(17 January 1999, Akasaka Blitz)
(第36章からの続き)
★ しかし何があったんだ?! 大丈夫なのか、この人は?! Jimは確かに気が狂ってもおかしくないような状況だったけど。
◆ やっぱりうれしいんじゃないのかな。なんかこみ上げる喜びを抑えきれないって感じだったわね。
★ 写真でもインタビューでもライブでも、何があっても、マネキンみたいな全身硬直で、能面のようにうつろな無表情だった人が!
▲ 「ライブが楽しくてしょうがない」って言うから、あんな顔して何が楽しいんだ?と思っていたが、その気持ちを素直に表現できるようになっただけじゃない?
◆ これも成長のひとつか。だてに3年間ツアーを続けていたわけじゃないな。
★ だって4か月前にはこんなじゃなかった! Glastonburyでも違った。Readingでも違った! それがなんでいきなり?? やっぱり最近の愛想の良さは変だよ! 写真でも笑うしさ。なんでいきなりこうなるの? やっぱりなんか無理してるんじゃないの?
◆ うーん、ダンスが下手なのはしょうがないが、特に不自然さは感じなかったよ。本当に楽しそうだった。
▲ MMのリーダーズ・ポールで2位になったのがうれしかったんじゃないの? それでますますファンに対する愛情と信頼が深まったと。それでファンの顔を見るだけでうれしくて踊りだしてしまうと。
★ 変だよー! イギリスには変な病気が流行してるんじゃないか? 狂牛病みたいに脳みそがスカスカになって、根暗な人がいきなり明るくなる病気が。《という感想をイギリスの友達に書き送ったら、相手は落ち着き払って、「そうだよ。ここじゃありとあらゆる変な病気がはやってるからね」という返事が来た。やっぱり!!》
▲ そこまで言わんでも。
★ Jimがあんなんなってしまった以上、Paulだけが最後の頼みの綱だったのに。Mary
Chainのコンサート・リビューでも、だから絶対に表情崩さないPaulはえらいって話してたのに、その直後にこれ! これじゃJimよりひどい!
● そういやあそこで「だってあなた、Paul Draperがステージで漫談始めたら、そう(気が狂ったと)思いませんか?」なんて書いてた(笑)。
★ 漫談のほうがまだましだよー!
▲ PaulとChadはよくインタビューで漫談やってるじゃない。何がおかしいんだかさっぱりわからないけど。
★ それがお尻ふって踊る! あー!(頭をかかえる)
◆ でも基本的にはそれほど変わってないよ。この人は顔こそ無表情だったが、ライブではいつも全力投球で、実にパッショネイトなパフォーマーだったし。
▲ でも顔の筋肉が微動だにしないから、あまり実感がなかっただけ(笑)。
◆ それに笑うと言ったって、Jimみたいに終始ヘラヘラ笑ってるわけじゃない。
★ えーん!
◆ 時々ニコっとするだけで、あとはまじめな顔してるし。
● でもやっぱりあのジェスチャーは変。
▲ 歌以外にも何か表現したいらしいが、それがうまく伝わらないだけで(笑)。
◆ 私が妙に気になったのはあの手つき。前から手つきが変にオカマっぽいと言ってたじゃない。今はギターを持たずにハンドマイクで歌うことが多いんだけど、右手でマイクを持ち、左手で余ったケーブルを持ってるんだが‥‥
● その左手の指がみんなぴんと立ってる(笑)。
▲ べつにオカマには見えないな。どう見ても女の子ってだけで。
◆ あとしゃべるよね。
● うん、これも前は必要最低限の曲紹介とかしかしゃべらなかったんだけど(1回目はとうとう一言もしゃべらなかった)、今回はMCも入れる。それにしゃべり方も元気口調で、前みたいにまったく感情のこもらない、ロボットみたいな話し方と違う。
◆ でもJimみたいにバカみたいなことペラペラしゃべったりはしないし。
★ えーん! やっぱりPaulもどうかしちゃったんだよー!
▲ Jimのあれがショックだったからって、Paulに当たることないと思うな。
● そうよ。だってすべてが死ぬほどかわいいんですもの。ほんとに人間のかわいらしさじゃないぜ。動物か、生きたおもちゃとしか。というわけで、一目見たとたん、私はすべての理性がブチ切れました。
★ それじゃ、いつものように音楽の話はなしなのね。
● いいや。今回はしっかり耳もすましてましたよ。
★ 理性なしで?
