも影があってこれぞジャズ!コレ欲しい!と思ってしまった。 試奏後「パウエル幾らですか?」と訪ねると「コレはシグネチャーモデルといって非常にお買得です、50万です」パウエルは普通100万から〜らしいのでお買得といえばそうなのかもしれないが・・・・・、なおヘインズは無かったので吹いていない。良いらしいが。 正直この時はまだフルートもそんなに練習してなかったので、正直言うと安い洋白モデルとかの方が音が出しやすかった。ヘビーな楽器は最初はキツイだけなのねん。。。。 下の<ソナーレ>のところでも記述しているが、頭部管だけ「銀」よりも「本体も銀」のほうが、ボディ全体の振動が一体感を持ち、「鳴らし込む」ことが気持ちよく感じられた。しかし、この辺は20万〜40万ラインでサックスのプロモデルと同じくらいになってしまう。 |
筆者の周りにも数少ないながら、アマのフルート吹きが居るので、音色などの傾向や予算的な事を告げて、オススメを聞いてみる。すると皆同様に「パールがいいよ」という。ドラムのパールのイメージからいくと「明るくて、音がデカクて繊細ではない」というイメージなのだが、決めつけは良くないだろう、一度大阪のパールギャラリーに行ってみる事にした。サックスではメーカーのギャラリーが大阪にあるなんて到底考えられないが、この辺がフルートのポピュラリティーなのかと納得。 |
現在のワタシのヤマハが「定価7万クラスの洋白ボディ、銀メッキ」なのだが、サスティンがなく、若干貧相なサウンドだ。音が悪いのはワタシがヘタなせいだ!と思っていたが、試奏の結果、いいフルートではそれなりにいい音がする!というのが分かった。サブで使うからこそ楽器にも頼りたい・・・ 10〜20万クラスになると頭部管(サックスで言えばネック?)のみ純銀製になるというところだ。このあたりが現実的な購入ラインかな?と思う。このクラスだとヤマハ、サンキョウ、ミヤザワ、ムラマツ、パール、アルタスなどが「スチューデント」の位置付けで力を入れている。サックスでもお馴染みの<マルカート>とか<ジュピター>なんかもあるが、あまり一般的に楽器屋には置いていない、持ち替えとしては入り易いブランドなので、一度は吹いてはみておきたい。これらのメーカー(台湾製)でサックスと同じなのは「同じ値段でワンランク上」ということ、本体、頭部管が銀製のモデルが15万程度で買えてしまう、総銀でも30万だ。しかし、サックスで考えると同じ値段なら筆者は、ゴールドプレートのマルカートとラッカーのセルマーだったらセルマーを選ぶだろう。ブランド名だけではなく、やはり独自のサウンドを持っているメーカーの商品にはスペック以上の魅力を感じるものだ。 ちょっと吹いてみると<サンキョウ>は抵抗感もあって吹き込むと大音量で鳴るが、ちょっとヒステリックでうるさいと言えなくも無い。<アルタス>は軽くて曇った音、という感じであまり好みでは無かった。<ミヤザワ>もじっくり吹くには良さそうだが、あまりジャズの気配がしない。その中でも<パール>のハスキーさは吹いた瞬間分かるもので、ダークさとフルートらしい明るさのバランスがちょうどいい。正式に教育を受けてフルートをやるにはまた違ったチョイスもあるとは思うが、アマの持ち替えジャズフルートとしてはこのクラスでは<パール>のサウンドが最も適してるのではないか?と思われた。その他にパウエルの純銀製頭部管を使用して、ボディは台湾あたりで作っている<ソナーレ>という楽器もあるが、ボディと頭部管の響きにあまりに大きな差があって、楽器全体のバランスとしてはどうか?とも感じた、サウンドはなかなかだと思った。280馬力のトヨタマーク2みたいな「足周りがついていってないな」という印象。でもちょっと面白いので候補として残す。パウエルのサウンドはやはりインパクトがあるので。。。。(管体まで銀製のソナーレもあるそうだ、25万くらいなので、一応候補として吹いてみたい) このクラスのフルートでもそれなりに説得力のあるサウンドが出せそうなので、楽器屋が「最低限」というのが良く分かる。割と軽く鳴るし、初心者でも鳴らし易い。サンキョウなど、頭部管が「鳴る」タイプはボディまで銀製の方がバランスがいいらしいことも分かった。 |
筆者のヤマハYFL-211、現在では定価は7.5万ほどするそうで、決して安いとは思わないが、サウンド的には不満がある。しかし、吹き心地はあくまで軽く、全く音が出ないところから始めるにはこういう楽器の方がとっつき安いかもしれない。サックスでいえばYAS-34よりも入門者用とも言える。そんなにフルートに固執しなければ、音程も良く、十分使える楽器だ。一度サウンド楽器さんで調整してもらったが、サックスよりもフルートほうが息もれなどの影響は大きいそうで、やはり五万以下の楽器は耐久性、調整のガタつきなどサウンド以外の問題も多く、さけるべきなのだろう。仕上げは一応洋白製、銀メッキだが、もっと低価格のモノは銀メッキすらなく、ニッケルメッキなどになる。 |
