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CHEAP TRICK ものがたり

第二章
「 試 行 錯 誤 」

2002. 4.13

1979年は CHEAP TRICK にとってかがやかしい年となった
AT BUDOKAN 」 の予期せぬ成功により完成から半年遅れでリリースされた
DREAM POLICE 」 は前作 「 HEAVEN TIONIGHT 」 にひきつづき
プロデューサーに TOM WERMAN , ピアノとオルガンに JAI WINDING を起用し
オーケストラサウンドに磨きのかかったポップとロックの両面を持つアルバム

アルバムは全米 6位でプラチナアルバムとなりシングルカットされた
DREAM POLICE 」 「 VOICES 」 もそれぞれ26位と32位を記録した
ヒットの続いていた 「 AT BUDOKAN 」 とあわせてアルバムが300万枚以上
シングルが200万枚以上セールスされたのである
さらに 2度目の来日公演にはローリング・ストーン誌の記者が同行し
雑誌の表紙を飾るという快挙もなしとげている

タイトル曲 「 DREAM POLICE 」 はファーストアルバム制作時に選考からもれた曲で
SICK MAN OF EUROPE 時代のインストルメンタル曲 「 ULTRAMENTAL
をもとにした作品だ
第2の ビートルズ と呼ばれていたことを逆手にとってジョークにしたのか
THE HOUSE IS ROCKIN' 」 では 「 PLEASE PLEASE ME 」 のフレーズが
使用されている
ヘヴィな 「
GONNA RAISE HELL 」 はめずらしく 9分を超える作品で
「 VOICES 」 には
TOTO のギタリスト STEVE LUKATHAR がゲスト参加した
この曲ははじめトムのボーカル録りをしたが結局ロビンヴァージョンが採用された
そして 「
I KNOW WHAT I WANT 」 がトムの初ボーカル作品となっている

しかし個々の曲に関してはどれも素晴らしいのだがこまかなサウンドに凝っている分
アルバム全体の勢い・統一感としては 「 HEAVEN TONIGHT 」 のほうが上であろう
DREAM POLICE epic sony
produced by tom werman
  1. DREAM POLICE
  2. WAY OF THE WORLD
  3. THE HOUSE IS ROCKIN' (WITH DOMESTIC PROBLEMS)
  4. GONNA RAISE HELL
  5. I'LL BE WITH YOU TONIGHT
  6. VOICES
  7. WRITING ON THE WALL
  8. I KNOW WHAT I WANT
  9. NEED YOUR LOVE



翌1980年には JACK DOUGLAS プロデュースにより 1976年から1979年までの
音源を集めた 4曲入りの10インチ 「
FOUND ALL THE PARTS 」 を発表

THE BEATLES のカバー 「 DAY TRIPPER
( 実際は80年の音源でコンサートのアンコールでよく演奏していた ) と
のちに 「
BUDOKAN U 」 に収録された 「 CAN'T HOLD ON 」 はライブ音源
あとの 2曲はそれぞれ1976年 , 1979年の作品である
FOUND ALL THE PARTS  (10") epic sony
produced by jack douglas
  1. DAY TRIPPER
  2. CAN'T HOLD ON
  3. GOOD GIRL
  4. TAKE ME I'M YOURS


ALL SHOOK UP 」 はビートルズのプロデュースも行い音楽知識豊富な
GEORGE MARTIN の元でいろいろな実験に手を出した作品である
( GEORGE MARTIN はマーケットの主流がレコードセールスより楽譜販売や
ラジオでの演奏に重点をおいていた 楽曲主体 の1950年代に EMI の社員として
レコード化できそうな楽曲を求めて ミュージカルや芝居をよく見に行ったそうだ
しかしビートルズがそんな楽曲をカバーし独自にアレンジするという
業界の流れに反する行動をとるのを否定することもなく
伝統に変化を盛り込むことによりポップスの枠を広げてしまうという
冒険的かつ革新的な才能を持っていた人である )

アルバムはゴールドとなったが24位
STOP THIS GAME 」 のシングルも48位で前作のようにはヒットしなかった
WORLD'S GREATEST LOVER 」 のような名曲もあるのだが
過去の CHEAP TRICK とは違いすぎる音であった

レコーディングセッションのあいだには
EVERYTHING WORKS IF YOU LET IT 」 ( 44位 ) が
映画 「 Roadie 」 のサウンドトラックのために制作された
( 映画のプロデューサーは 「
ON TOP OF THE WORLD 」 を使いたがって
いたのだがリックがそれをもとにして30分で曲を書き上げ使用されることになった )