● 理性なんかいらない! 音楽は魂で聴くんだよー!
▲ これについては私から。「コントロールされすぎ、肉体よりも頭が勝ちすぎて情熱が感じられない」という前言は撤回する。いや、前回は確かにそうだったのだが、その欠点はすべて解消した。
● だって本人があの通りなんですもの。
★ コントロールどころか、もう抑えがきかないって感じ。
▲ いや、態度だけじゃなくて、その情熱は確実に音にも表れていた。私が前回あんなふうに書いたのは、最初のコンサートの熱さ、「たぎる情熱とやみくもでがむしゃらな感じ」がすっかり影を潜めたことを悲しく思ったからなのだが、あれが復活したばかりか、それに3年間の経験と自信が上乗せされた、まさにこれまでで最高のギグだった。
◆ だってこないだのは、正規のツアーじゃなく、プロモーション来日のついでの、リハーサルみたいなものだったんだもん。やっぱり機材の調子も悪かったらしいし。
● そういや前回、「この人が本気で我を忘れて乱れるのが一目見れたら! あの人があの仮面のような無表情をかなぐり捨てて、あのいかにも頑固そうな自我が崩壊するのが見たい!」なんて書いてたが、まさにそれが見られて良かったじゃん。
▲ べつに自我が崩壊したわけでは‥‥(^_^;)
★ ほとんど崩壊寸前だったよ。
● しかしうまくなったねえ、本当に。
◆ AndieとChadはもともとすばらしくうまかったけどね。素人だったStoveは見違えるようになったし。
▲ でもいちばん目を見張るのは、シンガーとしてのPaul Draperの成長だろう。9月も歌のうまさに感動したけど、あれよりさらにうまくなってる。特に「ライブで本当にこんな声が出るんだろうか?」と思ってた“Terevision”のファルセット。あれが本当に出ちゃうばかりか、まさに天使の歌声! 感動に全身が打ち震えてしまった。
● たしかあれは9月にも聴いたんじゃ‥‥
▲ でもこれほど感動はしなかった。あの部分を歌うとき、目を閉じて頭をのけぞらせ、両手を真横に広げるんだけど、それがまるで十字架のキリストのように見えて、私が「ミレニアム末の救世主」と呼んだのは間違っていなかったと。本当にPaul Draperの後ろから後光がさしてた。
● すごい神格化!
◆ でもあの人にあんな高い声が出る理由わかったな。あの細さと華奢さじゃない。きっと喉の作りも女の子みたいなんだ。
★ だって地声は低いじゃないか。それにカウンターテナーなんて、たいていブヨブヨのデブだよ。
● だったらよけいえらいじゃない。
◆ ただ体がないせいで、やっぱり声質自体は細いんだよね。だからBrettみたいに豊かな響きのある声とはいかないが、そこはテクニックと体当たりの熱演で補っている。
▲ 彼の場合はその声の細さもいい方に出て、おかげで声がすごく透き通ってシャープに聞こえる。
★ 地声に近い低音部とファルセットは楽々出るんだけど、その中間が苦しそうだよね。
▲ だってこの驚異の音域なんだから。
★ あと、“Terevision”の次の“Mansun's
Only Love Song”で初めてトチるのを聴いた。声がひっかかって出なくなっちゃったの。やっぱりあれで力を出し切ったんだなと。
▲ そこだけじゃないか。とにかくこの人はうまい。それに忘れてほしくないのは、Paul
Draperの天才としての本分はソングライターとプロデューサーとしての才能にあるんであって、歌なんてこの人にとってはほんの余技なのよ。それがこれだけ歌えるんだから。
★ もう、そうとばかりは言ってられないんじゃない? これだけうまくなると。
● それにそうなると、歌ってる本人も楽しいでしょ。踊ってても楽しそうだけど、歌うことも楽しんでるのが表情でよくわかる。
★ これまでは歌うときも苦行のような顔してたのにねえ。
● ところが今回は、むずかしい歌のパートにさしかかると、「やるぞー!」って感じが全身にみなぎってて、歌い終わるとぱーっと顔が輝く。ものすごく自信をつけてきたのが、はっきり歌にも出ている。
