■陰の落下■

キミの声が聞こえる

ああでも遅すぎた

僕の身体は落下中

振り向くのは もう厭なんだ

助けなんて

救いの言葉さえもう

要らないから

あの空へ解けて消えるために

忘れて忘れて忘れて

何一つ残らなくていい

ああこれでやっと

僕は幸せだ



■足りないもの■

全てに呪いを吐いて

そこにある片っ端から火を放ちたい

それでも何も終わらないだろう

だから本当はそんな事も

玩具を取り合う子供達の

小さな抵抗ほどにも

本気で思ってなんかいない

与えられる箱舟なんて無い

とっくに見放された

どこかが足りない僕達の

約束された不安定

体中軋んでくり返す

毎日を まるで夢のように生きている



■システム■

暗がりを見つめる事ができるだろうか
目を逸らしたいものや
悲痛な出来事を
無理に見つめる事が必要だろうか

自分にどうしようもない事は
神様に祈る
神様、あの人を助けてあげて
環境に余裕がない
ヒステリックな仕種で
脆弱な腕はへし折られて
顧みられる事もなくなるだろう

何ごともなく
僕らがくぐり抜けてきたあの壁に
ひっかっかってる誰かがいる
僕らが安心しきって眠っている間にも
彼らは必死にもがき続けているだろう

僕のせいじゃない
僕のせいじゃない
それは始めから終わりまで
僕の問題じゃないんだ
なのに何故
こんなに胸は苦しいのだろう



■蔓草■

すきだったもの
飛び立った鳥の後に舞い散る
白い羽根のような幻
繰り返して
繰り返して
繰り返しては
失われていくだけの何かを前にして
君が笑った

まるで
むき出しの棘のようだと思った

暗がりの中
明かりをともすふりをした
地を這う蔓草が
あるはずの無い日射しを求めて
空に向かおうとするように
思ってもない残酷な言葉のみが
私を突き動かしている

あの白い白い羽根はどこから来るのだろう



■冷たい床■

いずれなくなると信じてた

こわいものは

どこに潜んでいたのか

床下から這い出すよう溢れて

部屋に満ちていく

黒、白、水色、また黒、黒、、、

ループする静寂のなか

時折紛れる旋律

目を閉じたら

空気に溺れていくようで

息苦しさに耐えかねて

肺にたまった憂鬱を

吐き出すように息をついた