アルバム完成から発表までの間には
マジソン・スクエア・ガーデンでのコンサートが実現されている ( 1980年 5月 )
ALL SHOOK UP epic sony
produced by george martin
  1. STOP THIS GAME
  2. JUST GOT BACK
  3. BABY LOVES TO ROCK
  4. CAN'T STOP IT BUT I'M GONNA TRY
  5. WORLD'S GREATEST LOVER
  6. HIGH PRIEST OF RHYTHMIC NOISE
  7. LOVE COMES A-TUMBLIN' DOWN
  8. I LOVE YOU HONEY BUT I HATE YOUR FRIENDS
  9. GO FOR THE THROAT (USE YOUR OWN IMAGINATION)
10. WHO D' KING


ところが、このあと事件がおきるのである

リックとの音楽的意見のくいちがいを理由にベースのトムが脱退してしまう
JAPAN JAM 2 のために来日したステージには
トム の代わりに PETE COMITA というベーシストが出演していた

さらに1981年の来日公演を中止してしまいレコード会社とのトラブルになるなど
CHEAP TRICK の活動情報は日本に届きにくくなってしまった

脱退したトムのほうは
TOM PETERSON & ANOTHER LANGUAGE ( モデル・シチズン )
( トム と 彼の妻 DAGMER , セッションギタリストの JEFFREY ROLLINGS
元NAZZのドラム THOM MOONEY がメンバーで1984年にミニ・アルバム発表
収録曲は
1. LOSE YOUR MIND
2. ALL I NEED YOU
3. MY CAR
4. LIVING IN ANOTHER WORLD
5. RAINY DAY
である )
というグループを結成し1982年に SUPER ROCK SESSION vol.1 出演のため
単独来日をしたりしている
そして1987年ころには PETE COMITA , ジョナ・アレン , ロン・モンロー とともに
SICK MAN OF EUROPE として活動

トムが抜けた CHEAP TRICK では
リックとバニーが JOHN LENNON の 「
DOUBLE FANTASY 」 ( 1980年11月 )
の中の 「
I'M LOSING YOU 」 に参加したがアルバムには収録されず
1998年になってようやく 「
WONSAPONATIME 」 という JOHN LENNON の
アンソロジー盤で発表された



ベーシストの トム・ピーターソンが脱退し PETE COMITA をはさんで
JON BRANT に変わった後の1982年に 「
ONE ON ONE 」 は発表された
プロデュースは
QUEENCARS をてがけた ROY THOMAS BAKER

ポップで洗練された曲がつまり全米39位となったプラチナアルバムである
CHEAP TRICK らしい曲も復活しているがドラムの音があまり良くない
本来のメンバーでやっていたら1990年の 「
BUSTED 」 のような音になってた
ような気がするのだが過渡期的存在の作品だろう

名曲 「
IF YOU WANT MY LOVE 」 は
全米では45位だったがオーストラリアで 1位にかがやいている
現在この曲はさらに良くなった alternate version で演奏されることが多い
SHE'S TIGHT 」 は65位
SATURDAY AT MIDNIGHT 」 はいかにも80年代風のダンス・ミュージック
ONE ON ONE epic sony
produced by thomas baker
  1. I WANT YOU
  2. ONE ON ONE
  3. IF YOU WANT MY LOVE
  4. OO LA LA LA
  5. LOOKIN' OUT FOR NUMBER ONE
  6. SHE'S TIGHT
  7. TIME IS RUNNIN'
  8. SATURDAY AT MIDNIGHT
  9. LOVE'S GOT A HOLD ON ME
10. I WANT BE MAN
11. FOUR LETTER WORD



1983年の 「 NEXT POSITION PLEASE 」 のプロデューサーは
60年代からのつきあいである TODD RUNDGREN に変わる
リックは CHEAP TRICK 結成前に彼の脱退した
NAZZ を再編成したりしている

ポップ感覚に彩られたとっても良いアルバムなのだが全米61位止まりなうえ
レコード会社からの評価も低かったらしい
TWISTED HEART 」 と 「 DON'T HIT ME WITH LOVE 」 という曲が
会社の命令で排除され、代わりに 「
DANCIN' THE NIGHT AWAY 」 を
強制的に入れさせられたらしい (
THE MOTORS のカバー曲 )