◆ 他に歌えるやつがいなかったからというのはやっぱり謙遜だな。この人はやはり天性のシンガーだ。
● あとChadの歌も初めて注意して聴いて、きれいな声なんでびっくりした。“Television”でコーラスつけてるのはPaulかと思ってたけど、あれはChadの声だったんだ。彼もすごくきれいな澄んだファルセットができるの。
Paulが引っ込んでChadがひとりでスキャットで歌う部分があるんだけど、声の美しさではぜんぜん遜色ないぐらい。
◆ Chadにはもっと歌わせるべきだよね。この2人の愛のデュエットが聴きたい。
▲ 2人とも優れたシンガーでギタリストで、おまけに世界一のソングライター・コンビだし、無敵じゃん。
● そういや、さっきはPaulの話だけで他の人のことを言うのを忘れてた。Chadもかわいかったよ。彼はすでに書いたようにまた髪が長くなって、特に前髪は完全に目をおおうシェトランド・シープドッグ状態なんだけど、それが実に似合ってかわいいの。
★ やっぱり犬でよかったんだ。
● ただポスペの犬は短毛種なんだな。Chadは犬としてもやっぱり毛むくじゃらなやつじゃないと。
◆ あの髪型はBrian Jonesそのものだな。
● それにやっぱりかなり痩せたみたいで、ほっぺたもだいぶすっきりしたし、おかげであごもあまり目立たないし。お洋服もシャツの上にベストを着て、お小姓みたいでかわいかった。
◆ 他の2人は?
● とてもそこまで目がまわりません。2人とも黒いタンクトップだったのは覚えてるけど。
▲ リズム隊はいいんだよ。縁の下の力持ちで。それにChadのギター・ソロも前回より絶対良かった。
★ ただあれ聴いてると、いきなり30年前にタイム・スリップしたような気にならない? 批評家にきらわれるのはああいうところかも。
◆ 何がわるい? 私はあれが好きなんだ。あれも神々しいばかりに美しかった。
◆ ショーとしての構成も今まででいちばん良かったわね。1回目はとにかく息つくひまもない押せ押せで疲れたけど、“Six”の曲は緩急自在だし、バラエティがある。
● そう。一気に盛り上げるところは盛り上げ、じっくり酔わせるところは酔わせる、これは大きな成長よ。
▲ しかし、あの複雑怪奇な“Six”の曲が、ライブでこんなにいいとは意外だった。
◆ あのアルバムはライブ的だと言ってたじゃないか。
▲ 魔法だな。Mansunの音楽に関してはすべてが魔法だが、ライブもその例にもれない。
★ ただ、曲目はどう? これだけ短期間に3回も見ると同じ曲ばかりで飽きない?
▲ 曲があれだけ良ければ、同じ曲を10回演奏したって飽きないよ。
◆ 曲は毎回入れ替えてるよ。B面曲を必ずやってくれるのもうれしいし。
● “Everyone Must Win”や“Special / Blown
It”もやってくれた。
★ でも“Taxloss”とか“Wide Open Space”はさすがに聞き飽きたと思わない?
◆ だってヒット・ナンバーは欠かせないじゃない。
▲ それは毎日のようにビデオで見てるからだって。
◆ でもいつまでもこれだけはやってほしいと思う“Drastic Sturgeon”や“Stripper Vicar”をやってくれたのには感動!
● ああいうエッチっぽい曲が“Six”にはなかったからなあ。B面でいいからもっと作ってほしいな。ああいうのはライブだと文句なしに理性を吹き飛ばすから。
◆ そういや、Suedeもゲイ・セックスの歌はやめてしまった。今度のアルバムには戻ってるといいんだが。
★ と言っても、BrettもPaulも知性と理性の権化みたいな人なのに。
◆ それがステージだと豹変するからおもしろいんじゃないか。
● ケダモノにならなきゃだめなのよー!
◆ いや、今夜のPaulはかなりアニマルしていた。もう一押しだな。
★ しかしなんでゲイやSMでないとだめなのか?(笑)
▲ そういうのって、無性に私の攻撃本能を刺激するんだもん。
● 攻撃するなよー、あんなかわいい子を。
▲ ウオー! 襲いかかって頭からむさぼり食いたいぞ!