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サックスと大きく異なるのはリングキーの存在。キーに穴が開いているので、きちんと押さえて吹かないと音が出ない。ちゃんとしたフォームが身につくとか、楽器の響きが感じ取れるなどで、ハイレベルを目指す人はリングキーを選択する事が多いようだが、練習量もあまりとれないサクソフォン奏者にとってはカバードキーを選択するのが妥当だろう。車のATとかMTみたいなもんかな?持ち替えのクセにリングキーを使いこなしていると一目置かれるかもしれないな(笑) よくカタログに載っているのが「Eメカ」3オクターブ目のハイEを出しやすくするためのキーらしい。サックスのF#キーみたいなもんか、、、なんだか無い方がいいと思ってしまう(笑)最初からついてるモデルもあるがオプションだと値段も2〜4万UPする。倍音もコントロールできんで何がサックス吹きぞ、ガオ〜! それからH足部管、ちょっと長めの足部管で最低音が通常のCからBまで出せるようになって、4〜5万ほどUP、これもあまり必要無いか?クラシックなどの場合は音域が指定されていて、これ使わないといけない状況もあるんでしょうが。管体が長く重くなるので、若干ダークになるかも知れない。 |
大阪は心斎橋にパールフルートのギャラリーがあるというので、訪ねてみた。こじんまりした事務所の受付ではTシャツにジーンズのラフなスタイルのとてもカワイイ女性が迎えてくれて、商品もいろいろ説明してもらい、コーヒーまで出していただいた。やはりサックス業界ではあまり考えられないことだ・・・・。頭部管だけ銀、頭部管と本体が銀、キーまで全部銀、の3種類を出してもらい、吹いてみる。う〜む、やはり値段はうそをつかない。総銀製のバランスのよさ、高品質なサウンドは凄く良い。しかし、これは予算オーバー、リファレンスが買えてしまうぞ!低音部の響きや抵抗感などを考えると、キー以外が銀製、というランクの楽器くらいは欲しい。これでも定価30万か〜・・・・う〜ん、やはり中古しかないか。なお、総銀などの上級モデルは三種類あるうちから自分好みの頭部管を選ぶ事ができる、サックスのように簡単にマウスピースを替えてサウンドを変えられないので、これは良い。しかし自分のスタイルが出来て無い現状では頭部管を選ぶのも難しい。初心者に「デュコフにしますか?セルマーにしますか?マイヤーにしますか?」と聞くようなもんで、なかなか自分で答えは出しにくい。 ちなみに75万ほどするハンドメイド以上のフルートシリーズはメカのオプションやメッキ、彫刻の別注、などできるのだが、一番感心したのは「管厚の指定」う〜むこれはスバラシイ!0、3mm〜0、5mmまで0、05mm刻みで指定できる。サックスでもこういうのやってくれ!! |
サックスでもサムフックやサムレストなど素材を金属製のモノに交換するとサウンドがまとまったり、反応が良くなる。総銀のフルートはそういう振動の一体感がある。逆説的に言えば管全体を振動させるだけの息のクオリティが必要なワケで初心者には苦しいとも言える。でも楽器全体を振動させる感触が味わえるのがやはり総銀の魅力、練習して息やフォームを整えて説得力のある音を出してみたい!と思わせる。しかし総銀は高い!!そうなると中古かマルカート、う〜んカドソンもフルート作ってるかー、サックスであのクオリティやったら輸入してくれたらいいのに、とも思ったりする。総銀のフルートまで使ってみっともない音は出せないので、自分への良いプレッシャーにもなるかもしれないな。などと思ってみたりもするのだった・・・ |
最終候補として残ったのは、新品の<パール><Dolce>PF-665E,PF-675。スペックは頭部管が銀と最低限の仕様だが、全体のサウンドが気に入った。<ソナーレ>の頭部管銀または管体まで銀のもの、「パウエル頭部管」というハッタリがいい。(ハッタリでなく本物です)サックスで例えるなら、アンティグアにセルマー純銀ネック付みたいな感じかな?それから奥の手で中古で20万くらいまでの、管体銀製のものか総銀製(メーカー問わず)でサウンドの気に入ったもの、ヤマハ、ムラマツは好みで無いのでパスしたい。・・・ということで少なくとも20万は覚悟しないといけないのか・・・・と多少げんなりしてきたのも事実だ。そんなおり、eBayをつらつら見ていた筆者はハタ!と気がつき、持った湯呑みをバッタリ落とし、小ひざ叩いてニッコリ笑うことになった・・ |
