☆修学旅行☆
少なくとも中学生時代までは
男子、そう白組だったミーやん。
修学旅行なんかはどうしてたの?
そう、頭の痛いときなんですよね。
どうせ、夜はけーりんがいる部屋に行けばイイので、
昼間の行動だけ、それも小学生の時の修学旅行は一泊…

甘く考えていたので、ミーやんはクラスで一番マジメな
イイオさんの班に入った。
イイオさんはカワゴシ君とまでは行かないが、かなりの
マジメ人間である。
朝礼かなんかの集会の時、体育館の壇上で同和の作文を涙を流しながら読み上げている姿に恐怖は覚えていたものだ。
ま、ほとんどの小学生からすればどうでもいいことである。
同和作文なんて、どう書いてイイのかわからないのが普通の
小学生である。

・・・ミーやんの小学校の修学旅行先は広島、である。
イイオさんの大好きな世界である。
貞子が、とか、原爆ドームが、とか言っていたが、
いきなり、
「千羽鶴を
折りたい」
などと学級会で発言した。
それに拍手を持ってカワゴシ君が賛成していたそうだが、
(カワゴシ君は何故かいつも相手の意見に同調する時は拍手をしていた…)
その日、ミーやんは馬鹿に似合わず風邪を引いており、
珍しく欠席していた。
「お前、聞いたか?千羽鶴、おらなアカンみたいや」
「は???」
どちらかといえば居なくてイイ二人の意見になど、誰も同調しなかった。
けーりんなど、帰国子女のため、
「センバヅルって何??」
などミーやんにたずねてくる。
「せんだみつおやないで」
クラスは爆笑。

カワゴシ君は意外にブキッチョだ。
最初はイイオさんと二人で折っていたものの、
スピードと精度がかなり劣るカワゴシ君との共同作業は
イイオさんにとって苦痛であったに違いない。
モチロン、イイオさんのお母様も教育ママゴン様である。
週に4日は塾に行っていたはずだ。
思ったより増えない千羽鶴。
思ったより、出発日が早く近づいてくる。
それでもなんとか600羽程度折った。
でも、あと3日で400羽は無理だ。
そのイライラの矛先は全く協力しないクラスメートに
向けられた。
今から考えると彼女は典型的ヒステリー女だったのだろう。
出発する週の月曜日の朝の会で
案の定彼女は号泣しながら、貞子さんの悲劇的な人生、
平和の大切さを訴えて、千羽鶴を折ることを訴えつづける。
バン!と机を叩いて、
それはすごい形相だった。
「他の小学校はみんなやってるのよ!
ウチラだけやらないのはハズカシイんよ。」
何しろ、市内で一番の進学塾に通っている
(そこの進学塾は各小学校のTOPクラスが集まることで
有名だった。)イイオさんが言うには今度の修学旅行、
広島に行く学校で千羽鶴持っていかない小学校はウチの学校
くらい、だとのことだ。

「あ、ほんなことなら、明日からまた休んでウチ、ツル折るよ。」
全く聞き覚えのない声が後ろからしてきた。
何故か小学校3年くらいから
運動会と遠足と、学力テスト
しか学校に来ない女、
として有名なヤマシタさんである。
美人としても有名な彼女は、今度の修学旅行では
イイオ班に入っていたはずだ。
後々私の運命を大きく変えることになる彼女は、
当時、学校で誰もしてなかったソバージュパーマの髪を揺らせながら
「大丈夫だよ、イイオさん。ウチ、二人、ばあちゃんいるし。
三人で折ればあと、300羽くらい、いくよ。」
「じゃ、お前、また、学校休むの?」
まっちゃんの言葉に彼女はうなづいた。
「だって、今日、修学旅行の前にどうしても聞かなきゃ行けない
お話しがあるって、ノグチ先生が。
きっと、生理の話、だろうケドね。」
そう言えば、今日の五時間目、体育館でなんかお話が
あるらしい。ミーやんは、きっと、喫煙者の多いこの学年のこと、
毎度のように起こる飲酒騒ぎなどがないように、
強面教師アベなどが主にウチら問題児を脅し上げる集会なのかな?とかと考えていた。

「ああ、そうやな、ワシ、散らかし魔やから、整理整頓の話しなんヤロ。」
「ほやろなぁ。まっちゃん、そういやぁ、コナイダの休みの時、
机覗いたらカビはえたパン
あったで。余ったら池の鯉にでも
やれよ。また、ノグチおこっとったよ。」
「ほななん、カラスダニなんかの机の方がすごいやん、
アイツの机からゴキブリの幼虫
が干からびたのが、出てきた
らしいで。」
「アイツ、身体にも虫飼ってるんやろ、ノリティ言よったで、
コキールになんかすごいもの
が貼りついとったらしいやん。
保健所の人間ビビってた
らしいで。」
「オウェ、ゲロはきそ〜でもあいつ、2年の時にはたしか虱たかっとったよなぁ。」
生理→整理整頓の話しから、隣のクラス、いや、学年一のいじめられっ子の話題に移って、まっちゃんとミーやんだけで笑っていた。
「あ、もしかして・・・・」
けーりんが言った。
「お前ら、生理・・・って知らんの?」
「だから、整理整頓の整理、ちゃうの?」
異口同音に答える二人をアゼンとした表情で見つめる
イイオさん、けーりん、ヤマシタさん。