★ どっちがアニマルだか(笑)。
Japan Tour Set List
1. Negative
2. Being A Girl part1&2
3. Stripper Vicar
4. Everyone Must Win
5. Special/Blown It
6. Shotgun
7. Wide Open Space
8. Television
9. Mansun's Only Love Song
10. Six
11. She Makes My Nose Bleed
12. Taxloss
encore
13. The Chad Who Loved Me
14. Drastic Sturgeon
15. Legacy
16. Take It Easy Chicken
▲ うー、風邪ひいちまったい。
● でもフワフワして雲の上にいるみたいでキモチいー。
◆ 風邪っていうよか、興奮しすぎて熱出したとしか。
★ 子供みたい!
▲ でもやっとMansunらしいリビューになったな。あれだけ入れ込んでるんだから、本物見たとなればこれくらい感動しなくちゃ嘘だ。
★ じゃあ、これまでのあれはなんだったの? あのPaul
Draperをあれほど近くで見ながら、妙に冷静だったのは?
▲ 違いがあるとすれば本人の態度だけなんだが。
★ 変なダンスであれだけ興奮するのか?!
◆ それがさあ、今にして思うんだけど、あれだけ近くで見たのに、何を見たか聴いたか、まるで覚えてないってのは、自分では冷静なつもりだったけど、やっぱり相当イっちゃってたんじゃないか?
● 見ただけであまりの美しさに目がつぶれて、脳神経がショートしたとか。
◆ ありうる。
● あー、だめだ! ちょっと気がゆるむとあの腰つきが目に浮かんできて顔がニヤケてしまう!
◆ やめてよ。--CENSORED--中なんだから。
▲ でも振りは同じでも、見ての印象はBrettとはまるで違うよね。
◆ 体型が違う! Brettは背高いし、手足長いし、筋肉質だし、本来すごくスタイルよくてかっこいいの。あんたらはさんざんバカにしてくれたけど。
▲ そして、かっこいい人がかっこ悪いことをするのはすごくおかしい。ところがPaulは‥‥ってわけで、あれ見ても滑稽には見えないでしょ? ただかわいいと思うだけで。
● 子供や動物の愛らしいしぐさを見て滑稽だとは思わないのといっしょよ。
★ Paul Draperは正真正銘の天才なんだから、赤ちゃん扱いしたり、ペット扱いするなって言ってなかった?
● だってー、むすっとした仏頂面で直立不動でもあれだけかわいかった人が、あの短い足でぴょんぴょんスキップして、短い手をパチンと打ち合わせて、腰をクイクイ振るんだもの!!!(吹き出す)
▲ --CENSORED--中だってのに!
● ああ、動きも体型もほんとにポストペットのダンスみたいだよー!
◆ そういや、以前から動いただけでかわいかったよね。あの両手を横に広げて、ペコッと体を二つ折りにするおじぎ、あれはまたやっていたけど、むちゃくちゃかわいい。
★ やっぱりおもちゃ扱い、お人形さん扱いしてる!
▲ つまり、美貌といい、才能といい、本来なら近寄りがたいはずの、根暗で孤高の天才であるPaul
Draperの、親しみやすい面を見たので感激したのよ。
★ 親しみやすすぎるよー!
★ やっぱり秋のツアー中になんかあったとしか。やっぱり誰かに言われたんじゃないの? カメラを向けられたらにっこりしろとか、ステージでは少しは愛想よくしろとか。
◆ まさか。言われてできるもんじゃないよ。
▲ 私はそれをしないのが彼の美学なのかと思ってたんだがな。
● やっぱり極端にシャイだっただけじゃないの? それがやっと慣れてきたと。
★ 極端すぎるよ! というのも、こないだまでの彼のうつろさと無表情さは前人に類を見ないというか、あそこまでみじんの愛想もへったくれもない人は見たことがなかったから。
▲ Jim Reid以上だよね?
★ うん。ステージのJimはまだキョトキョトしたり、恨みがましい目つきしたりできたけど、この人はほんとに石で刻んだ彫像のように、眉毛ひとつ動かさなかったもん。ところが、Jimが18年目にして (!) やっと笑ったりしゃべったりできるようになったかと思ったら、Paulはいきなり笑顔でスキップして腰ふり踊り! Jimのあれを見たときも、足元の大地が崩れ落ちるような気がしたけど、きのうはもう何が現実で何が幻想なんだか、知らないうちに変なクスリでも飲まされたとしか‥‥
◆ 大げさな(笑)。
● あれの何がわるーい?!