冷静になって考えてみると、使用頻度や自分の力量からどうしても20万クラスというのには二の足を踏んでしまう。それに現在のフルートのきらびやかな音色もなんだか求めているモノと違うような気がしてきた。ワタシの願いはただ一つ、「吹き応えのあるヘビーな楽器が欲しい」というものだった。そこで現れたのがセルマーの銀製(コインシルバーという純度の低い銀)の”シグネット”というモデルだ。eBayなんかで結構安く出ているし、なんたって一応銀製だ。ネットにもあまり情報は無かったが、シグネットにはクラリネットやらサックスなんかもあったようだ。この中古価格の異常な安さは、楽器の出来不出来よりもフルート業界におけるセルマーの知名度や信頼度の低さに起因すると読んだ筆者は、若干の期待を込めてとりあえず一つ入手してみる事にした。なんたってサックス界ではおなじみすぎるメーカーだしね。 |
そうこうしているうちに一週間ほどでそのフルートは届いた。写真ではあまり分からなかったが小キズ、小さなへこみはたくさんある、でもまあ許容範囲。ケースがカビ臭いので、別に入手しないといけないだろう、ラニヨンブルースがいいな・・・・などと思いながら、ケースから取り出して組み立てる「重い。」ホントに重い。なんなんだ、と思いながらちょっと吹いてみると「音が出ない!!」バカな・・・と佐藤浩市のようにつぶやきながら、一度バラしてみると、中にパッドセイバーのようなモノが取り出しにくい深さのところに入っていた。そりゃ鳴らんだろう・・・激安だったので、パッドも不調なものが多くて、いきなり調子よ鳴らすというワケにはいかなかった。が、やはり少々の吹き込みでは鳴りきってしまわない余裕が感じられる。ボディの重さと素材がやはり効いてるなぁ。まともに吹き比べると完全調整しているYFL-211の方がさすがによく鳴るし、バランスも良いので、一度セルマーを完全調整してから比べてみることにした。できればパールとかちょっと上級クラスのものとも比較してみたいと思いながら、カビのケースを虫干しする・・・・・ |
セルマーを調整して、ヤマハと比べてみる。家で吹くとヤマハも十分な音量で吹き易いのだが、やはりバンドではキツイ。エレクトリックなバンドだからなおさらだ。セルマーは本当に良いサウンド!とまではいかないが、十分重く、力強く吹いても答えてくれる。ガサツなダークさもバンドには結構合うようだ。 |
その後セルマーシグネットをずっと使い続けてる・・・ なかなかフルートは慣れたサックスとは違い、簡単な楽器ではなく苦労しているのだが、ひょんなことでフルートをライブに持って行くのを忘れてしまい、店のマスターの楽器を借りて吹く事になった。その楽器は某楽器店のオリジナルで1970年代のアマチュア向けなのだが、頭部管のみ純銀のものだった。なのでそれほど高級機とは言えないだろうが、非常に吹きやすかった。オーナーの奥サンが昔吹いてたと言う事で、ほとんど何十年も使われてないにもかかわらず・・・・ そこでひらめいたのは「この楽器のヘッドを付けてみたら?」ということだった。。。幸いにもこのメーカーはすでに無く、オークションではこの得体の知れないこのメーカーのジャンク品がゴロゴロしていた。そこでヘッドが大丈夫そうなものを格安で入手した。格安とは言ってもヘッドは純銀なのだ!! 早速合わせるも「あれ?」スポスポだ、サイズが合わない。。。そこで困った時のサウンド楽器で、ヘッドをむりむり広げてもらって、セルマーに合わせてもらった。大変吹きやすく銀の純度も上がって大満足!以上シグネットバージョンアップ計画でした。<2012/02> |
先入観無しにフルートに接して思ったのが、上記の感想だったのだが(8年程前の記事になる)、最近本当に銀とか金とかが良いのか?というのが疑問になって来た。確かに銀の響きはいいだろう。しかし、洋白や真鍮でできたフルートでサウンドを追求したモデルが無いだけじゃ無いのか?という疑問だ。 ブライトできらびやかな鳴り、ということだったら確かに貴金属の効果はあるだろう。しかし筆者はあまりそういうものは求めない。 願わくば真鍮または洋白製で、管厚が結構あって、設計がちゃんとしているものが欲しい。(初心者向けのただ鳴りやすいものではなく)世界のどこかにそういう楽器があるんじゃないかと密かに思っている。 「それ良い音ですね」と言われたら「コレ実は真鍮ですねん」とか言ってみたいわぁ〜ん(笑)。サックス奏者だから真鍮が好きなんです。 次に入手するとしたら、ダークでヘビーで吹き答えのある真鍮or洋白製フルートを探してみたい。 <2013/06> |