「・・・ま、五時間目に先生の話聞けや。」
けーりんのことばに???という頭で二人はうなづいた。

五時間目。男女は別々に分けられた。
外がはれていたので、男子は運動場でお話があるという。
「ミーやんとマツモトさんは体育館ね。」
いつも、男子と運命を共にしている二人の女子らしき人物に
特にノグチ先生が声をかけた。マツモトさんは、
隣のクラスの子で、ミーやんとは違って、かなりの武道派だ。
ダンプ松本を尊敬し、夢はプロレスラーになること。
もちろん、マツモトさんと、ミーやんは仲がよかった。
「なんやろな。さっき、ウチのクラスのヤマシタって子、おるヤロ。そいつが”せいり”の話や、ちゅーとったんやけど、マツモッチャン、”せいり”ってしっとる?」
「・・・なんか、月に一回、ケツから血が出るらしいで。」
「は?それ、痔やろ。いぼ痔とか、切れ痔とか。土橋の病院、
ええらしいで、ウチのおじさん、そこに入院して、手術したら
綺麗さっぱり治ったみたいやで。」
「それ、どこの病院?ウチの親父も痔やねんや。
ヒ●ヤ大黒堂は効かんみたいやな。
あ…そうや、男子と女子とで分けたのも、男子の方が痔が多いんで、分けたんやろか?」
「言われてみれば、痔ってオッサンばっかりなってる気がする
けどな。なんか、カラスダニとか痔主
(痔の人の事をウチのオジさんがこう言っていた。)っぽいよな?」

お話の内容は”痔”ではなかった。
なんか女の子は月に一回、血が出る週があるらしい。
男の子はチンチンから白い液がでるらしい。
それを聞いてピン、とはきたが、子供が生まれることに関係するらしいような?
ミーやん、結構それまでにH関係の画像をみてきたが、
そう言うシーンは当時の道に落ちてる程度のグラビア
とか、ポルノ映画のビラ程度では知ることは
できなかった。

「わかりましたか?」
との保健の先生の言葉に、
「うん、わかった。でも、ウチのパンツには、時々ウ〇コついとるくらいやからまだ安心やな。」
堂々、こう言って、女子の爆笑を買ったミーやん。
当時、120センチ台のミーやんには知ったことではなかった。
生理があるという、
150センチ、40キロ以上の人にもらった
ナプキンとやらを押しつけてミーやんは帰っていった。
当時、クラスの男子の話題では、
生理よりもブラジャー問題の方が熱かった。
体育の時間の揺れる胸元や太もも
に男子の視線はいっていたようだ。
「あいつはブラジャーつけてるやろ?」
「2重飛び飛んで欲しいよな。」
当時のミーやんは腹は出ているが、
今と同じくムネもフトモモもない、
典型的な幼児体型だった。なにはともあれ、今より確実に
男のコ、であったことは確かだ。

そうこう言って、なんとかヤマシタ一族の
力添えで千羽鶴は間に合って、
イイオさん、ご機嫌であった。
ミーやんは宮島の鹿と写真を撮り、
もみじ饅頭を買い、
まっちゃんと
一人では食いきれない
BIGサイズをむさぼって
いるところを先生たちにカメラに納められ、
個人的には宮島、楽しかったね。
ラッコ。可愛かったし。
修学旅行の夜はいつものお約束のエピソード、カラスダニが
酒を始めて飲んだらしく、
一人でフルチンになって暴れて
強面教師アベに竹刀で
小突き回されたこと…くらいの
お話だった。
ミーやんはバスの中で
カラオケタイムに、いつものごとくゴダイゴを熱唱し、
モンキーマジックで、
「アチョー」
と言ったりして、バスガイドさんをすっかりファンにしてしまい、
住所を交換した。
けーりんなどはうらやましかったらしく、
未だにその話をすることがある。
「お前、生まれる姓がちごてるで。」
今はそうは絶対に思わないが、当時はマジでそこのところ、
悩んでいた。
そのイイオさん、中学校入学の際は
市内でTOPの進学校に転居してまで入学した。
「どーやらお母様がワシらのような下等生物といっしょにしたないらしいで。」
との噂だったが、そのお母様の心配は
見事に的中する。
後から聞いたことだが、”超”問題児の集団を迎え撃つために
ミーやんが進学する予定の中学校では、1年前から
勉学を教えるよりも規則を叩きこむための暴力教師を
各中学から呼び寄せていたようだ。


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