★ あーあ、おかげでこれまで苦労して書いたPaul
Draper論がすべて水泡に帰してしまった。誰が暗いって? 誰が自閉症だって? 誰が神経質だって? 傲慢そうだ? 頑固そうだ? むつかしそうな人だ? 近寄りがたくてよそよそしい? 観客を見下してる? 色気がない? 愛嬌がない? ぜーんぶパーだ。
● だって、それも嘘じゃない。本当にそう見えたんですもの! こないだまでは。
▲ なんで★がそんなにいら立つのかわかんないな。なんで人間的成長として暖かい目で見てやれないの?
★ 人間って成長するとああなっちゃうのか?!
◆ また別の見方をすれば、音楽面ばかりでなく視覚・演出面でもフロントマンとしての才能を発揮し始めたとも言える。
★ あれが?
◆ 変なダンスだけじゃないよ。さっきも言ったように観客に働きかけることを覚えた。たとえば手拍子をうながしたり、いっしょに歌うように誘ったり、ステージの両端に行って、すみっこの人たちも引き込む努力をしたり、そもそも客に話しかけるだけでもそうだ。
▲ そんなの誰でもやってることなんだけどね、前は何ひとつやらなかったからね。
● 顔を上げて客を見ることすらできなかった。
★ インディー・バンドは普通あそこまでサービスしないよ! サービス過剰だよ。
◆ そこで思い出すのはまたしてもBrett Anderson!
▲ そういや、これまたふだんの暗い見かけとクールなイメージに似合わず、ライブではやたらめったら愛想が良くて、サービス精神旺盛なのは、Brettのトレードマークだった。
◆ やっぱりSuedeのライブビデオ見て研究したんじゃないか?
▲ 本人直伝かも。
● ぶっ!(その場面を想像して吹き出す)
◆ --CENSORED--だってのに! ○○が書き物しながらくすくす笑ってちゃ、○○に変に思われる!
● だってー! ああ、困った! ヘラヘラ笑いが止まらない!
★ なんでSuede? 好きなのは知ってるけど。
▲ どうせならClashをお手本にしてほしかったな。ライブのアクションがいちばんかっこよかったのはClashだから。
★ それも無理だと思うけど。ルックスが違いすぎるから。
◆ Brettのまねしてなにが悪い? Brettはインディー界で現役最高のエンターテイナーだ。しかもBrettの良さってのは、それが押しつけがましくなく、わざとらしくもなく、彼自身心からファンとギグを愛してて、楽しくてしょうがないって感じが伝わってきて、完全燃焼してるところなんだが、それはPaulを見てても感じた。
★ たしかにそれは本人も、口では前から主張してたことなんですがねえ。ぜんぜん態度に現れてなかったのよね。
● 見かけによらずって言うけど、たしかにBrettは顔は暗いが、Paulは最初から愛嬌のある顔立ちと言ってたじゃない。よって、愛嬌ふりまいてもBrettより似合うし自然。
◆ ベスト・ライブ・バンドはこれのおかげか?
▲ 少なくともMansunのライブ評で、いつも批評家にボロクソ言われてたのは、演奏は完璧だし、客も乗ってるのに、やってる人がクソおもしろくもなさそうな顔してるってことだったので、これならもう文句は言えまい。
★ 腰ふりが? 笑顔でスキップが? あれってベスト・ライブ・バンドに不可欠のものなの? 尻ふるだけならTake Thatだってできるぞ。むしろこの人は愛らしいルックスと裏腹に暗いからおもしろかったのに。
▲ とにかく実際、楽しかったんだから文句言うなよ。
★ 自分だってManicsがああだったらきっとブツブツ言うくせに。
▲ Manicsはもともとライブじゃめちゃ元気だし明るかった。
★ 「何をニタニタ笑ってる?」とか文句言ってたくせに。
◆ ま、あっちはあっちでどうなるかお楽しみね。
★ 見ててやろうじゃないの。
● あー、今度出るビデオもあれなんだろうか?