このアルバムはヒット記録こそ無いが 聴いておくべき作品 といえるだろう

NEXT POSITION PLEASE epic sony
produced by todd rundgren
  1. I CAN'T TAKE IT
  2. BORDERLINE
  3. I DON'T LOVE HERE ANYMORE
  4. NEXT POSITION PLEASE
  5. YOUNGER GIRLS
  6. DANCING THE NIGHT AWAY
  7. YOU TALK TOO MUCH
  8. 3-D
  9. YOU SAY JUMP
10. Y.O.Y.O.Y
11. WON'T TAKE NO FOR AN ANSWER
12. HEAVEN'S FALLING
13. INVADERS OF THE HEART
14. DON'T MAKE OUR LOVE A CRIME



アルバム以外にもサウンド・トラックへの曲の提供も活発に行っていた彼らの
次の作品は1985年の 「
STANDING ON THE EDGE 」 で
ファースト・アルバムのプロデューサー JACK DOUGLAS と再び作業をおこなう

「 ALL SHOOK UP 」 , 「 ONE ON ONE 」 , 「 NEXT POSITION PLEASE 」 の
売上が低下していたことによりレコード会社との関係が悪化していた彼らは
ジャックによって本来のパワーが取り戻されることを期待していたのだが
彼自身のトラブルにより制作は TONY PLATT に引き継がれる

記録としては35位になり 「
TONIGHT IT'S YOU 」 は44位だった
STANDING ON THE EDGE epic sony
produced by jack douglas
  1. LITTLE SISTER
  2. TONIGHT IT'S YOU
  3. SHE'S GOT MOTION
  4. LOVE COMES
  5. HOW ABOUT YOU
  6. STANDING ON THE EDGE
  7. THIS TIME AROUND
  8. ROCK ALL NIGHT
  9. COVER GIRL
10. WILD WILD WOMEN



1986年には大ヒット映画 「 TOP GUN 」 のサウンド・トラックに
MIGHTY WINGS 」 で参加しストレートなロックンロールを披露

つづけて前作のプロデュースを途中からひきついだ TONY PLATT による作品
THE DOCTOR 」 を発表するが、こちらのほうは PAUL KLINGBERG
TOD HOWARTH ( TED NUGENT のほか、PETE COMITA , JON BRANT と
VALENTINO というグループで活動していたらしい ) というキーボーディストが
参加したコンピューター・プログラミングを使用したエレクトリカルサウンドが特徴

タイトル曲 「 THE DOCTOR 」 は
MOTLEY CRUE の 「 DR.FEELGOOD 」 に影響を与えており
KISS ME RED 」 は
外部のライター BILLY STEINBERGTOM KELLY による作品
MONEY IS THE ROUTE OF ALL FUN 」 という曲に
ROY WOOD がボーカルとして参加したがアルバムには収録されず
後に出たベスト盤の 「
SEX , AMERICA , CHEAP TRICK 」 に収録された
THE DOCTOR epic sony
produced by tony platt
  1. IT'S UP TO YOU
  2. REARVIEW MIRROR ROMANCE
  3. THE DOCTOR
  4. ARE YOU LONELY TONIGHT
  5. NAME OF THE GAME
  6. KISS ME RED
  7. TAKE ME TO THE TOP
  8. GOOD GIRLS GO TO HEAVEN (BAD GIRLS GO EVERYWHERE)
  9. MAN-U-LIP-U-LATOR
10. IT'S ONLY LOVE


レコードがミキシングされている間にバニーは JON BRANT とともに
BUN . E . CARLOS EXPERIENCE としてギグをおこなったり
XENO とミルウォーキーでチャリティイベントに参加したりしていたらしい

ロビンも REBBIE JACKSON とシングルを発表したり
ソロとして 映画 「 OVER THE TOP 」 のサウンド・トラックに
IN THIS COUNTRY 」 を提供したりした ( 1987年 )
( この曲は日本で F1 が流行したころテーマソングに使われました )

しかしこれらの活動は CHEAP TRICK の活動停止を意味したものではなく
事実1988年には トム の復帰という話題を持って彼らは第1線に返り咲くのである

低迷期ともよばれる80年代の作品はさまざまな実験がこころみられた時期でもあり
トラブルにみまわれながらもコンスタントにアルバムを制作し、活動を維持してきた
彼らは 永遠のアメリカン・ロック・バンド としてさらなる飛躍をとげるのである