☆吹き矢事件☆
学研の科学。
あったよね。家で、オカンが強制的に取っていたのだが、もう、5年生の頃には興味も何も、無い。
来ても、未開封。
ところが、小学校6年生のときにブッシュマンのニカウさん特集みたいなのがあって、今からでは考えられないが、”吹き矢”が付録として、ついてあった。

こんな物をgetしてしまったら、女のこなのに、自習時間”悪い人”総合ランキングTOPをあらそう、ミーやん魂が燃えないわけが無い。
非常に使えるおもちゃだ。
直感した。
同じことを考えた男がいる。
けーりん。
自習時間”悪い人”総合ランキングTOP3には必ず入るクラスのワルガキである。
我々二人は当時から机の中に教科書置き本してたので、ランドセルの中は空っぽ状態。集団登校の班長の旗だとか、ゲームとか、他には何入ってただろう。ついでに言えば我々二人はかなりのチビであったので、クラスの中では珍しく、最後までランドセル党だった。
また、運悪く、
というか、運命である。
その日はノグチ先生、朝から研修とかで1日自習!!!!!
「むちゃラッキー!」
「よかったなぁ」
早速,ミーやんとけーりん、勝手に工作の時間である。出来あがった時に隣のクラスの,児童会長のノリティに見せに行く。ノグチ先生がいないと知ったノリティはウチのクラスまで遊びにきた。
「ええやろ。ニカウさんの吹き矢や。」
「これ、ええなぁ。ワシ、春に学研の科学断ったやって。
勿体無い事したわ。」
我々の人間関係において,ノリティはいつも一番である。サッカーがうまくて、性格もよくて、ギャクもオモシロイ。女の子の人気NO.1であり、背も高く、スーマリも学校で一番にクリア。何をしても絵になるところは、さすがである。
「ワシらのリーダーはノリティや。これで決まりよ。」
結局自分らのクラスではえらそうな口を叩きながら,ノリティの前では単なるパシリのミーやんとけーりんである。キリンをねらうニカウさんのまねをしながらノリティは、
ふぅ。
ノリティの一吹きで吹き矢は5m近く飛んだ。そんなに飛ぶとは思わなかった。そこにいたのが…
カワゴシ君だった。
見事に命中してしまった。

嫌われ者のカワゴシ君。廃品回収のときは必ず、何度も消しゴムで消して、かきなおした問題集を山のように自転車に積んでくる。その割にはクラスのTOPはサトウさんにいつも取られ、悔しがっている様子がクラス中の失笑を買っていた。
「おいおい、今日もまたサトウに負けて、カワゴシ手、震えとったで。」てな感じ。クラスのみんなで遊びに行くときも、いつも、七五三で着るようなスーツを着て、(モチロン下は短パン)いつもネクタイを締めている。恐らく、児童会の会長を狙っていたと思われるが、当たり前だが、ノリティにもっていかれた。
(唯一、自分で立候補したのにもかかわらず、書記にも選ばれず、半なきになっていたのがおもしろすぎた。)
3学期の学級委員はいつも彼。自分のことを
「ワシ」
と呼ぶ、オヤジ小学生しかいないミーやんの田舎で自分のことを
「私」(わたくし)といい、
おかあさまをママ、と呼び、いつもチクリ役。いつも先生の威光を背にミーやん,けーりん、まっちゃん(この三人が自習時間”悪い人”総合ランキングTOP3常連さんである。)の名前の下に正の字を10個も20個もつけやがる。それを見た先生はウチら3人に反省文をかかせる。
まるであのちびまる子ちゃんにでてくるマルオスエオのような顔をしてる。(最初、あの漫画、見た時、「ウォオオォオォォ!これ、カワゴシ君やんか!」と、中学校中騒然となった。)
別に制服のお腹のところに当たっただけで,吹き矢の矢の部分は紙であったのでそんなに痛くなかったと思うが,相手がノリティであったことがカワゴシ君のプライドを大きく傷つけたと思われる。半泣きになって外へ飛び出した。それきり、教室には帰ってこなかった。
何時間かたって、お昼休み。
カワゴシ君のママの大登場である。たった一人でクラスに入ってきた。服装は黒の上下のニットスーツだったはずだ。
見るたびに思っていたが、超美人である。息子とは似ても似つかない。そういえば、カワゴシ君って東京から転勤してきた人の息子なんだよね。ウチのオカンとは、食ってる物が違うと思うほど、美しい人。オカンではなく、さすがはママと呼ばせるだけある。
参観日のオカンたちの中のスターはまさしく彼女である。ノリティも「あの人、夏目雅子に似てるよなぁ」「なんで夏目雅子からカワゴシ君なんやろな。」
ガキどもの頭の中に東京への憧れを始めて植え付けた、それがカワゴシ君のママだったのだ。その夏目雅子が笑顔でウチラ3人に近づいてきた。
「元気?」
「は、ふぁい」
うなずくばかりの我々に彼女はこういった。
「ウチの子に意地悪しないでね。先生には黙っておいてあげるから。ねっ。」
「あ、アリガトウございます。」
彼女が去った時、我々の手には彼女お手製と思われる、クッキーの袋が握られていた。後に、けーりんが言ったことだが、それをランドセルに詰めながら、何故か、カワゴシ君をうらやましいと思ったということだ。
所が、である。
5時間目。強面教師、アベが竹刀を持って教室に入ってきた。後ろにいるのは、ああ、カワゴシ君。アベに耳たぶをつかまれて引きづられてきたノリティの舌打ちがすべてを物語っていた。また、カワゴシ君、チクリやがった。
「吹き矢をだせ!」
ケツを10回づつ竹刀で叩かれた後、吹き矢を没収され、ふと、カワゴシ君の顔をみた。彼の目はミーやんの机の上に注がれていた。いつも見なれているに違いないママお手製のクッキーの袋。
昼休みの教室で、彼は何があったか、ある程度、わかったに違いない。彼は、もう1度、教室を飛び出した。
もう2度と、ウチの小学校にはくることは無かった。
2週間後、彼は、ママと一緒に東京に帰っていった。
彼とママの関係がどんな物であったかはミーやんもわからない。
ただ、高校生の時に例の強面教師、アベに会ったというノリティの話では、あの吹き矢事件の時、カワゴシ君が涙ながらに5時間目の授業のチャイムが鳴ると同時に教室に飛び込んできて、ノリティに吹き矢を当てられた。とか言ってたようだ。その際、ママからの電話も無かったそうだし、ママが学校にきていたことも知らなかったらしい。私の周りで始めてみる、イキな大人だった。ああいう人に甘やかされたら、カワゴシ君みたいになるのか?
それにしても、あのママから何で何でカワゴシ君?いまだに謎だったりする。
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