■新世界■

ある日突然世界が変わる

自分の感覚に驚くんだ
まったく知らない所に来てしまったような気分で
君をまったく知らない人みたいに感じて
その時はぎこちなく微笑うかもしれない
まるで他人にするみたいに
親愛なる人
まるで君が知らない人のように思える時
よそよそしく視線を逸らすかもしれない
他人にそうするみたいにね

実際の所、僕は戸惑うばかりだけど
だって君が知らない人と同じように思えるなんて
そんなの信じられないよ
こんなに悲しくなったのは初めてだ



■変換と再生■

ランプをいくつ集めても
遥か向こうは照らせない
だから朝が来るのを待っていたけど
光にさらされた何もかもが
素晴らしいってわけにはいかなかった

何もかもを知っている
でも言葉にすると情報は劣化するんだ
細かいところは切り落とされて
大事な事から抜け落ちていく
本当の事はいつだって繊細なんだ

僕は知ってる
それは言葉には出来ないんだ
でもこの世の中で大事な事なんて
そう多くないだろう
言葉にしなくても 君も知ってる

キラキラしたものを探しているんだ
僕の中に留まることもなく
通り抜けた事さえ気付かなかった
そんな事にならないように



■眠る病■

陰鬱なメロディー
鈍色の色彩
神様、僕を眠らせないで
やらなきゃいけない事があるような気がする
それが何かわからないけど

天井から憂鬱が降ってくる
暗闇がすべてをだいなしにしている
大きく口を開けた闇に食べられてしまう前に
持って行ける光を見つけるには
僕の意識は朦朧としすぎている
あぁ目を閉じてしまうわけにはいかない
だけど何のために?

耳もとでは悪魔が囁いている
「お前の目蓋にキスさせろ」って
だけどそのためには目を閉じなくちゃいけない
僕はもう、祈る言葉さえ失って
意識を手放す寸前だけど
まだ眠るには早すぎる
眠るには早すぎるんだ



■志向■

ふいに灯りが消えた時
僕らは何を頼れば良いだろう
言葉にすることで制限される時
何かを見ようとしているのに
世界は端から失われていく

それでも僕は選ばずにいられない
自分がしでかしたことの結果を
無自覚のまま通り過ぎてしまわないように
たとえ最後は手探りになってしまっても

おそらく生きている限りずっと
僕は無意味な数字を数え上げる
自分の座標をはじき出すために



■夜の通り道■

真夜中に目がさめてしまった
水を一杯
まだ朝じゃない
朝じゃない

暗闇は君を押し潰したりしない
本当だよ
ゆっくりと浸透して
過ぎ去っていくだけだ
朝の訪れと同時に
その姿を消すよ

僕の中にも闇
今は過ぎ去るのを待ってる
夜は僕を押し潰したりしない
けれど中に浸透していく
真夜中に目が慣れてしまいそうだ
通過していく気配は感じられない
だけど朝になると残らず消えてるんだ

少しの肌寒さを我慢すればいい
僕らが取り込まれる事は無い
暗闇は君の中にも
水を飲みなよ
朝はもうすぐだ



■緑色の垣根■

夜明けの鏡の中の青白い虚ろ
これと同じものを君も見ている
そう思うとゾッとする
僕ははじめて後悔したんだ
君にはわからないだろうけど
君に会いたいよ

苛まれている
静けさや平穏が
僕を空っぽにしていくんだ
君へ至る道は
緑の垣根が隔てている
僕にはそれが越えられない
けれど君には見えない垣根だ

君の影を怖がっている
君の歌がどんな内容だったか僕は知らない
僕は影を怖がっている
君に会いたいよ



■残影世界■

君の夢を見た
夢の中で君は僕を探していたよ
起きている時はいつも
僕が君を探していたから
少しだけ嬉しかった

君に見つからないように列車に乗った
夢の中で
もう会えないって知っていたから
お別れの言葉も言ったよ

君が僕を探していて嬉しかったんだ
いつも夢中だったのは僕の方だったから
今も夢中かもしれない
でももう行かなくちゃ
発車のベルが鳴っているから

君は残念に思ってくれるだろうか?
君に見つからないように列車に乗った
夢を見た



■痛みと風■

走っている
君の中には鏡の破片
みんな同じだって思いたいけど
競争とか闘争心とか
そういうものが僕には足りない
わかってるよ

本当に痛いのはイヤなんだ
そんなに大事な事なのかな
ねえ?

僕らはお互いを映している
君の誇りを棄ててしまう所なんて見たくないよ
だから僕は痛みを受け止めるしかなかった
なんでもないふりをするよ
どうか支配や保護は望まないで
無関係に生きている君が見たい
だから僕は痛みを受け入れるしかなかった
なんでもないふりをするんだ

君は僕の憧れるものに似ていた
例えば、冬の冷たく乾いた空や
夜明けの静かな色をした空気に
誰も奪えやしない本当の自由や
克服した時の孤独に