★ そう言えば! ライブビデオの撮影開始と、Paulの変身が同時期ってのはなんかあると思わない?
◆ 意識しての演出だっての? そんな感じはまったくしなかったよ。
▲ でも自分の姿をモニターで見たら、何か感じるものがあったのかも。
● うわー、楽しみ! またあれが見られると思うと!
★ 自分であれ見て恥ずかしいと思わないんだろうか?
▲ どこが恥ずかしいのよ?
★ かわいすぎて恥ずかしいじゃない。普通男の子って、そういうのは恥と思うはずなのに。
● でもあの人たち、もともと意外とかわいいものが好きだよね。クマのプーさんとか。
◆ そういや、Chadも(胸毛とあごを除けば)まったく男の子っぽいところはないな。顔といい、態度といい。
▲ 2人して少女趣味!
● (勝手な想像をめぐらして)うわー!
★ こうなるとむしろ昔の全身硬直の時代のビデオは貴重。ブートレッグ買っておいてよかった。
● ただ髪型は前のほうがお耽美だったな。あれって髪切る前かね?
◆ うーん、たぶん。
▲ とにかくこの謎はビデオを見たら解けるような気がするな。
★ 遠いからわからなかったけど、笑顔の下は硬直してたりして。
● そんな!
● あたまがぐーるぐるぐるぐる‥‥
▲ 何がMansun見て熱出しただ。本気で風邪ひいたじゃないか。
★ だけど--CENSORED--中なもんだから休むわけにいかないし、○○は作らなきゃいけないし、○○はしなきゃならないし、雑用は山ほどあるしで地獄。
◆ だけど、あれを思い出すたび、ニマーとした白痴笑いが顔いっぱいに広がって抑えきれないという多幸症状態。
★ 崩壊してるー!
● さーて、次は何かな? 尻ふりダンスのあとは?
▲ ファンの欲求というのは、なまじ満たしてやるとエスカレートするからな。
◆ パンツ脱ぐのを期待したってだめですよ。Take
Thatじゃないんだから。
● 誰がそんなもの期待するか。次はやっぱりあれだな。ドレス着るしかないじゃん。Suedeのまねの次は当然Manicsのまねしかない。そもそも両性具有で売ってる人なんだし。
▲ それもちょっと‥‥いや、似合わないというんじゃなく。
★ 踊るほうがはるかに無理だと思ったけどな。あれができるならなんでもできるでしょ。
● そうよ。スカートこそはいたことないけど、ブラジャーしてたことはあったし。
◆ そういや、そんなこともあった! ブラジャーつけた胸をはだけて見せてる写真が。
★ でもぜんぜん違和感なさすぎて、ちっとも驚かなかった。「はしたない」と思うだけで。
● あのおっぱいシャツもあったしね。
◆ やっぱり女装願望もあるんじゃない。
● そうじゃなかったらあんな歌うたわない。
▲ 身長190pの大男がドレス着るのはしゃれだとわかるからいいんだよ。でもPaulじゃしゃれにならない!
● 薄い花柄の肩のあいたドレスがいいな。この人、肩から首の線が死ぬほど色っぽいと前から思ってるんで、それをじっくり見せてほしい。それで長い髪のかつらかぶって、頭におリボンつける。
◆ 似合いすぎる‥‥
● (想像する)顔だけでも十分女らしいが、あれが女装したらどうなるか? あの細い肩、細いウエスト、ふっくらした胸とお尻、うわー、これはヤバい!
◆ だいたい男の女装が滑稽に見えるのは、女にしては肩幅が広すぎたり、ウエストのくびれがなかったり、尻や足が細すぎたりするからだが、この子はすべてクリア。
★ そういや、服装はわりと男っぽいから気づかなかったけど、体も完全な女体型!
● おまけにあの鳩胸なら、ブラジャーもパッドもなくてもペチャパイの女の子として通用する。
▲ わー! しゃれになんない! ロック・ミュージシャンが女装するのはシャレだからおもしろいんであって、これじゃIan
McCullochの女装がしゃれにならないのと同じだ。
● Macよかずーっと色っぽいよ。
★ でも女装じゃぜんぜん意外性がなさすぎて、ちっともおもしろくない。
◆ たしかに。
★ それならあの人が踊ったり笑ったりするほうが、よっぽどショックだし、ヤバいし、興奮する。
▲ たしかに。
★ よって、いちばんすごいものもう見ちゃったんだから、それ以上期待してもむだですよ。
● やっぱりこの上はパンツまで脱ぐしかないか。
◆ しかし今にしてふと思うが、本当についてるのか?!
