■酸性の時■

まるで制御を知らないみたいだ

彼は命を燃焼し続ける

絶望の暗い沼でしか生きられない生き物のように

燃えるような真っ赤な目

いつか訪れる致命的な破綻を

まるで心待ちにしているように

ただただ消費することにのみ時間を費やす

神様

神様

何処へ行けば楽園に通じるのか

しかし神はおわせず

彼を導くものはない

岩が潮の侵食を受けるように

ただただ緩やかに酸性の何かに心を削られていく



■聖なるかな■

ぼくの身体から咲く花

真っ白な誘惑

苺の香り

絶望しそうな時は聖書を読む

神様が助けてくれるとか

そういう事は信じていないけれど

並べられた言葉に宿る理念が

敬虔な気持ちになる誰かが

どこかに存在していると思うと

世界はまた美しさを取り戻すんだ



■冬眠■

やけに悲観的で
追い詰められているような気分になる
楽しい事もあったはずなのに
ただ冷え冷えとしていて
まるで胸の中に暗い穴があって
喜びも勇気もそこからこぼれ落ちてしまうみたいだ

君がとても遠くて
ぼくは何かが思い出せないまま
空虚な心を傾けて必死に何かを出そうとしている
それからぼくの胸の中が
冷たいもので一杯になってしまわないように
最後の温もりが失われて凍えてしまわないように
ゆっくりと目を閉じた



■賛美歌■

ぼくたちの喜び

進み抜くこと

翼あるもののように

軽々と現実を越えて

思考の平野を

想像の彼方を

進み抜くこと

石の雨や恐ろしいハンターたちの銃弾も

太陽まで射抜けないように

誰も遮る事はできない

ぼくたちの輝く平野