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ある朝目が覚めると私は蟲になっていた。驚いたのは最初の一瞬で、すぐに私は蟲としての生涯を享受することにした。誰かの声が聞こえた。「生きよ・・・」 声に誘われ、外に出た私は気付くと赤鳥居の前にいた。そこで多くの同胞と出会えた。みんな孤独だ。言葉の節々にそれは汲み取れる。いいではないか。こうして語ることで孤独は癒される。最初は不安で不安で仕方がなかったというグレゴリーも今はもうしたり顔だ。泣き虫のザムザも私のよき理解者だ。ここは憩いの場。神道に守られた聖なる土地。地鎮祭により保証される生。なおさら天寿を全うしようと思える。 命を授けられた以上は必死で生きてやる。誰のための人生とかではなく、ただ自分らしく生きよう。醜い体。それを悔やむこともあった。しかし、悔やんでばかりいる先には何も見えてこないと悟った。輪廻の渦の力を感じた。原罪を背負わされていることも確信した。でも今は後悔していない。毒蟲の私は同じくして毒蟲となった同胞たちと強く生きようと誓った。そうすると周りの中傷・嘲笑の声が聞こえなくなった。 「あの赤鳥居には人面蜘蛛がいるんだよ。でもね、呪いとかじゃなくって、神の奇跡なんだってさ。」―こうしてまた一つこの町にも都市伝説が生まれた。 |
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