● ついてた。
▲ どこを見てる!
● べつに見ようと思わなくても見えちゃうんだもん。というのも、今回はパッツンパッツンの短いブラウスで、ズボンもわりとタイトなやつなんで、これまでは長いシャツやジャケットやギターで隠されていた下半身が丸見え。意外とでかいかも‥‥
▲ ひー!
◆ そういや喉仏も大きいし、第一次性徴はちゃんとある。
▲ あたりまえだろ!
★ そういやひげもわりと濃いよね。色が薄いから目立たないけど。
◆ 声も低い。第二次性徴もあるじゃん!
▲ そりゃほんとに男なんだから!
◆ だけど、こういう女性的な男の子って、ひげなんかも薄くて、声も高くて、ホルモン・バランス狂ってるんじゃないかと思わせることがよくあるじゃない。
★ なのになんでこんなに女らしい?
● 単に男にしては美しすぎるというだけじゃありませんか?
★ でもそれ言ったらRoddyだってNeilだって美しかったけど、ここまで女っぽくない。
◆ やっぱりアンドロギュヌスとしか。せめて“Being
A Girl”だけは女装すべきよね。
● “Stripper Vicar”もだよ。というわけで、次は当然ストリップだな。
★ 結局それを期待してるんじゃないかー! Take Thatじゃないってのに!
▲ そもそもTake Thatじゃないんだから、毎回新しい余興やったりはしないと思う。
◆ あれは余興だったのか??
● でもさあ、Take Thatは女装男や男性ストリッパーの歌はうたわなかったけど、あそこまでやったぞ。そういう歌をやっている以上、それくらいするのがつとめだろうが。
▲ この人たちが歌の通りのことしたらえらいことになるわ!
● でも絶対、露出症願望もあるよ、こいつ。そうじゃなかったらあんな恥ずかしいヌード写真撮らせない。
◆ 何が恥ずかしい? セクシーだったじゃない。
★ 何をセクシーと呼ぶかによるな。恥ずかしくて見てられないという点ではセクシーだった。
● パンツまでとは言わないからさ。トップレスでいいから。片肌でもいいから。ね?
▲ 「ね?」じゃない!
★ 確か初期のギグでは男性ストリッパーをステージに上げたことがあるって聞いたよ。
● いやーん! 男の裸なんか見たくない! Paulでなきゃいや。
▲ あれでも男だっちゅうに!
◆ なぜかレズ・モードに入ってしまっている(笑)。
● Paulが相手なら、あたしレズも辞さないわ!
▲ 不毛な会話だ‥‥
◆ もうそろそろ締めたいんだけど。あとも押してるし。結論としては?
● もう料金の百倍は楽しませてもらったし、今後も思い出すだけでしあわせになれる、そういうコンサートでした。これだからMansunはやめられないわ。
★ でも、ある意味でますますPaul Draperという人がわからなくなった。
● わかるわよ! 本物の天才で、賢くて、良い子で、なおかつ美しくってかわいくって‥‥
★ でも、それとあの根暗で虚無的な世界観や、気持ちの悪い歌詞とのつながりがますます見えなくなった。
◆ 複雑だからこそおもしろいんじゃないか。その暗い部分がなかったら、ただのひょうきんなかわいこちゃんになっちゃう。
● 男はそれだけでもいいけどね、私は。
▲ でも良かった。“Six”を聴いたときには、本当にこの人あぶないんじゃないかと、Richeyの二の舞になるんじゃないかと恐れていたけど、尻ふり踊りをしながら自殺できる人はそうはいないと思うので。
★ わからんぞー! ほんとに気がふれたのかもしれないぞ! 鬱病が躁病に転じただけかも。
● ああ、夢のようだ! 音楽だけ聴いても夢かと思ったけど、その音楽をやっている人が、こんなに美しくて、愛らしくて、変人で、非の打ち所がない私好みの男の子だったなんて!
◆ というわけで、幸せいっぱいのMansunコンサート・リビューでした。
★ 私は納得できない!